海外における日本産食材サポーター店認定制度
日本産食材サポーター店インタビュー 呑
魚の種類なら他店に負けない
仲買業者との信頼関係をベースにした品揃え
所在地:バンコク(タイ)

食材のほとんどを日本から取り寄せ
いつ来ても、空輸便で届く日本産の新鮮な魚介類を使った江戸前寿司や刺し身が楽しめる、と評判なのが会席料理店の「呑」だ。2013年にトンローに店をオープンし、2015年にエカマイに店を移転。風情のある2階建ての店舗には掘りごたつのある個室も備え、ゆったりくつろぎたいという顧客のニーズに応えている。
コンセプトは「厳選した日本の食材を在留日本人にリーズナブルな価格で提供すること」。このコンセプトを裏付けるように、約130種類の料理が揃ったグランドメニューや、週に2~3回入れ替わる20種類ほどの料理を紹介したおすすめメニューには、日本産の食材がずらりと並ぶ。付け合せの薬味や野菜を除けば食材はほぼ日本産。北海道産のアイナメ、千葉産のスズキ、鹿児島産のシマアオダイ、岩手産の牡蠣など、築地の仲買業者から週4回の頻度で届く魚介類がネタケースに並ぶ様は圧巻だ。「魚好きのお客様が多いのがうちの特徴。魚の種類は他の店には負けない自信があります」とこの道30年のキャリアを誇るエグゼクティブシェフの穂坂朗(ほさかあきら)氏は胸を張る。

兵庫産、山梨産の食材とお酒に注力
日本産の食材を使った料理の中で一番人気は、7種の魚の刺し身を2切れずつ盛り付けた「おまかせ7品盛り」。日本人、タイ人ともに注文する客が多く、この日は長崎産のマグロ、愛媛産のカンパチ、兵庫産のアジ、鹿児島産のタイやイサキなど、いきのいい魚が揃っていた。タイ人にはマグロやウニ、穴子の寿司も好評だ。
「呑」の強みといえるのが、兵庫出身のオーナーと山梨出身の穂坂氏のコネクションを活用して、兵庫産や山梨産の食材や酒類を安価に品揃えしていること。日本産酒類は、日本酒や焼酎、ワインなど約50銘柄。このうち、「菊正宗 生貯蔵酒」や「菊正宗上撰生酛本醸造辛口」、「菊正宗 嘉宝蔵 純米大吟醸」はオーナーの、「七賢 風凛美山 純米酒」と「矢作ワイン」は穂坂氏のバックグラウンドを活かして仕入れたもの。リーズナブルな価格で提供しており、固定ファンがついている。山梨からは、季節に応じて白桃やぶどう、柿が届く。ジューシーで風味が良く見た目も美しい日本の果物は、特にタイ人客の間で人気が高い。

信頼できる仲介業者から精度の高い仕入れを実現
一回に築地から届く魚介類の量は15kg~20kg。その大半が仲買業者のおすすめ品だ。穂坂氏は、仲買業者から携帯アプリ(LINE)に届くおすすめ品リストを見て、仕入れる品を決定。自ら魚種や産地を指定して注文するものは一部に過ぎない。「こちらから注文すると仕入れ価格が高くなるからです。お客様から『くじらを食べたい』などとリクエストされることもありますが、それを業者に依頼すれば、料理の値段が上がってしまう。業者さんとは信頼関係ができているので、おすすめされた食材から選び、その魚にあった料理に仕上げるのが腕の見せ所ですね」。まれに、荷をほどいてみると品質が予想以下だったというケースもあるが、その時にはクレームを入れ、是正依頼を出す。逆にクオリティの高い魚が入った場合には「良かった」「お客さんが喜んでくれた」と一報を入れることも忘れない。業者とのこまめなやりとりが精度の高い仕入れを実現している。

新鮮な魚介は日本人、タイ人ともに集客力が高い
新鮮な魚が届くと、穂坂氏は常連客に魚の画像を携帯アプリ(LINE)で送ると同時にSNS(facebook)でも紹介し、来店を募る。店でもスタッフがその日のおすすめの魚や産地を口頭で紹介しているそうだ。客層は日本人が6割、タイ人が4割。タイ人客はじわじわ増加中だ。鮮度の良い日本産食材は在留日本人のみならず、タイ人の集客にも確かな効果を発揮している。「タイのお客様は日本人と違って料理をシェフにおまかせする方が多い。そんなお客様の期待に応えるためにも、業者との信頼関係をさらに深め、今後も季節折々の美味しい魚を提供していきたい」と穂坂氏は抱負を語る。

呑
23/1 Ekamai Soi 12, Sukhumvit 63 Rd., Klongton-Nua, Bangkok
(+66)02-714-3003
www.facebook.com/Don.Sushi.Restaurant.Bangkok