好調だった半導体製造装置の輸出(イスラエル)
2018年の日本とイスラエルとの貿易

2019年4月15日

乗用車と半導体製造装置の堅調な需要が2018年の日本からイスラエルへの輸出を牽引した。半導体製造装置の輸出は、インテル社の設備投資が続くことにより、今後も増加が期待できる。一方、イスラエルからの輸入は医薬品と半導体ウエハー・デバイスの検査用機器などが伸びた。

2018年の日本とイスラエルの貿易を財務省貿易統計(通関統計)でみると、イスラエル向け輸出は前年比10.5%増の2,387億3,499万円、輸入は22.3%増の1,548億8,062万円、収支は前年の894億915万円から838億5,437万円に黒字幅が縮小した。

乗用車も輸出を牽引

輸出を牽引したのは36.0%を占める輸送用機器で、乗用車(HS8703)が801億4,255万円と前年比16.2%増加したことが主因だ。次いで、一般機械の半導体等製造装置・部分品(HS8486)(構成比35.9%)が857億9,909万円で13.2%増、化学製品に分類されるプラスチックの元素・化合物を電子工業用にドープ処理したもの(円盤状、ウエハー状その他これらに類する形状にしたものに限る)(HS3818)が25億7,100万円(44.3%増)と、前年に引き続き好調で輸出拡大に貢献した。この他、非鉄金属でタンタルおよびその製品(HS8103)が主として数量の増加で、10億7,200万円(155.8%増)に増加したのが目立つ。

イスラエルでは、自動車は欧州・トルコなど近隣諸国からの輸入が7割程度と言われ、日本から輸出される車は、メーカーもしくは車種が限定される。乗用車の主体はガソリン車で、排気量1,500cc~3,000ccが5割強、1,000cc~1,500ccが25%程度で、平均輸出単価はそれぞれ158万円、144万円となっている。2018年の価格は前者が0.9%増とほぼ横ばいだったが、後者は21.9%と大きく上昇した。輸出数量は前者が前年比11.9%増、後者は価格上場にもかかわらず32.9%増加している。イスラエル自動車輸入業者協会によると、同国の2018年の自動車登録台数は26万7,490台(前年比5.0%減)だった。内訳をみると、乗用車、バン、ピックアップが前年の水準を下回る中、スポーツ用多目的車(SUV)だけが9万5,517台と25.6%増加している。SUVの中では、KIA、スバル、三菱、SEAT、プジョーの登録台数が前年比それぞれ2,000~3,000台増加していることから、日本からの輸出を牽引したのは、三菱、スバルのSUVが主体だったとみられる。

半導体等製造装置・部分品の輸出は、2016年以降好調に推移している。2018年の半導体製造装置(HS848620)の単価は2億7,832万円と15.4%低下したが、数量では50%増加し、659億6,100万円輸出された。また、半導体ウェファーの検査装置(HS903141)も、単価が9,000万円の機械が15億3,700万円輸出されている。

これは、世界的に旺盛な半導体需要を背景に、イスラエルの半導体製造工場で設備更新・増設が続いているためと考えられる。イスラエル向け半導体製造装置の輸出は、統計コードが設けられた2007年以降の動向しか確認できないが、2007~2008年、2011年~2012年、2015年以降というように、2~3年間隔で周期性が見られる。2015年から始まった今回の需要期は従来の2年より長いが、イスラエルの半導体製造大手のインテルは2018年5月、2020年までに約50億ドルを投資して生産能力を倍増することを発表、さらに1月には、109億ドルの拡張投資を行うと発表している。このため、半導体製造装置の輸出は今後も継続することが見込まれる。

医薬品輸入が4倍増

輸入を牽引したのは医薬品で、147億7,057万円(4.0倍増)、次いで、科学光学機器244億2,928万円(38.9%増)、原動機92億2,920万円(78.5%増)、果実103億5,636万円(30.7%増)だった。一方、半導体等電子部品(IC)は、単価が大幅に低下していることを背景に、41億2,822万円(41.0%減)と減少した。半導体等電子部品(IC)は、2014年以降落ち込みが続いている。

医薬品の中で輸入増に最も寄与したのはオタネニンジンを含む製剤(注)(HS300490029)で、125億円(95.4倍増)と大きく増加した。これは、平均単価が14.3倍、数量も6.7倍増と、主として平均単価の上昇により拡大した。科学光学機器では、半導体ウエハーまたは半導体デバイスの検査用の機器、フォトマスクまたはレチクル(半導体デバイスの製造に使用するものに限定)の検査用の機器(HS 903141)が189億9,000万円(48.3%増)となった。数量が7.7倍に増加したが、単価が80.7%低下したため、金額では48.3%増にとどまった。原動機では、ターボジェットまたはターボプロペラの部分品(HS 841191)が91億1,000万円(78.6%増)と、増加額が大きかった。果実は、グレープフルーツジュース(HS200929)で、イスラエルが当該製品の6割以上を占める最大の輸入先だ。2018年は39億4,800万円(82.5%増)だった。単価が60.4%上昇しているものの、数量でも13.8%増加しており、当該製品の供給先が限られていることをうかがわせる。

輸入を牽引した医薬品だが、イスラエル側の2018年の輸出統計でみると、イスラエルの医薬品輸出の99%が当該製品(HS300490)で輸出額は4,953億4,100万円だった。そして、輸出先は英国が2,304億4,900万円(構成比46.5%)、米国が1,833億4,200万円(37.0%)で、日本向けは9億2,700万円(0.2%、前年比3.4%増)と小さく、増加率も小さい。

日本の輸入統計は、原産地で集計される。2018年にイスラエル製の医薬品の輸入が急増したことは事実だが、イスラエルから直接輸入したものではなく、イスラエルから英国や米国など第3国に一度輸出されたものが日本に再輸出されたものと考えられる。

表1:日本の対イスラエル向け輸出(2018年) (単位:1,000円、%)(△はマイナス値)
輸出 2017 2018 構成比 伸び率 寄与度
総額 216,060,150 238,734,989 100.0 10.5 10.5
食料品 268,791 284,198 0.1 5.7 0.0
原料品 603,759 622,326 0.3 3.1 0.0
鉱物性燃料 15,046 17,558 0.0 16.7 0.0
化学製品 10,609,511 13,054,175 5.5 23.0 1.1
階層レベル2の項目 有機化合物 1,324,034 1,567,743 0.7 18.4 0.1
階層レベル2の項目 医薬品 236,627 106,348 0.0 △ 55.1 △ 0.1
階層レベル2の項目 プラスチック 4,719,214 5,491,108 2.3 16.4 0.4
原料別製品 5,331,249 6,542,413 2.7 22.7 0.6
階層レベル2の項目 鉄鋼 491,411 719,807 0.3 46.5 0.1
階層レベル2の項目 非鉄金属 636,331 1,292,394 0.5 103.1 0.3
階層レベル2の項目 金属製品 1,053,150 1,063,790 0.4 1.0 0.0
階層レベル2の項目 織物用糸・繊維製品 113,688 143,661 0.1 26.4 0.0
階層レベル2の項目 非金属鉱物製品 1,061,552 1,368,288 0.6 28.9 0.1
階層レベル2の項目 ゴム製品 1,483,117 1,414,033 0.6 △ 4.7 △ 0.0
階層レベル2の項目 紙類・紙製品 491,195 538,342 0.2 9.6 0.0
一般機械 88,726,680 99,733,552 41.8 12.4 5.1
階層レベル2の項目 原動機 363,911 826,939 0.3 127.2 0.2
階層レベル2の項目 電算機類(含周辺機器) 243,670 279,646 0.1 14.8 0.0
階層レベル2の項目 電算機類の部分品 205,146 346,811 0.1 69.1 0.1
階層レベル2の項目 半導体等製造装置 75,827,343 85,799,087 35.9 13.2 4.6
階層レベル2の項目 金属加工機械 2,403,669 2,973,772 1.2 23.7 0.3
階層レベル2の項目 ポンプ・遠心分離機 1,646,738 1,421,387 0.6 △ 13.7 △ 0.1
階層レベル2の項目 建設用・鉱山用機械 1,414,365 1,091,566 0.5 △ 22.8 △ 0.1
階層レベル2の項目 荷役機械 751,291 617,448 0.3 △ 17.8 △ 0.1
階層レベル2の項目 加熱用・冷却用機器 1,557,812 1,569,117 0.7 0.7 0.0
階層レベル2の項目 繊維機械 37,571 41,054 0.0 9.3 0.0
階層レベル2の項目 ベアリング 484,458 548,448 0.2 13.2 0.0
電気機器 10,070,305 10,058,799 4.2 △ 0.1 △ 0.0
階層レベル2の項目 半導体等電子部品 1,910,378 1,899,220 0.8 △ 0.6 △ 0.0
階層レベル3の項目 IC 252,373 297,287 0.1 17.8 0.0
階層レベル2の項目 音響・映像機器 351,884 233,835 0.1 △ 33.5 △ 0.1
階層レベル3の項目 映像記録・再生機器 304,037 176,010 0.1 △ 42.1 △ 0.1
階層レベル3の項目 テレビ受像機 12,956 16,139 0.0 24.6 0.0
階層レベル2の項目 音響・映像機器の部分品 62,099 60,395 0.0 △ 2.7 △ 0.0
階層レベル2の項目 重電機器 926,682 847,377 0.4 △ 8.6 △ 0.0
階層レベル2の項目 通信機 333,308 406,244 0.2 21.9 0.0
階層レベル2の項目 電気計測機器 1,316,786 1,083,419 0.5 △ 17.7 △ 0.1
階層レベル2の項目 電気回路等の機器 752,583 1,065,128 0.4 41.5 0.1
階層レベル2の項目 電池 15,475 15,499 0.0 0.2 0.0
輸送用機器 77,619,596 86,051,864 36.0 10.9 3.9
階層レベル2の項目 自動車 74,347,458 83,604,441 35.0 12.5 4.3
階層レベル3の項目 乗用車 68,949,972 80,142,548 33.6 16.2 5.2
階層レベル3の項目 バス・トラック 5,397,486 3,461,893 1.5 △ 35.9 △ 0.9
階層レベル2の項目 自動車の部分品 1,281,456 945,665 0.4 △ 26.2 △ 0.2
階層レベル2の項目 二輪自動車 1,884,223 1,290,064 0.5 △ 31.5 △ 0.3
階層レベル2の項目 航空機類 14,706 45,694 0.0 210.7 0.0
その他 22,815,213 22,370,104 9.4 △ 2.0 △ 0.2
階層レベル2の項目 科学光学機器 4,923,189 4,981,326 2.1 1.2 0.0
階層レベル2の項目 写真用・映画用材料 4,241,466 4,644,744 1.9 9.5 0.2

出所:財務省:日本貿易統計確定値(2019年3月13日発表)

表2:日本のイスラエルからの輸入(2018年)(単位:1,000円、%)(△はマイナス値)
輸入 2017 2018 構成比 伸び率 寄与度
総額 126,651,003 154,880,620 100.0 22.3 22.3
食料品 8,869,001 11,243,036 7.3 26.8 1.9
階層レベル2の項目 魚介類 15,865 14,126 0.0 △ 11.0 △ 0.0
階層レベル2の項目 穀物類 26,008 29,542 0.0 13.6 0.0
階層レベル2の項目 野菜 285,213 288,551 0.2 1.2 0.0
階層レベル2の項目 果実 7,922,637 10,356,364 6.7 30.7 1.9
原料品 1,615,790 2,105,567 1.4 30.3 0.4
鉱物性燃料 25,311 37,330 0.0 47.5 0.0
階層レベル2の項目 石油製品 25,311 37,330 0.0 47.5 0.0
階層レベル3の項目 揮発油 1,198 201 0.0 △ 83.2 △ 0.0
化学製品 21,257,997 30,914,423 20.0 45.4 7.6
階層レベル2の項目 有機化合物 6,357,385 5,474,300 3.5 △ 13.9 △ 0.7
階層レベル2の項目 医薬品 3,715,202 14,770,571 9.5 297.6 8.7
原料別製品 18,299,757 19,456,184 12.6 6.3 0.9
階層レベル2の項目 鉄鋼 921,966 996,798 0.6 8.1 0.1
階層レベル2の項目 非鉄金属 207,791 116,856 0.1 △ 43.8 △ 0.1
階層レベル2の項目 金属製品 6,338,137 7,946,567 5.1 25.4 1.3
階層レベル2の項目 織物用糸・繊維製品 453,948 487,004 0.3 7.3 0.0
階層レベル2の項目 非金属鉱物製品 10,228,331 9,782,551 6.3 △ 4.4 △ 0.4
階層レベル2の項目 木製品等(除家具) 10,142 12,084 0.0 19.1 0.0
一般機械 18,375,211 25,098,917 16.2 36.6 5.3
階層レベル2の項目 原動機 5,171,058 9,229,195 6.0 78.5 3.2
階層レベル2の項目 電算機類(含周辺機器) 2,885,276 3,500,946 2.3 21.3 0.5
階層レベル2の項目 電算機類の部分品 650,592 670,890 0.4 3.1 0.0
電気機器 31,015,882 35,641,441 23.0 14.9 3.7
階層レベル2の項目 半導体等電子部品 6,995,064 4,128,220 2.7 △ 41.0 △ 2.3
階層レベル3の項目 IC 6,771,298 3,817,512 2.5 △ 43.6 △ 2.3
階層レベル2の項目 絶縁電線・絶縁ケーブル 115,269 189,896 0.1 64.7 0.1
階層レベル2の項目 音響映像機器(含部品) 827,382 1,063,684 0.7 28.6 0.2
階層レベル2の項目 重電機器 2,178,218 2,613,505 1.7 20.0 0.3
階層レベル2の項目 通信機 4,080,370 4,500,834 2.9 10.3 0.3
階層レベル3の項目 電話機 957 1,559 0.0 62.9 0.0
階層レベル2の項目 電気計測機器 6,258,269 8,208,461 5.3 31.2 1.5
輸送用機器 407,436 573,133 0.4 40.7 0.1
階層レベル2の項目 自動車の部分品 408 4,533 0.0 1,011.0 0.0
階層レベル2の項目 航空機類 364,780 557,068 0.4 52.7 0.2
その他 26,784,618 29,810,589 19.2 11.3 2.4
階層レベル2の項目 科学光学機器 17,588,840 24,429,280 15.8 38.9 5.4
階層レベル2の項目 衣類・同付属品 90,095 84,655 0.1 △ 6.0 △ 0.0
階層レベル2の項目 家具 92,669 91,849 0.1 △ 0.9 △ 0.0
階層レベル2の項目 バッグ類 16,140 17,870 0.0 10.7 0.0

出所:表1に同じ


注:
混合しまたは混合してない物品から成る治療用または予防用のもので、小売り用の形状もしくは包装にしたもの。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課
小野 充人(おの みつひと)
1981年、ジェトロ入構。主として国内では調査部勤務。海外はドバイ事務所駐在(1991-1994)。
主としてトルコ、イスラエル、湾岸諸国を担当。国際貿易投資研究所研究主幹。