輸出入とも1980年以来最大、赤字が急増(オーストリア)
2021年の貿易

2022年10月5日

2021年のオーストリアの貿易は、輸出が前年比16.1%増の1,654億7,600万ユーロ、輸入は23.2%増の1,779億7,700万ユーロ。2019年よりもそれぞれ、7.8%、12.8%増加した。コロナ禍での不調から回復し、現在データが公開されている1980年以来の過去最高を記録したかたちだ。貿易赤字は125億100万ユーロで、前年の18億5,500万ユーロの6.7倍だった。

対日貿易も、輸出は新型コロナ危機以前の2019年のレベルに接近。輸入は同レベルを上回るまで回復した。自動車の貿易は黒字に転じた。

輸出は主力の機械・輸送機器、EU向けを筆頭に概ね好調

輸出を品目別にみると(表1参照)、最大品目の機械・輸送機器(構成比:37.0%)が前年比12.6%増と好調だった。うち道路輸送機器(9.7%)は、乗用車(4.3%)の15.2%増や自動車部品(2.5%)の13.7%増により、13.1%増。ただし、2019年の水準には至らなかった。これは、サプライチェーンの混乱により一時的に生産停止した結果でもある。産業用機械(6.0%)は、プラスチック産業用機械と半導体製造用機械の大幅な増加のため、19.5%増となった。原料別製品(21.3%)は、主力の金属製品(5.7%)と鉄製品(5.1%)の増加により、22.8%増になった。

表1:オーストリアの品目別輸出入(単位:100万ユーロ、%)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2020年 2021年 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器 54,398 61,275 37.0 12.6 50,450 58,889 33.1 16.7
階層レベル2の項目道路輸送機器 14,205 16,061 9.7 13.1 14,986 16,901 9.5 12.8
階層レベル3の項目乗用車 6,223 7,168 4.3 15.2 7,096 7,827 4.4 10.3
階層レベル3の項目自動車部品 3,627 4,124 2.5 13.7 4,514 5,050 2.8 11.9
階層レベル2の項目電気・電子機器 10,260 11,622 7.0 13.3 10,253 12,554 7.1 22.5
階層レベル2の項目産業用機械 8,364 9,995 6.0 19.5 4,554 5,847 3.3 28.4
階層レベル2の項目一般機械 8,696 9,725 5.9 11.8 8,073 9,316 5.2 15.4
階層レベル2の項目原動機 6,019 6,200 3.7 3.0 3,630 4,258 2.4 17.3
原料別製品 28,731 35,294 21.3 22.8 22,943 28,999 16.3 26.4
階層レベル2の項目金属製品 7,551 9,353 5.7 23.9 6,345 7,903 4.4 24.5
階層レベル2の項目鉄製品 6,221 8,402 5.1 35.1 3,542 5,707 3.2 61.1
化学品 22,182 25,193 15.2 13.6 20,951 26,159 14.7 24.9
階層レベル2の項目医薬品 11,940 12,499 7.6 4.7 9,559 11,933 6.7 24.8
雑製品 16,019 17,722 10.7 10.6 21,826 24,553 13.8 12.5
食品・動物・飲料・たばこ 12,005 13,135 7.9 9.4 11,643 12,653 7.1 8.7
原料 4,276 5,841 3.5 36.6 5,818 8,234 4.6 41.5
階層レベル2の項目コルク・木材 1,646 2,440 1.5 48.2 1,407 1,819 1.0 29.3
燃料・エネルギー 2,810 4,154 2.5 47.8 8,258 13,894 7.8 68.2
階層レベル2の項目原油・石油製品 1,308 2,035 1.2 55.6 4,887 7,277 4.1 48.9
階層レベル2の項目電力 1,121 1,620 1.0 44.5 884 1,935 1.1 118.9
階層レベル2の項目天然ガス 380 498 0.3 31.2 2,030 4,186 2.4 106.2
その他製品 2,145 2,862 1.7 33.4 2,533 4,597 2.6 81.5
階層レベル2の項目非貨幣用金 2,112 2,817 1.7 33.4 2,455 4,474 2.5 82.3
総額(その他含む) 142,566 165,476 100.0 16.1 144,421 177,977 100.0 23.2

注:EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
出所:オーストリア統計局

ここで、輸出を国・地域別にみる(表2参照)。

まず、全体の7割近くを占めるEU(構成比:68.1%)が前年比16.9%増と増加に転じた。2019年比でも10%上回る実績だった。その中で最大の輸出相手国が、ドイツ(30.1%)だ。同国向けは、14.8%増。原材料製品(22.7%)の19.8%増、化学品(11.6%)の29.1%増が牽引(けんいん)した。2位イタリア(6.8%)も、26.8%増。原料別製品(28.8%)が30.2%増、機械・輸送機器(20.6%)30.9%増、原料(14.2%)48.7%増と、上位3品目が伸びた。EU域内の非ユーロ圏(16.2%)も、20.7%増だった。中・東欧のルーマニア(1.8%)が26.1%増、ハンガリー(3.7%)が24.1%増、ポーランド(4.0%)が19.3%増だった。これら3国向けの輸出は、機械・輸送機器と原料別製品を主力に大幅に増加したかたちだ。

EU域外(31.9%)は、前年比14.4%増の528億3,386万ユーロだった。このうち最大の輸出先が米国(6.7%)。当年は19.4%増と、堅調に回復した。対米輸出の約半分を占める機械・輸送機器(49.2%)は22.8%増に。このうち、一般機械(7.6%)が58.2%増で、特に伸びが著しかった。アジア太平洋(8.0%)は18.2%増の132億3,000万ユーロになった。うち、中国(2.9%)が23.1%増。機械・輸送機器(51.8%)は、道路輸送機器(12.1%)がほぼ倍増したことが寄与し、25.2%増となった。

ウクライナ侵攻でG7を中心に経済制裁を実施しているロシア(1.2%)、ウクライナへ(0.4%)の国・地域別構成比は、大きくない。いずれにせよ、ロシア向けは輸出相手国上位46の国・地域の中で唯一減少した(5.7%減)。とくに、最大輸出品目である機械・輸送機器(32.7%)が23.3%減と大幅に落ち込んだのが響いた。一方、対ウクライナ輸出は17.5%増になった。

表2:オーストリアの主要国・地域別輸出入 (単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域名 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2020年 2021年 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 96,389 112,642 68.1 16.9 98,766 118,583 66.6 20.1
階層レベル2の項目ユーロ圏 71,548 82,891 50.1 15.9 77,552 91,339 51.3 17.8
階層レベル3の項目 ドイツ 43,431 49,855 30.1 14.8 50,515 58,866 33.1 16.5
階層レベル3の項目イタリア 8,823 11,189 6.8 26.8 9,119 11,531 6.5 26.4
階層レベル3の項目フランス 6,105 6,284 3.8 2.9 3,742 4,531 2.5 21.1
階層レベル3の項目オランダ 2,832 2,832 1.9 13.9 3,983 4,773 2.7 19.9
階層レベル2の項目非ユーロ圏 22,229 26,826 16.2 20.7 19,172 24,434 13.7 27.4
階層レベル3の項目ポーランド 5,507 6,569 4.0 19.3 4,499 5,753 3.2 27.9
階層レベル3の項目ハンガリー 4,948 6,139 3.7 24.1 3,872 4,738 2.7 22.3
階層レベル3の項目チェコ 5,083 6,026 3.6 18.5 6,014 7,772 4.4 29.2
階層レベル3の項目ルーマニア 2,357 2,973 1.8 26.1 1,582 2,162 1.2 36.7
アジア大洋州 11,191 13,230 8.0 18.2 17,989 22,522 12.7 25.2
階層レベル2の項目中国 3,915 4,821 2.9 23.1 10,187 13,096 7.4 28.6
階層レベル2の項目日本 1,522 1,704 1.0 12.0 2,050 2,236 1.3 9.1
階層レベル2の項目ASEAN 1,666 1,812 1.1 8.8 2,980 3,855 2.2 29.4
階層レベル2の項目インド 833 1,030 0.6 23.6 898 1,120 0.6 24.7
米国 9,297 11,100 6.7 19.4 5,259 5,683 3.2 8.1
スイス 7,479 8,173 4.9 9.3 7,617 9,730 5.5 27.7
英国 4,080 4,440 2.7 8.8 2,144 2,738 1.5 27.7
ロシア 2,118 1,998 1.2 △ 5.7 2,171 4,669 2.6 115.1
アフリカ 1,713 1,860 1.1 8.6 1,478 2,224 1.2 50.5
メキシコ 1,097 1,287 0.8 17.3 331 386 0.2 16.5
合計(その他含む) 142,566 165,476 100.0 16.1 144,421 177,977 100.0 23.2

注1:EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
注2:アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港および台湾を加えた合計値。
出所:オーストリア統計局

輸入は全品目で2桁の伸び

輸入を品目別にみると、すべての品目が2桁で伸びた。特に燃料・エネルギー(構成比:7.8%)の伸び率が68.2%と大きかった。上位3品目が、機械・輸送機器(33.1%)、原料別製品(16.3%)、化学品(14.7%)だ。それぞれ16.7%増、26.4%増、24.9%増と、伸びが好調だった。

輸入を国・地域別にみると、EU(66.6%)は前年比20.1%増になった。その中で、非ユーロ圏(13.7%)の伸び率27.4%増が、ユーロ圏(51.3%)の17.8%増を上回った。アジア太平洋(12.7%)は25.2%増。このうち最大輸入元の中国(7.4%)が28.6%増。対中輸入の約半分を占める機械・輸送機器(45.9%)が24.0%増になり、医薬品(8.9%)は約7倍にも伸びた。ロシアは、燃料・エネルギー(86.6%)が2倍強となったことから、全体でも2倍強になった。

2022年1~5月も、輸出入はともに増加傾向にある。同期の輸出は、前年同期比18.9%増、輸入は23.7%増。その結果、貿易赤字は80億ユーロ弱で2倍に増えた。もっとも、オーストリア経済研究所(WIFO)に出した2022年通年の予測(6月時点)は、輸出が前年比5.0%増、輸入が5.2%増にとどまる。ロシアのウクライナ侵攻、エネルギー価格高騰など、下方修正を呼ぶリスク含みだからだ。

対日貿易は輸出入ともに大増、対日輸入は産業用機械が首位品目に

オーストリアにとって日本は、輸出で19位、輸入で18位に付ける(2021年)。アジア太平洋では、中国に続く2番目の貿易相手国だ。同年の対日輸出額は前年比12.0%増の17億400万ユーロ、対日輸入額は9.1%増の22億3,600万ユーロ。いずれも大幅に増加した。その結果、対日貿易赤字は5億3,200万ユーロ。前年の5億2,800万ユーロから微増した。

対日輸出を品目別でみると(表3参照)、最大品目の機械・輸送機器(構成比:47.1%)が前年比18.7%増に。特に寄与したのが、自動車(20.7%)の15.1%増、産業用機械(9.8%)57.9%増などだ。産業用機械の中で、半導体製造用特殊機械(6.2%)が4倍弱と大幅に増加したことも目を引く。なお、長年にわたってオーストリアの主要輸出品目と言えば、コルク・木材(7.1%)や同製品(7.0%)だ。これらも、それぞれ78.8%増、35.6%増と好調だった。

日本からの輸入を品目別でみると、全体の64.1%を占める機械・輸送機器が、前年比9.0%増だった。しかし、このうち、従来、最大品目だった自動車(14.9%)が22.5%減と落ち込んだ。オーストリアの2021年の乗用車の新車登録台数は新型コロナ禍や半導体不足など原材料の供給難が原因で前年比3.6%減となった。日本のメーカー・ブランドの新車登録台数の合計も前年比3.0%減、シェアは10.5%に低下した。一方、乗用車の日本向け輸出は前年比増となり、貿易収支は黒字に転じた。産業用機械(17.2%)は、54.4%増と好調。当年の最大品目として、取って代った。化学品(17.0%)は、医薬品(3.8%)が約2.1倍に伸びたことに牽引され、31.8%増になった。

表3:オーストリアの対日主要品目別輸出入(通関ベース) (単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2020年 2021年 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器 677 803 47.1 18.7 1,314 1,433 64.1 9.0
階層レベル2の項目自動車 306 353 20.7 15.1 429 332 14.9 △ 22.5
階層レベル2の項目産業用機械 106 167 9.8 57.9 249 384 17.2 54.4
階層レベル2の項目一般機械 91 85 5.0 △ 6.9 105 122 5.5 16.0
階層レベル2の項目電気・電子機器 51 56 3.3 10.8 238 287 12.8 20.3
階層レベル2の項目通信機器 15 17 1.0 8.6 65 53 2.4 △ 19.0
階層レベル2の項目事務用機械 10 7 0.4 △ 26.3 141 149 6.7 5.7
原料別製品 257 310 18.2 20.5 136 161 7.2 18.2
階層レベル2の項目金属製品 108 128 7.5 18.6 29 37 1.6 27.0
階層レベル2の項目コルク・木材製品 88 119 7.0 35.6 0 0 0.0 △ 25.2
階層レベル2の項目非鉄金属 9 11 0.6 20.3 14 43 1.9 210.9
化学品 170 168 9.8 △ 1.3 289 380 17.0 31.8
階層レベル2の項目医薬品 94 70 4.1 △ 25.2 40 85 3.8 110.7
階層レベル2の項目有機化学品 14 18 1.0 26.4 104 102 4.6 △ 1.8
その他工業製品 142 136 8.0 △ 4.0 218 238 10.7 9.2
階層レベル2の項目計測機器 79 73 4.3 △ 8.4 103 125 5.6 21.9
階層レベル2の項目雑工業製品 37 40 2.3 7.2 77 69 3.1 △ 9.8
階層レベル2の項目カメラ、光学機器 5 4 0.3 △ 9.9 34 39 1.7 14.1
原料 80 134 7.8 66.4 6 8 0.3 16.8
階層レベル2の項目コルク・木材 68 121 7.1 78.8 0 0 0.0 △ 93.0
食料品 58 63 3.7 9.0 5 5 0.2 8.5
飲料品・たばこ 11 8 0.4 △ 32.6 2 2 0.1 △ 4.3
合計(その他含む) 1,522 1,704 100.0 12.0 2,050 2,236 100.0 9.1

出所:オーストリア統計局

執筆者紹介
ジェトロ・ウィーン事務所
エッカート・デアシュミット
ウィーン大学日本学科卒業、1994年11月からジェトロ・ウィーン事務所で調査(オーストリア、スロバキア、スロベニアなど)を担当。