MATCHA KAORI JAPAN、FTA活用し緑茶の海外展開(メキシコ、ペルー、日本)
中南米地域では横展開狙う

2022年4月18日

静岡県浜松市のMATCHA KAORI JAPAN外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、抹茶を始めとした緑茶関連製品の海外展開を中南米地域中心に積極的に進めている。輸出の際には、経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)(以下、FTA)も活用している。同社の海外展開動向とFTAの活用状況について、代表取締役の吉宮しおり氏に話を聞いた(取材日:2022年3月14日)。

質問:
貴社の海外展開は。
答え:
当方が在住経験のあるイタリアかメキシコで、抹茶を始めとした日本茶関連製品の展開をしたいと考えたのが始まり。当初、両国でパートナーを探しており、イタリアではパートナーを見つけることができなかった中、メキシコは、日本茶を輸入販売したい代理店が見つかり、商品展開を始動することとした。メキシコでは、代理店が日本茶カフェをオープンさせ、商品の普及のために試飲会などのプロモーションを展開した。2018年ごろにメキシコでの売り上げが伸び、メキシコ国内での一定の認知度を得たころ、2019年7月にジェトロ静岡主催の商談会にペルーのバイヤーが来ていることを知り、参加。そこで商談をしたバイヤーと商談が成約し、2021年6月にペルー向けに初出荷した。現在はメキシコ、ペルーの他、香港やドバイ、米国にも緑茶関連製品を輸出しているが、いまだ中南米地域での売り上げが主であり、9割を占める。なお、ペルー向けには地元の酒蔵の日本酒も輸出している。

2019年11月、ジェトロ・リマ事務所内での
商談会参加(MATCHA KAORI JAPAN提供)

2019年3月、メキシコ食品展示会ANTADでの
商談(MATCHA KAORI JAPAN提供)
質問:
FTAの活用状況は。
答え:
現在、メキシコ向け輸出では、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)、ペルー向け輸出では、日本・ペルーEPAを活用している。ペルー向けに2021年6月に出荷した当時は、CPTPPがまだ発効していなかったので、日本・ペルーEPAを利用した。ペルーでもCPTPPが2021年9月に発効したとのことで、次回ペルー向け輸出の際はCPTPPの利用も検討したい。
質問:
FTA利用にあたって、何かトラブルなどはあったか。
答え:
メキシコ向けには当初、日本・メキシコEPAを利用していたが、CPTPP発効後、インポーター経由で通関業者にCPTPP利用への切り替えを試みた。ところが、現地通関業者がCPTPPは利用できないと主張し、約2年間、日本・メキシコEPA利用時の関税10%を払い続けていた。CPTPPを利用すれば0%となる。本件については、ジェトロや在日メキシコ大使館からのサポートもあり、現在は無税で輸出できている。一方で、引き続きメキシコの緑茶市場の競争は激しいことには変わらないので、関税を無税にできるCPTPP利用は必須と考える。
質問:
原産地証明書の取得や準備においてはいかがだったか。
答え:
日本・メキシコEPAや日本・ペルーEPAにおいては、第三者証明制度による原産地証明書の取得が必要となっているが、農家までさかのぼって生産証明書や製造証明書といった書類を入手しなければならないのは大変だった。茶は、生産者の違う茶葉をブレンドしていることが多く、関係する農家の数も多いため、各生産者の書類をそろえるのは時間がかかった。CPTPPの自己証明制度による原産地証明書の準備は、最初は慣れないこともあったが、原産品判定の手続きや特定原産地証明書発行の手間の面ではかなり軽減されている。
質問:
今後の海外展開の展望は。
答え:
カナダ、コロンビア、チリ、アルゼンチンなどの新規市場を狙っていきたい。特にメキシコやペルー向けに作成したスペイン語のパッケージが、そのまま活用できる南米スペイン語圏への横展開は、積極的に行っていきたいと考えている。チリについては、日本・チリEPAで緑茶の関税がすでに無税になっているので、チリ企業と成約し、チリ向けに出荷となった際はEPAの活用を検討したい。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部米州課中南米班
佐藤 輝美(さとう てるみ)
2012年、ジェトロ入構。進出企業支援・知的財産部知的財産課、ジェトロ・サンティアゴ事務所海外実習などを経て現職。

特集:EPAを強みに海外展開に挑む―日本企業の活用事例から

今後記事を追加していきます。