イランの物流ルートに中央アジアからの関心高まる
バンダル・アッバース視察と政府機関へのインタビューから

2023年12月21日

最近の世界情勢の影響により、中央アジアを取り巻く物流環境は大きく変わっている。中央アジアでビジネスを行う企業の間では、輸出入に際し、新しい輸送ルートを模索する動きが出ている。

イランと中央アジアとの貿易額は、ここ数年で増加傾向にある。テヘラン商工会議所の過去2年のデータによると、イランにおいて、中央アジア5カ国(カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタン)からの輸入総額は、イラン暦1400年(西暦2021年3月21日~2022年3月20日)の約2億6,900万ドルから同1401年(西暦2022年3月21日~2023年3月20日)は約3億1,300万ドルに16%増となった。そのうち、国別では、タジキスタンとキルギスからがそれぞれ2.0倍と2.8倍に増加している。テヘラン商工会議所の別のレポートによると、2022年の中央アジアからの主な輸入品目は、綿と小麦等となっている。

イランから中央アジア5カ国への輸出額は、イラン暦1400年の10億9,400万ドルから1401年は11億8,500万ドルと8%増だった。そのうち、タジキスタンへの輸出は1.9倍となっている(表参照)。前述のレポートによると、2022年のイランから中央アジアへの主な輸出品目は、鉄材、ポリエチレンとドライフルーツだった。

表:イランと中央アジアの貿易(国別比較)

イランへの輸入
輸入額(単位:ドル、%)(△はマイナス値)
国名 イラン暦1400年
輸入額
イラン暦1401年
輸入額
伸び率
タジキスタン 39,436,973 79,646,482 102%
ウズベキスタン 114,837,161 72,378,326 △37%
トルクメニスタン 33,308,324 28,111,162 △16%
キルギス 2,974,344 8,358,144 181%
カザフスタン 78,683,391 124,801,608 59%
合計 269,240,193 313,295,722 16%
輸入重量 (単位:キログラム、%)(△はマイナス値)
国名 イラン暦1400年
輸入重量
イラン暦1401年
輸入重量
伸び率
タジキスタン 14,511,857 27,879,462 92%
ウズベキスタン 61,646,058 35,230,891 △43%
トルクメニスタン 43,994,536 39,544,324 △10%
キルギス 5,670,167 6,935,702 22%
カザフスタン 219,845,458 275,340,522 25%
合計 345,668,076 384,930,901 11%
イランからの輸出
輸出額 (単位:ドル、%)(△はマイナス値)
国名 イラン暦1400年
輸出額
イラン暦1401年
輸出額
伸び率
タジキスタン 91,007,644 170,414,012 87%
ウズベキスタン 401,958,321 289,749,541 △28%
トルクメニスタン 335,251,612 459,511,355 37%
キルギス 78,891,659 69,792,886 △12%
カザフスタン 186,892,161 195,343,564 5%
合計 1,094,001,397 1,184,811,358 8%
輸出重量 (単位:キログラム、%)(△はマイナス値)
国名 イラン暦1400年
輸出重量
イラン暦1401年
輸出重量
伸び率
タジキスタン 124,768,088 234,192,085 88%
ウズベキスタン 714,493,541 410,014,012 △43%
トルクメニスタン 1,361,804,358 1,276,424,759 △6%
キルギス 45,925,487 57,630,477 25%
カザフスタン 512,525,942 475,615,173 △7%
合計 2,759,517,416 2,453,876,506 △11%

注:イラン暦1400年は2021年3月21日~2022年3月20日、イラン暦1401年は2022年3月21年~2023年3月20日。
出所:テヘラン商工会議所データからジェトロ作成

イラン貿易振興庁(TPO)の中央アジア・コーカサス・ロシア局のラフマトッラ・ホルマリ局長は、イスラーム共和国通信(IRNA)のインタビューに対し、中央アジア、コーカサス、ロシアの国々へのイラン暦1401年のイランの輸出額は前年に比べて18%増加し、同1402年1月(西暦2023年3月21日~4月20日)は前年同月比で50%増加したことを明らかにしている。同氏によると、同1401年1月のロシアへの輸出額は6,000万ドル、アゼルバイジャンへは3,300万ドル、アルメニアへは3,200万ドル、トルクメニスタンへは2,700万ドル、ウズベキスタンへは2,000万ドルだった(2023年5月28日付イスラーム共和国通信(IRNA)(ペルシャ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

実際に、中央アジアの企業が使っているアフガニスタン・パキスタン経由やキルギス・アゼルバイジャン・ジョージア経由のルートに加えて、イランを通る輸送ルートやイランとの貿易に興味を持ち始めている日本企業も出てきている。そこでジェトロでは、イランの貿易経路上、重要な港となっているイラン南部のホルモズガーン州バンダル・アッバースのシャヒド・ラジャイ港を2023年11月に視察し、政府機関関係者らから話を聞いた。

シャヒド・ラジャイ港のコンテナ施設を拡充

インタビュー(1):ホルモズガーン州港湾海事局のホセイン・アッバスネジャド局長(2023年11月11日)。

質問:
シャヒド・ラジャイ港の概要について。
答え:
シャヒド・ラジャイ港には現在 45 のバースがあり、そのうち 5 つが石油バースだ。同港の年間取扱貨物容量は1億4,000万トン、コンテナの取扱容量600万TEU(注)となっている。

シャヒド・ラジャイ港のコンテナターミナル(ジェトロ撮影)
質問:
今後の開発計画は。
答え:
現在、同港には2つターミナルがあり、第3ターミナルを設立中だ。そのうち、2,400ヘクタールは、民間企業とコンテナターミナル開発のための契約を結ぶ予定だ。港湾海事局と民間部門の投資により、近い将来、近代的なコンテナターミナルが運営され、第3ターミナルの容量は200万~300万 TEUになる。それによって、コンテナターミナルの取り扱い貨物容量は合計で年間800万TEU に増加する予定だ。
質問:
外国からの輸送は。
答え:
イランを仕向け地としないトランジット貨物は、主に、中国、インド、アフガニスタンからで、最近、CIS諸国からもトランジット貨物が増えている。
質問:
日本企業へのメッセージは。
答え:
現在、同港の第1と第2のターミナルの使用率は65%であり、さらに増加できる余地があるため、ぜひ日本からの投資も期待している。

鉄道輸送量が貨物・旅客とも増加

インタビュー(2):ホルモズガーン州鉄道局のアリレザ・バシリー局長(2023年11月12日)。

質問:
ホルモズガーン州の鉄道の状況について。
答え:
イラン暦1402 年(2022年3月21日~2023年3月20日)の最初の 5 カ月間の貨物輸送量と旅客輸送量は前年同期との比較で増加しており、品目としては、鉄鉱石が最も輸送された。
質問:
今後の鉄道網の開発予定について。
答え:
現在、バンダル・アッバース経由の鉄道は、年間1,500万トンの輸送キャパシティーがあり、2,000万トンまで増加できる。現在の使用量は700万トンである。今後、バンダル・アッバースからテヘランまでを複線化させる予定であり、貨物輸送と乗客の移動の速度が向上するだろう。
質問:
ロシア関連貨物について。
答え:
2023年8月20日に、ロシアから貨車28台で物資を積んだ40フィートコンテナ36個を積んだ輸送貨物列車が、ゴレスターン州のインチェ・ブルン国境から始めて入国し、正確なスケジュールに従って、荷降ろしが行われた。今後もロシアからの貨物が増え、順調にオペレーションできるよう願っている。
図:イランの鉄道地図
バンダル・アッバースはイランの南部ペルシャ湾に面している。

出所:PTB(イランの国際輸送会社)のレポートからジェトロ作成

地域情勢の変化がトラック輸送に追い風

インタビュー(3):テヘラン商工会議所トラック物流委員会のペイマン・サナンダッジ委員長へのインタビュー(2023年11月14日)


テヘラン商工会議所トラック物流委員会の
ペイマン・サナンダッジ委員長 (本人提供)

シャヒド・ラジャイ港へ向かうトラック
(ジェトロ撮影)
質問:
イランのトラック輸送会社が現在抱えている問題について。
答え:
私は、トラック企業も所有しているので、テヘラン商工会議所のトラック物流委員長としてではなく、1人のオーナーとして抱えている問題をお話したい。現在多くの国際トラック輸送会社が抱えている問題の1つは、イラン人運転手のビザ取得だ。中央アジアに行くためにはビザが必要であるが、時々ビザが発行されないことがある。また、米国によるイランへの経済制裁のため、送金ができず、運転手に渡す燃料代や、運転手の日当・宿泊費といった輸送費用が現金になってしまうため、リスクがあることも問題だ。
質問:
中央アジア諸国との物流について。
答え:
ここ数カ月で地域の状況が変わったため、中央アジアからの問い合わせがとても増えている。また、トルクメニスタンで11月1日からイランナンバーのトラックによるトランジット輸送規制が撤廃され、イランのトラックがトルクメニスタンを通過してウズベキスタンなど中央アジアへの貨物輸送が可能になったため、イランからの輸送も増えた(2023年11月15日付ビジネス短信参照)。今後もこうした動きが増え、イランを物流のハブに使ってもらえれば幸いだ。

注:
「Twenty-foot Equivalent Units」の略称。長さ20フィートのコンテナ1本を1TEUとしてカウントしたコンテナ取扱量を表す。参考として、東京港の2021年のコンテナ取扱量は486万TEUだった。
執筆者紹介
ジェトロ・テヘラン事務所長
鈴木 隆之(すずき たかゆき)
1997年、ジェトロ入構。展示事業部、産業技術部、アジア経済研究所、ジェトロ高知、ジェトロ愛媛などを経て2020年から現職。海外はラゴス(ナイジェリア)、ロンドンに駐在。
執筆者紹介
ジェトロ・テヘラン事務所
マティン・バリネジャド
2018年からジェトロ・テヘラン事務所勤務。ビジネス短信や各種調査、展示会などを担当。