海外における日本産食材サポーター店認定制度

日本産食材サポーター店インタビュー 焼肉ふたご

日本料理の1ジャンルとして認められつつある「焼肉」をアメリカに広げる

所在地:ニューヨーク(米国)

焼肉の米国市場展開はここから

大阪出身の双子の兄弟、李兄弟が2010年に開業した焼肉チェーン「焼肉ふたご」は首都圏を中心にハワイ、香港、上海など全世界で50店舗を展開する。初のニューヨーク店は2015年5月にオープン。デザイナーやアーティストなどクリエーティブな人種が集まるマンハッタンのチェルシー地区に、近未来感覚と和のテイストが同居するモダンな店舗を構えて人気を博している。「アメリカにおける焼肉の浸透度は寿司やラーメンに比べるとまだまだ低く、ニューヨークでも当店を含め数件しかありません」と語るのはゼネラル・マネージャーの酒井純平さん。韓国式バーベキューとは差別化した「日本の焼肉」をコンセプトから味つけまで丸ごと導入してアメリカ市場の拡大を狙う。

本物の和牛を広めたい

それだけにメインの食材である牛肉には日本産のものを積極的に取り入れている。「Wagyu(和牛)という食材と名称はブランド化しており、一般のステーキハウスでも和牛をメニューに載せている店が少なくありません。当店のお客様でも和牛を注文される方が増えています」

一方でアメリカでの和牛の定義は曖昧だ。和牛を謳いながらも、実際にテーブルに出されるのは米国産の和州牛(和牛とブラックアンガス種を掛け合わせた品種。和牛とは質も味わいもかなり異なる)だったり、和牛=神戸牛と勘違いする人も多い。 そこで同店では、日本産和牛のみをWagyuと称し、メニュー上でもWagyuのコーナーを設け、米国産肉と差別化している。ウェイターは質問されれば生産地を説明できるよう常に準備しているという。「鹿児島産が3割、宮崎産が7割です。肉質の等級では最上級のA5ないしはA4が中心。日本で取引している食肉業者さんから特別価格で直輸入しています。肉の選別は彼らに一任しているので当店からは産地指定しません。この信頼関係があるため、最高級のお肉を他では真似できないようなリーズナブルな値段で提供できるのです」。

未知の美味しさは稀少部位

同店で一番人気のメニューはWagyuコーナーのエース「はみ出るカルビ」。文字通りロースターに収まりきれない巨大なカルビである。一枚で、リブ芯、リブ巻き、カブリ、ゲタという味と食感が異なる4種の部位を楽しめる。毎日数量限定で提供しているが、あっという間に完売とのこと。

さらに上級者の和牛ファンに向けて同店が最近開発したメニューが稀少部位を少しずつ堪能できる「和牛デラックス・サンプラー」だ。米国のステーキハウスの主力部位はロイン系(サーロイン、フィレ、リブロース)。それ以外の肩や腿は固すぎてステーキに適さないためミンチにしてハンバーガーのパティなどに回される。

ところが、脂がのって肉質が柔らかい和牛の場合、そういった部位も焼くと美味しくいただける。「稀少部位のステーキは日本の国産和牛の焼き肉でしか体験できません。ランプ、サンカク、カタ、イチボなど脂肪分も歯ごたえも違う4つの稀少部位をセットにして紹介することで、お客様に和牛の奥深い魅力を堪能してもらいたいです」と酒井さんは語る。

和牛に合う地酒を提供

和牛以外の日本食材では、タレは日本の店舗で使用しているオリジナル製品を輸入する。「当店自前で作るとどうしても味にブレが出てしまうので」と酒井さん。その他、だし昆布、かつお節、醤油などの味付けの要となる調味料は日本産を使用。また、〆のメニューとして人気の「盛岡冷麺」の麺も日本産である。「ニューヨークは日系食品商社もあり、一般的な日本食材に関しては入手困難ということはありません」とのこと。

一方、「ドリンクメニューの中心でお客さんの5割が注文する」という日本酒に関しては、常時10銘柄以上を取り揃える。中でも、和牛焼肉と相性の良い一品として、新潟県の地酒「久保田」の珍しい吟醸原酒を推奨する。「通常の日本酒よりアルコール度数が幾分高くボディーがしっかりしているので焼肉のタレに負けないのです」。

和牛リピーターの大多数が、同銘柄をリクエスト。「日本では起こりえないニューヨークだからこそ生まれたペアリング。こうした新しい楽しみの発見が何よりも面白いです」と酒井さん。

売れ行きも知名度も好調に伸長する中、今一番の悩みは、和牛を扱える本物の「切り手」(キッチンスタッフ)がいないこと。「和牛は解体方法や切り方を間違えると、肉の持ち味が台無しになります。そこを理解している専門職人が米国では見つかりにくい。せっかくの優れた日本食材が手に入っても、それを料理できる人間がいないと意味ないですからね。今後の人的交流の円滑化に期待します」と結んだ。

焼肉ふたご
37 W 17th St, New York, NY 10011
(212) 620-0225
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