海外における日本産食材サポーター店認定制度
日本産食材サポーター店インタビュー Ryo Gastronomia(良)
カウンター8席・「おまかせ」のみ。
日本で学んだ基礎を守り、きちんと仕事をするだけ。
所在地:サンパウロ(ブラジル)

新たなスタイル、少人数カウンター・「おまかせ」のみ
2019年末、現地大手紙に特集された飲食業界の新たなムーブメントとして「少人数カウンター」が紹介された。「おまかせ」のみの寿司懐石レストラン「良」を指しての記事だ。2016年オープン当初は60席ほどの懐石料理店を営業していたが、2019年から店舗を大幅改装し、カウンター8席、メニューは「おまかせ」のみの寿司懐石料理店となった。ランチは12時からの一部制、夜営業は19時半と21時半の二部制になっており、完全予約制をとっている。特に夜の部は2週間後まで予約がすべて埋まっている。
良のエジソン山下シェフは、日系2世、15歳で日本に渡りすし勘(神奈川県武蔵新城)で8年間修行し、2005年の帰国後は、国内の寿司店や和食店で修業し、2016年に良をオープンした。山下シェフの確かな和食技術は、瞬く間にブラジルの美食家達の知るところとなりオープン3年目の2018年にミシュラン一つ星を獲得した。

よりよい料理のために、食材への強いこだわり
山下シェフは毎朝に市場に出かけて、新鮮な魚を自らの目利きで仕入れてくる。また、ブラジル国内複数の信頼できる漁師からの直接買い付けも行っている。
また、野菜は契約農家と一緒に栽培計画を立てたり、カラスミやハチミツなどは自分で作るなど、食材へのこだわりがとにかく強い。
毎日調達できる食材が異なるため、メニューを決めるのは当日の朝7時だという。
煮切り醤油用の醤油、ダシ用の昆布、鰹節、その他調味料や香辛料、日本酒や焼酎、お茶などは日本産を使っている。しかし、山下シェフは日本にはもっと良い食材があることを知っており、現状に全く満足していない。「もっと良い昆布や鰹節が必要だし、酢にももっとこだわりたい。冷凍しても戻して使える水産物、たとえば甘エビやスルメイカ、アオリイカ、イクラなどは日本のものが欲しい。最近ようやく日本産和牛(鹿児島産)が輸入されるようになり、これには満足している。」と言う。

こだわりは舌と目と耳で
ブラジルに初めて持ち込まれた少人数カウンター、メニューは「おまかせ」のみというスタイルに、ブラジルの美食家達の評価は上々だ。常連客の数は日に日に増え、週に一度の頻度で来訪する客も少なくない。仕入れ食材によって毎日メニューが変わるだけでなく、同じ食材でも客の顔を見ながら技法や盛り付けに工夫をするため、常連客でも驚かない日はない。狭い空間でシェフといつでも会話ができるため、客は山下シェフのこだわりを、舌で、目で感じ、頭で理解しながら料理を楽しむことができる。「『日本では毎日こんなにおいしい料理が食べられるのか?』と言ってくれる客は多いが、『日本ではもっとおいしいものがたくさんある』と答えている。」と少し照れくさそうな山下シェフは、「本当に、もっと日本の味に近づけなければならない。日々勉強だ」と続けた。

きちんと仕事をするだけ
日本食文化がブラジル人にも受容され始めて30年程度であり、まだまだ新しい文化であるが、ブラジル版ミシュランガイドでは、星獲得18店舗のうち日本料理店が7店舗と大きな比重を占めている。
山下シェフは「日本食がブラジルで広がったことで、ブラジルでこれまで食べられてこなかった食材が市場に流通するようになった。コンテンポラリー料理のトップシェフたちは、日本食文化の普及によってもたらされた新たな食材や、和食の技法を取り入れようとして勉強している。食材の基本的な使い方や、技法をミシュラン二つ星シェフに教えることもある」といい、今後日本産食材の需要拡大が期待される。
最後に山下シェフに、良のこれからについて尋ねると、しばらく考え込んでから「特別なことはしない。すし勘で学んだ基礎を守って、きちんと仕事をするだけ。」と答えた。

Ryo Gastronomia(良)
Rua Pedroso Alvarenga, 665 – Itaim Bibi, São Paulo -SP
+55 (11) 3881-8110
https://www.facebook.com/ryogastronomia/