海外における日本産食材サポーター店認定制度
日本産食材サポーター店インタビュー なぎ屋
日・タイで展開する大衆居酒屋
日本の食トレンドをタイで発信
所在地:バンコク(タイ)

自ら産地に足を運び、食材を開拓
バンコクに1700店を数える日本食レストランの中でも、「なぎ屋」の評価は特に高い。もともとは東京方南町の大衆酒場としてスタート。食材の質はもとより、丁寧な手仕事が光るメニューの数々に人が人を呼び、今では都内に8店舗、タイで7店舗を展開するグループへと成長した。
今回お邪魔したのは、在住日本人の集中するエリアからやや離れたプラカノン店。レストランマネージャーの小次一生(こつぎいっせい)氏が応対してくれた。「日本産の食材は主に北海道と築地から。輸入ライセンスを取得しているので自社で肉や魚を仕入れるほか、細かいアイテムは業者に発注して補う二本立てでやっています。私を含めスタッフが交代で日本へ行き、産地と価格、状態を見て、海鮮業者から直接仕入れるパターンもあります。北海道、小田原、金沢などに並ぶ鮮魚をくまなくチェックしたり、養殖の現場にも、牡蠣のあがる漁港にも顔を出します。自分たちが行けない時には、日本の店舗スタッフの力を借ります。行くと必ず発見がありますから」。

日・タイ双方の食トレンドを積極的に採用
食のトレンドに対し、常にアンテナを高くしているのも同店の特徴だ。「日本に行ったら繁盛店の視察も欠かせません。マグロの断面刺しが流行っている、肉寿司が人気だ、と情報を得たらすぐに吸収してタイでも実現する。飲食を取り巻く流行のスピード感に対応し、日本人にもタイ人にも、時差なく食べてもらおうと努めています」。それと同時に、タイで起きている食のトレンドにも目を配る。「タイ人オーナーの寿司屋などで働いていたスタッフから、日本人には思いつかないフュージョン料理やカラフルな盛りつけを提案されることがあります。そこから日本人向けテイストに落とし込んでいくわけですが、完成した料理はタイ人にはもちろん、日本人のお子様にも喜ばれました。いわば日タイ融合の味ですよね。いま、日本へ頻繁に行っているタイの青年実業家が、日本食レストランを出店するケースが見受けられます。一過性の流行ではなく、ここまで日本食が定着した状況から考えると、今後こうした業態も増えていくと思います。ですので、私たちも、日本の味をベースに、タイに近づける流れも同時に意識しているわけです」。

日本産の高品質な魚介類が人気
店舗ごとに異なるが、ここプラカノン店では客の7割をタイ人が占める。彼らが注目するのは、サーモン、えんがわ、カニみそと、密度の濃いうま味がウリの「豪快のっけ寿司」。ズワイガニのみ鳥取境港で、ほかはすべて北海道から。在住日本人、タイ人ともに不動の人気を誇るのは、広島の「焼き牡蠣」と「日替わりの鮮魚」。上質な脂をまとった肉厚な金目鯛は、八丈島で水揚げされた極上品だ。サーモンとサバをノルウェー、まぐろの一部をタイ・プーケットで仕入れる以外、鮮魚のほとんどを日本産、日本加工品で揃えている。というのも、「たとえば、タイ産のイカは味は悪くないものの、加工の段階で日本の常識とのズレなどがあり、理想通りのものが手に入りません。日本産に求めているのは味とクオリティの安定です。また、干物の場合も、日本の加工業者なら身の大きさや塩加減を細かく注文できますし、必ず満足いくものが上がってきます」。

今後のチャレンジは低価格の実現
酒類はトレンドや酒税を勘案し、年二回は見直しを図る。現在のラインナップは口当たりのすっきりした「獺祭」や「真澄」を中心に日本酒10種類。焼酎は8種類を軸に、その時のおすすめ銘柄を加えて変化をつける。「これから積極的に取り入れたいのは、季節のお酒です。秋口は冷おろし、冬には初しぼりと、四季折々の日本酒とそれに合う料理を通して、もっと日本を知ってほしい。日本人の日本酒離れにも淋しい気持ちがありますし、おいしい日本酒がこんなにあるってことをタイ人にも周知していきたいので、価格を限界まで抑えています。
加えて、牡蠣やカニもさらに気軽に味わえるよう、日本との価格差をさらに縮めていくのが目下の目標です」と小次氏は意気込む。「毎日でも来てもらえる店」「ここへ来れば本物の日本食が味わえる店」を掲げ、タイで躍進する「なぎ屋」。目まぐるしい変化のなかにも脈々と流れる日本の心が、さらなる展望への大きな原動力となっているようだった。

なぎ屋
639 Sukhumvit 71 Rd., Klongton-Nua, Wattana, Bangkok
(+66)02-381-1976
www.nagiya-bkk.com