アフリカ発展の鍵は経済主権、グリーン成長、産業変革
アフリカCEOフォーラム2022が開催
2022年8月17日
コートジボワールのアビジャンで6月13~14日、フランスメディアJeune Afriqueと国際金融公社(IFC)が主催する「第8回アフリカCEOフォーラム」が開催された。新型コロナウイルス感染拡大の影響による中断を経て、3年ぶりの開催となる同フォーラムは、セッションの一部を他国でオンライン開催するなどハイブリッド化を図り、アフリカおよび欧米、アジア諸国から約1,500人の政府関係者や民間企業家が参集した。
フォーラム開会式には、コートジボワールのアラサン・ワタラ大統領が出席したほか、ガーナのアクフォ・アド大統領、ナイジェリアのイェミ・オシンバジョ副大統領、ガボンのオスカ・ラポンダ首相、マクタール・ディオップIFC長官らが登壇した。また、当地を訪問中のマキシマ・オランダ王妃やセネガル、モロッコ、モーリタニアの政府閣僚らも参加した。なお、コートジボワールからはワタラ大統領に加え、ティエモコ・コネ副大統領、パトリック・アシイ首相も参加するなど、政府が同フォーラムを重視する姿勢が示された。
開会式ではまず、ワタラ大統領が、同フォーラムが3年ぶりにアビジャンで開催されたことを歓迎し、新型コロナ禍やウクライナ情勢の影響を受けるアフリカ諸国の課題について、フォーラム参加者が共に話し合うよう呼びかけた。
続いてガーナのアド大統領が、独立から60年を経た今も自国の教育予算の半分を欧州諸国に依存している状況を例に出し、アフリカ自身が自国の行政予算をまかなうべきだとして、アフリカ諸国の経済的自立を強く訴えた。また、IFCのディオップ長官は、アフリカの食糧安全保障に触れ、大陸内でのコメの生産やキビ、フォニオなどの雑穀類の活用を民間部門と協力して展開する必要性を訴えた。
経済主権、グリーン成長、産業変革こそがアフリカ発展の鍵
今回のフォーラムでは各国の政治リーダーにより、経済主権、グリーン成長、産業変革こそがアフリカ発展の鍵であるとの共通認識が発信され、そのもとでナショナル・チャンピオン企業の出現、開発プロジェクトへの資金調達、ガバナンス、食糧安全保障、テロとの戦い、地球温暖化、税制など合計77の民間企業に関心の高いテーマ別セッションが展開された。
民間からは、コートジボワール経団連会長で国内養鶏産業最大手シプラ(SIPRA)のジャン・マリー・アカ会長、ナイジェリア大手コングロマリットBUAのアブドゥル・サマド・ラビウ会長、カメルーンのカカオ輸出最大手テルカール・ココア(TELCAR COCOA)のケイト・カンニ・トメティ・フォトソCEO、モロッコ人材派遣会社大手アンテルシア(Intelcia)のカリム・ベルヌーシCEOなど財界リーダーが参加したが、登録された96人の民間登壇者の大多数は、投資会社、コンサルティングファームが占め、製造業(農業、鉱業を含む)部門からはわずかに10人程度と、全体的にサービス産業の参加が目立った。
このなかで、BUAのラビウ会長は、ウクライナ情勢により露呈したアフリカ大陸の脆弱(ぜいじゃく)な食糧供給体制を懸念して、アフリカにおける製造インフラへの投資の必要性を訴えた。また、TELCAR COCOAのフォトソCEOは、アフリカ・ワイドで業界が団結して、アフリカの持つ有用資源の輸出交渉力を高めるべきであるとの持論を展開した。
フォーラムではこのほか、コートジボワール、ガボン、モロッコ、セネガル、モーリタニアなどのカントリーセッションが開催された。これらのセッションでは、各国当局者が自国における経済特区や工業団地の開発、産業振興に向けた制度改革、さらには農業、エネルギー、環境、金融分野への投資可能性を訴えた。
国際紛争や気候変動などの影響を受けやすいアフリカ経済
6月14日の閉会式では、アフリカ連合(AU)の今期議長を務めるセネガルのマッキー・サル大統領、ニジェールのモハメッド・バズム大統領、コートジボワールのコネ副大統領、ディオップIFC長官による、ハイレベル・パネルディスカッションが行われ、アフリカ諸国の生活環境を改善するためのさまざまな問題やアプローチが議論された。
セネガルのサル大統領は壇上で改めて、国際紛争や気候変動などの影響を受けやすいアフリカ経済の脆弱性に言及し、AUおよび西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)などの枠組みを通じた危機回避の必要性を強調した。これを受けてニジェールのバズム大統領は、ウクライナ情勢の影響で穀物輸入が滞り、自国で450万人が食糧難に陥っている危機的状況を示した。また、コートジボワールのコネ副大統領は、2022年5月にアビジャンで開催された砂漠化対処条約第15回締約国会議(COP15)(2022年6月6日付ビジネス短信参照)の成果をもとに、グリーン成長の重要性を訴えた。なお、閉会式では登壇しなかったものの、フォーラムにはモーリタニアのモハメド・ウルド・エルガズアニ大統領も参加した。
フォーラムの今後の発展に注目
新型コロナウイルス禍により2年間の開催中断を余儀なくされたものの、世界70カ国から1,500人もの参加を得た当フォーラムは、フランス語圏アフリカにおける重要なビジネスイベントとして見事に復活したといえる。しかしながら、フォーラム全体を見渡したところ、政府部門からは各国の大統領や首相などハイレベルが関与した一方、民間部門は業種の広がりが必ずしも大きくなく、各国の本社CEO(最高経営責任者)レベルの関与が相対的に低いように見受けられた。特に開催国コートジボワールの財閥企業をはじめとする有力企業の関与が少なかったほか、フォーラム会場に日本を含むアジア系の参加者が少なかった。当フォーラムが今後、日本企業にとってビジネス参入が難しいと思われているフランス語圏アフリカ市場へのゲートウェイとしてさらに発展していくことを期待したい。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ・アビジャン事務所長
水野 大輔(みずの だいすけ) - 1993年、ジェトロ入構。仏語圏駐在歴は長く、1998年ジェトロ・ブリュッセル事務所、2013年ジェトロ・パリ事務所次長、2014年ジェトロ・ラバト事務所初代所長、2021年から現職。