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日本産食材サポーター店インタビュー UMU(うむ・生)

「目の前のお客さんを喜ばせる懐石料理」を信条に、本物の日本食材を追求するミシュラン二つ星店

所在地:ロンドン(英国)

現地のお客さんに愛される「UMU」流懐石料理

ヨーロッパの日本料理店で初めてミシュラン二つ星を獲得した「UMU」。ロンドン中心部メイフェア地区の一角に、隠れ家的にひっそりと佇む。総料理長の石井義典さんは、「京都吉兆」嵐山本店で経験を積み、副料理長にまで昇格。ジュネーブとニューヨークで国連大使公邸の料理長を務めた後、ニューヨークの「MORIMOTO」レストランでキャリアを重ね、2010年に「UMU」2代目総料理長に抜擢されてロンドンへ。

「懐石のコンセプトとテクニックにこだわりつつも、現地の文化や食材を取り入れて、目の前のお客さんに喜んでもらうことを最大の目標にしています。馴染みのない日本の行事や季節感を押し付けるより、王室行事に合わせたお祝い料理や、狩猟シーズンにジビエを出す方が、こちらでは好評です。形やルールではなく、お客様に喜んでいただくことこそが、本物の懐石料理の精神だと思っています」と石井さん。その結果、日本人以外のお客さんが約95%、最近の懐石料理のオーダー率は夜だけなら約50%の計算になるという。世界最高級の食を知り抜いている顧客たちから、「日本で食べられるものはここでは食べたくない、UMUの料理を食べたい」と熱望されるのだそう。

世界に誇る日本の技術と自然の恵み

「海と山に恵まれた日本の魚や野菜は、世界のどこにも負けない」と石井さん。そんな日本産食材の欧州での代表格が、EU市場を独占する養殖ハマチ。「脂が乗っている、柔らかい、味がしっかりしている、個性がある、パックを開けたらそのまま刺身にして出せる。世界中の人々に喜ばれる要素を持っています」。日本産の冷凍の養殖ホタテも、新鮮な現地産よりも甘くて味が強いという。

ニューヨークでは、築地市場から週2便空輸される魚を使っていたので、上質な魚介類に不自由することはなかったそうだ。けれども、イギリスではそれができない。美味しい魚も手に入らない。そこで、石井さんは自らイギリス南西部のコーンウォール地方やポルトガルに出向き、現地の漁師に日本の活け締めの技術を教えた。「UMUが今のポジションを築けたのは、活け締めのおかげでもある」という。

このように、日本の技術がもっと活用されるべきだとも感じている。例えば、UMUで使用しているアイスランド産のウニ。現在では、フランスの業社によって大箱に詰められた殻付きのものしか手に入らない。輸送コストもかかり、仕入れられる量には限度がある。処理の手間暇もかかる。「ウニの人気はうなぎ上り。いつも売り切れになり、悔しい思いをしています。日本人がアイスランドに投資して、日本で売られているように、きれいにパックされたウニの身を出荷してくれれば、いくらでも売る自信はあります」。

求められているのは、特殊性のある日本固有の食材

今、シェフたちは、簡単に使えて特殊性のある食材を探しているという。そんな需要に応えられる日本食材として、石井さんは、「木の芽、実山椒、芽ネギ、花穂紫蘇」を挙げる。UMUの懐石料理を体験したシェフたちは、誰もが花穂紫蘇や実山椒に魅了されるという。ヨーロッパの人々にとって、このエキゾチックな香りは衝撃なのだ。そして日本レストラン以外では、まだどこにも使われていない。これは大きなビジネスチャンスだ。「日本の農家では、木の芽をハウス栽培で2〜3ミリの均一な葉に育て、丁寧に収穫し、手間をかけてパック詰めしています。あんなに美味しくて美しくて繊細で、かつ扱いやすいものは、こちらの誰にも作れないでしょう」。

すでに市場に出回っている柚子、ワサビにも、まだまだ伸び代はあるという。「柚子は日本産だけでは間に合わないので、いつもフランスから入れています。でも、日本産の柚子が出回る期間はフランス産より長い。日本は貯蔵技術がしっかりしているから、多少シーズンが過ぎても売れるんです。これは大きな強みです」。ワサビは、イギリスでも生産されているが、味のよさ、香りの強さでは圧倒的に日本産が優るという。水のミネラル分、日射量、木漏れ日の加減など、日本の風土が生育環境に適しているからだ。ここにも可能性が眠っている。

「日本人が得意なはずの『消費者の声を聞く』ということが、海外に関しては上手くいっていないと感じます。ごく一部の情報で大きなプロジェクトが動き、私のように現地で長い間仕事をしている人間の生の声はなかなか届かない。日本には世界に売り出せる宝がまだまだいっぱい眠っていますが、それは日本国内にいると普通すぎて忘れられてしまうかもしれません。もっと現地の声を聞いてくれれば、本当の需要を理解してもらえるのではないかと思います」。

信頼できるルート作りで徹底した品質管理を

日本産の食材は素晴らしいとはいえ、現状では石井さんが求めるレベルのものはなかなか手に入らないという。お客さんから、「日本で食べたものと違う」といわれることもあるそうだ。「とくに京野菜など非常に繊細なものは、きちんとしたルートを作らないと、数日の輸送に耐えきれないこともある。信頼できる中間業者を入れて、生産者との間をつなぐ必要がある」と石井さん。

そんなUMUの品質管理は徹底している。ポルトガルから仕入れる魚の場合、まずその日水揚げされた魚が、港でチェックされる。「UMUクォリティ」の魚が選りすぐられ、リスボンに送られる。リスボンでも再度品質検査が行われ、「今日はカツオがあまりよくなかったから、ここで却下させてもらったよ」という連絡がくる。さらにロンドンに到着後、店に配達される前に再三検査が入り、「ヨシ、悪いけど、この魚とこの魚はUMUのクォリティに達しなかったから、今日は出さなかった」と連絡が入る。「本当にいいものを提供するにはこのくらい徹底しないと。日本からのものに関しては、残念ながらここまでできていない。だから独自でルートを作ろうと動いているんです」。

本物の日本食材の素晴らしさを「通訳」したい

最近では、京都で400年に渡って伝統野菜の種子を守り続けている「樋口農園」の野菜を、海外へ届けようと奮闘中だ。「樋口さんが作る本物の九条葱は、とても太くて、採れたてを生のままかじると、信じられないほど甘い蜜が流れてくるんです。さっと火を通して炒めるだけでも、甘くて柔らかくて極上の美味しさ。太くて甘めの西洋ネギが主流のヨーロッパでも、絶対に喜ばれますよ」。ポテンシャルは大きい、と自信を持っている。

だが、「どんなにいい食材も、レストランを制覇しないと一般の市場には流れていかない」という。「その美味しさを伝えるには、シェフによる『通訳』が必要だと思うんです。僕がそれをやるから、本物は海外でも売れることを証明していこう、と樋口さんに言っています」。海外で売れれば日本国内でも『本物』を守る動きにつながる、という石井さん。「残念ながら市場を通してロンドンに入ってくる九条葱は、東京でもよく見られる大量生産物。僕が食べたって美味しいとは思いません。価格が桁違いに安いアフリカ産のスプリングオニオンのほうが甘いくらいです。本物を見分けられる優秀な海外のシェフは、誰も振り向きません」。

長年の多岐にわたる活動が評価され、2016年、石井さんは、農林水産省より日本食普及の親善大使に任命された。「僕の役目は、日本料理を武器に、陶芸、生け花、絵画など、すべての表現を使って、日本の文化をこの地の人々に楽しんでもらうこと」。休日はほぼ陶芸に費やし、店の花は毎日自分で生ける。当然日本の食材を広めたいという思いも人一倍強い。だからこそ自分にほとんど利益がなくても、真摯に取り組む生産者を応援し、ルートの開拓や技術の普及に日々奔走している。「大使になる前も後も、やっていることは変わりません。これからも、自分のやり方で、信じる道を行くのみです」と目を細める石井さんだった。

UMU
14-16 Bruton Place, London W1J 6LX
Tel: 020 7499 8881
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