2022年の乗用車新車登録台数は3年連続で減少(オランダ)

2023年10月2日

2022年のオランダの乗用車新車登録台数は前年比3.2%減の31万1,998台と3年連続の減少となった。半導体などの部品不足による乗用車の供給難がその理由。ただし、バッテリー式電気自動車(BEV)は18.9%増の7万2,455台と増え、プラグインハイブリッド車(PHEV)も12.1%増の3万4,306台と好調だった。

2022年の乗用車新車登録台数は31万1,998台、3年連続で減少

オランダ自転車・自動車工業会(RAI)が2023年4月25日に発表した資料によれば、2022年のオランダの乗用車新車登録台数は前年比3.2%減の31万1,998台だった(図1参照)。2019年に44万5,218台を記録して以降、3年連続で減少している。RAIは2023年1月1日に発表したプレスリリースの中で、2022年の不振の主因として、半導体などの部品不足による供給難を挙げている。納品が再開されて受注残解消の見通しが立ちつつある一方、2023年の乗用車市場はロシアによるウクライナ侵攻などの地政学的リスクの影響に左右されるとみている。

図1:オランダの新車登録台数の推移
2017年41万4,306台、2018年44万3,529台、2019年44万5,218台、2020年35万5,432台、2021年32万2,318台、2022年31万1,998台。2017年以降のオランダの商用車新車登録台数は、2017年7万3,469台、2018年7万9,173台、2019年7万6,251台、2020年6万395台、2021年6万8,405台、2022年5万9,167台。

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

オランダ政府は、2030年までに新車の乗用車をゼロ・エミッションにする目標を掲げ、電気自動車(BEV、PHEV、FCEV)に対して、自動車税を減免している。減免措置は漸次削減の方向だが、買い替えの際にBEVもしくはハイブリッド車を選択する人が増えている。この結果、2023年1月1日時点のディーゼル車の保有台数は、データを確認可能な2017年以降で初めて100万台を切った(図2参照)。

図2:オランダの燃料別乗用車保有台数の推移(各年1月1日時点)
2017年ガソリン667万480台、ディーゼル136万4,309台、液化石油ガス(LPG)14万750台、ハイブリッド23万9,483台、BEV1万3,065台、その他1万1,231台、2018年ガソリン681万4,286台、ディーゼル136万1,426台、液化石油ガス(LPG)12万9,303台、ハイブリッド25万5,994台、BEV2万1,032台、その他1万2,559台、2019年ガソリン699万5,515台、ディーゼル133万4,719台、液化石油ガス(LPG)11万9,489台、ハイブリッド27万8,832台、BEV4万5,066台、その他1万3,662台、2020年ガソリン715万170台、ディーゼル124万8,660台、液化石油ガス(LPG)11万398台、ハイブリッド30万7,591台、BEV10万7,721台、その他1万4,032台、2021年ガソリン724万6,989台、ディーゼル112万7,858台、液化石油ガス(LPG)10万4,441台、ハイブリッド37万3,488台、BEV18万3,143台、その他1万4,040台、2022年ガソリン726万3,785台、ディーゼル101万3,354台、液化石油ガス(LPG)9万9,062台、ハイブリッド49万9,656台、BEV25万2,635台、その他1万3,785台、2023年ガソリン722万4,730台、ディーゼル90万6,157台、液化石油ガス(LPG)9万8,200台、ハイブリッド65万188台、BEV34万589台、その他1万3,243台。

注1:ハイブリッドとは、マイクロハイブリッド(MEV)、ハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、レンジエクステンダー(REEV)を指す。
注2:「その他」とは、圧縮天然ガス(CNG)、液化天然ガス(LNG)、バイオ燃料、燃料電池車(FCEV)、その他を指す。
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

また、2023年1月1日時点の保有台数の燃料別シェアをみると、ガソリン車が78.2%、ディーゼル車が9.8%、ハイブリッド車が7.0%、BEVが3.7%と続いた(図3参照)。

図3:2023年1月1日時点のオランダの乗用車保有台数の燃料別シェア
ガソリン78.2%、ディーゼル9.8%、液化石油ガス(LPG)1.1%、ハイブリッド7.0%、BEV3.7%、その他0.1%

注1:ハイブリッドとは、マイクロハイブリッド(MEV)、ハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、レンジエクステンダー(REEV)を指す。
注2:「その他」とは、圧縮天然ガス(CNG)、液化天然ガス(LNG)、バイオ燃料、燃料電池車(FCEV)、その他を指す。
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

2022年に新規登録された乗用車の燃料別台数は、2023年8月時点で未発表だが、シェアは発表されている。燃料別シェアは、ガソリン車(38.3%)、ハイブリッド車(36.1%)、BEV(23.5%)、ディーゼル車(1.5%)と続いた(図4参照)。ガソリン車とハイブリッド車が拮抗(きっこう)している。

図4:オランダの新車乗用車の燃料別シェアの推移
2017年ガソリン75.0%、ディーゼル17.4%、液化石油ガス(LPG)0.3%、ハイブリッド5.0%、BEV1.9%、圧縮天然ガス(CNG)0.3%、2018年ガソリン75.4%、ディーゼル12.9%、液化石油ガス(LPG)0.2%、ハイブリッド5.9%、BEV5.4%、圧縮天然ガス(CNG)0.2%、2019年ガソリン71%、ディーゼル7.3%、液化石油ガス(LPG)0.1%、ハイブリッド7.6%、BEV13.8%、圧縮天然ガス(CNG)0.1%、2020年ガソリン57.7%、ディーゼル3.7%、液化石油ガス(LPG)0.5%、ハイブリッド17.6%、BEV20.5%、圧縮天然ガス(CNG)0.0%、2021年ガソリン45.6%、ディーゼル2.2%、液化石油ガス(LPG)0.7%、ハイブリッド31.8%、BEV19.8%、圧縮天然ガス(CNG)0.0%、2022年ガソリン38.3%、ディーゼル1.5%、液化石油ガス(LPG)0.7%、ハイブリッド36.1%、BEV23.5%、圧縮天然ガス(CNG)0.0%。

注:ハイブリッドとは、マイクロハイブリッド(MEV)、ハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)を指す。
出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

一方、2022年の商用車(バン)の新車登録台数は、前年比13.5%減の5万9,167台だった(図1参照)。車両総重量が3,500キロ以上の大型車両は15.2%増の1万3,526台だった。また、現地報道によると、オランダ自動車・自転車商業組合(BOVAG)の発表では、2022年の個人向け中古自動車の販売台数は前年の130万台から116万台に減少したという。個人間の取引は67万4,000台から61万5,000台に減少した。中古車市場の不調の理由として、新車の納品の遅れから中古車が市場に出にくくなっていることと価格高騰が挙げられている。

新車登録は起亜がフォルクスワーゲンを破り初めて首位に

2022年の新車登録台数をメーカー・ブランド別にみると、起亜(3万26台、市場シェア:9.6%)が初めて首位となり、前年まで17年連続で首位を維持してきたフォルクスワーゲン(VW)が2位(2万5,963台、8.3%)に転落した。3位は前年と同じくトヨタ(2万5,359台、8.1%)だった(表1参照)。

表1:メーカー、ブランド別新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー、ブランド 2021年 2022年
台数 台数 シェア 前年比
起亜 30,005 30,026 9.6 0.1
VW 30,955 25,963 8.3 △ 16.1
トヨタ 23,019 25,359 8.1 10.2
プジョー 20,255 21,228 6.8 4.8
BMW 18,605 17,177 5.5 △ 7.7
現代 13,384 17,022 5.5 27.2
ルノー 16,175 16,578 5.3 2.5
シュコダ 20,170 14,927 4.8 △ 26.0
アウディ 12,557 13,813 4.4 10.0
オペル 15,361 13,500 4.3 △ 12.1
合計(その他含む) 322,318 311,998 100.0 △ 3.2

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

モデル別では、プジョー「208」(9,640台、市場シェア:3.1%)が、起亜の「ピカント」(7,391台、2.4%)と「ニロ」(7,277台、2.3%)を超えて、首位に立った(表2参照)。

表2:2022年のモデル別新車登録台数(単位:台、%)
メーカー モデル 台数 シェア
プジョー 208 9,640 3.1
起亜 ピカント 7,391 2.4
起亜 ニロ 7,277 2.3
ボルボ XC40 6,821 2.2
オペル コルサ 6,669 2.1
合計(その他含む) 311,998 100.0

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

日本ブランドの新車販売台数は前年比0.2%増の4万7,104台となり、新車登録台数全体に占めるシェアは15.1%で前年から0.5ポイント上昇した(表3参照)。そのうち、トヨタ、日産、ホンダは2桁台の伸びとなった。

表3:日本ブランド別新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
全体
順位
ブランド 2021年 2022年
台数 台数 シェア 前年比
3 トヨタ 23,019 25,359 8.1 10.2
15 日産 6,055 7,301 2.3 20.6
16 マツダ 6,780 5,736 1.8 △ 15.4
23 スズキ 5,918 4,708 1.5 △ 20.4
25 三菱 3,732 2,450 0.8 △ 34.4
31 ホンダ 801 1,065 0.3 33.0
34 レクサス 527 411 0.1 △ 22.0
40 スバル 168 74 0.0 △ 56.0
合計 47,000 47,104 15.1 0.2

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

BEVの新車販売が大幅増加

オランダ企業庁(RVO)の2023年8月10日付の資料によると、2022年のBEVの新車販売台数は前年比18.9%増の7万2,455台だった(図5参照)。2022年末のBEVの保有台数は34.7%増の32万8,295台で、2023年7月末には39万4,720台に拡大した(図6参照)。

図5:オランダのEV新車販売台数の推移
2018年BEV2万3,955台、FCEV13台、PHEV3,548台、2019年BEV6万522台、FCEV154台、PHEV5,178台、2020年BEV7万1,422台、FCEV143台、PHEV1万4,884台、2021年BEV6万957台、FCEV110台、PHEV3万615台、2022年BEV7万2,455台、FCEV93台、PHEV3万4,306台、2023年1~7月BEV6万5,247台、FCEV40台、PHEV3万718台。

出所:オランダ企業庁(RVO)

図6:オランダのEV保有台数の推移
2018年末BEV4万3,510台、FCEV54台、PHEV9万4,642台、2019年末BEV10万5,016台、FCEV208台、PHEV9万1,593台、2020年末BEV17万2,524台、FCEV365台、PHEV9万7,779台、2021年末BEV24万3,662台、FCEV488台、PHEV13万7,673台、2022年末BEV32万8,295台、FCEV596台、PHEV18万6,947台、2023年7月末BEV39万4,720台、FCEV610台、PHEV23万1,889台。

出所:オランダ企業庁(RVO)

オランダのEV充電設備プロバイダーLaaddirectによれば、2022年に最も販売されたBEVは、2021年に発売開始されたシュコダのエニヤックiVで5,467台が登録された(表4参照)。

表4:2022年のモデル別BEV新車登録台数(単位:台、%)
メーカー モデル 台数 シェア
シュコダ エニヤックiV 5,467 7.5
テスラ モデルY 3,892 5.4
プジョー e-208 3,635 5.0
起亜 e-ニロ 3,447 4.8
アウディ Q4 e-tron 3,255 4.5

出所:Laaddirect

2030年以降、新車販売はゼロ・エミッション車に

オランダ政府は、温室効果ガス排出量を2030年までに1990年比で49%削減、2050年には95%削減することを目標に掲げている。この目標を達成するため、政府は2019年6月に「国家気候協定(National Climate Agreement)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を政府、企業、市民社会団体との間で締結し、5つのセクター(建築環境、モビリティ、産業、農業と土地利用、電力)における具体的な行動計画を発表した。モビリティ分野では、持続可能なエネルギーキャリアとして電気(バッテリー、水素、太陽電池)を使用することとし、それが不可能な分野ではバイオ燃料を使用するとしている。また、2030年までに180万基の充電ポイントを設置することを目標にしている。

物流分野では、2030年までに公共交通のバスや建設分野のトラックなどをゼロ・エミッション車両にすること、物流の効率化を図ることで、2030年までに内陸輸送と大陸輸送による二酸化炭素(CO2)排出量を30%削減することを目指すとしている。

乗用車については、(1)2025年時点で新車販売される乗用車の少なくとも15%がゼロ・エミッション車(BEVまたはFCEV)となること、(2)2030年時点では新車販売される乗用車の100%がゼロ・エミッション車となることを目標に掲げている。

EVに対する優遇措置は縮小の方針

オランダ政府はEV普及に向けて、優遇措置を導入し、効果を上げてきた、ただし、政府はEVへの移行が進むにつれ、自動車税の減免措置などを縮小する方針を明確にしている。今後の優遇措置の主な内容は次の通りである。

  • 自動車税(MRB):BEVとFCEVを対象とした100%の免税は2024年まで。2025年は75%が減税される。PHEVは2024年まで50%減税、2025年は25%減税。
  • 自動車登録税(BPM):CO2排出量に応じて課税。BEVとFCEVは2024年まで100%免税。なお、PHEVはCO2を排出することから課税対象。
  • 個人用BEVに対する補助金制度(SEPP):航続距離120キロ以上のBEVの購入またはリースに対して補助金を支給。2022年の補助額は、新車が3,350ユーロ、中古車が2,000ユーロだったが、申し込みが殺到したため、同年5月30日に受け付けが終了した。2023年の補助額は新車が2,950ユーロ、中古車が2,000ユーロ。2023年の補助金総額は新車分が6,700万ユーロ、中古車が3,240万ユーロ。いずれも補助金申請が上限に達した時点で終了する。

また、オランダでは、会社が乗用車を購入またはリースして従業員に支給する「カンパニーカー」制度が一般的だが、私用で500キロを超えて走行する場合、車両価格の一部は所得とみなされて現物給付税(BiK)の課税対象になる。しかし、EVの場合は同税についても通常車両よりも低い税率が適用されるインセンティブがある。2023年の場合、BEVでは3万ユーロまでは16%、3万ユーロ超の部分は22%の税率で課税されている。FCEVは車両価格にかかわらず、16%の税率が課せられる。しかし、このインセンティブについても2025年までで、2026年以降は廃止される見込みである。

執筆者紹介
ジェトロ・アムステルダム事務所長
下笠 哲太郎(しもがさ てつたろう)
1998年、ジェトロ入構。ジェトロ・ソウル事務所、海外調査部グローバルマーケティング課、サービス産業課、商務・情報産業課長、EC流通ビジネス課長、プラットフォームビジネス課長などを経て、2021年9月から現職。