世界最大級のテックイベント「ウェブサミット2018」開催(ポルトガル)
日本もスタートアップ6社のブースを初出展
2018年11月29日
モノのインターネット(IoT)や自動化技術、人工知能(AI)などイノベーションテクノロジーの世界最大級のイベント「ウェブサミット2018」が11月5~8日にポルトガル・リスボンで開催され、ジェトロは日本のスタートアップ企業6社からなる「J-Startup 」 (注1)ブースを初出展した。
2028年までのリスボン開催が決定
ウェブサミットは、欧州版コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)とも称される世界最大級のカンファレンスで、企業による技術の展示、投資家向けプレゼンテーション、セミナーなどが行われる。2010年にアイルランドのダブリンで初開催され、当初の参加者は400人だったが、2013年は1万人、2015年は4万人、2017年は6万人と飛躍的に増加している。規模拡大に伴い、2016年から開催地をリスボンに移し、ポルトガル政府が国を挙げて行った誘致が功を奏し、2028年までのリスボン開催が10月に決まったところだ。
今回のウェブサミットには1,800を超えるスタートアップ企業、約200の大企業が出展し、159カ国から1,500人の投資家、2,600人のジャーナリストを含む6万9,000人の来場者を迎えた。開会式でポルトガルの アントニオ・コスタ首相は、「ウェブサミットがリスボンにもたらした経済効果は3億ユーロ以上。今後3年以内に会場設備を2倍に拡張させる」と発表した。
参加者全員とつながるアプリが魅力
ウェブサミットでは、カンファレンスへの参加申し込みや自社製品の売り込み、投資家とのミーティングやピッチコンテストへの応募は全てオフィシャル・アプリで行われる。さらにアプリには、出展者、スポンサー企業、投資家、登壇者、スタッフとカンファレンスに関連する全員が登録されており、全参加者がアプリ上で自由につながることができる。ウェブサミットを運営するスタッフの半数はデータサイエンティストであり、独自開発のアプリを通じたビジネスマッチングもカンファレンス参加の大きな魅力だ。また、一般来場には1,500ユーロの参加費がかかるため、来場者の商談意欲が高く、この点も特徴といえよう。
今回、ジェトロが初出展した日本の「J-Startup」ブースには、6社が出展した。
その1つ、アンビー(ambie)は2017年創業のスタートアップ企業。耳をふさがずに音を楽しめる新感覚の「“ながら”イヤホン」(注2)をはじめ、オーディオ製品やデジタルコンテンツの企画・開発を行う。ビジネスパートナー発掘を目的に参加したが、多くの来場者があり、オーディオ製品を試すなど連日にぎわいを見せた。
商談を望む企業へのアプローチにウェブサミットのアプリを活用したとのことで、同社プロダクトディレクターの三原良太氏は「アプリで参加者全員とつながることができるのはウェブサミットの大きな魅力。通常ではコンタクトを取ることが難しい欧州のターゲット企業と実際に会って商談することができ、今後の発展に大きな手ごたえを得た」と話した。
エンパス(Empath)も、2017年に創業したスタートアップ企業だ。数万人の音声データベースを基に、喜怒哀楽や気分の状態を独自のアルゴリズムで判定するプログラムを開発しており、会場でのデモンストレーションは、来場者の高い関心を集めた。
同社の最高戦略責任者(CSO)山崎はずむ氏によると、「ウェブサミットは今まで参加したテクノロジーカンファレンスの中で、(当社にとって)最良のイベントだった。効率的に世界中のビジネスパートナー候補や投資家候補から多数のアポイントが入る。また、プレスからも多数取材を受け、ポルトガルの国営テレビでも中継報道されるなど、今後に向けた効果的なPR機会にもなった」と手ごたえを感じたようだった。
- 注1:
- 経済産業省の支援プログラム「J-Startup」で審査の上選定された有望企業。
- 注2:
- 耳をふさがない形状のイヤホンで、音楽などを聴きながら周囲の音も聞くことができる。
- 変更履歴
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文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2018年11月30日)
- 最初の小見出し:
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(誤)2028年までのダブリン開催が決定
(正)2028年までのリスボン開催が決定
- 執筆者紹介
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ジェトロ・パリ事務所
遠藤 朋美(えんどう ともみ) - 2007年ジェトロ入構。在外企業支援・知的財産部、農林水産・食品部、ジェトロ・香港事務所、ジェトロ横浜を経て2018年7月より現職。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・パリ事務所(在リスボン)
小野 恵美(おの えみ) - 2007年よりジェトロ・パリ事務所コレスポンデント(在リスボン)