海外における日本産食材サポーター店認定制度

日本産食材サポーター店インタビュー Deigo

「伝統」と「最先端」を融合し、
本物の日本食を届ける老舗レストラン

所在地:メキシコシティ(メキシコ)

受け継がれた「本格的な日本料理を提供する」という想い

メキシコシティ市内の閑静な住宅街デルバジェ地区。この地区の憩いの場であるアルボレダス公園の側にある本格日本食レストラン「Deigo」。1995年に旧日航ホテルの料理人を務めた日本人が開業し、2013年に現オーナーのヨシタケ・ヤナギ氏が事業を引き継いだ。創業当初から「本格的な日本料理を提供する」というコンセプトを掲げ、日本人とメキシコ人の料理人たちが日々運営を行っている。

顧客の9割はメキシコ人で、平日の昼間は主に会社員、夕食時は幅広い年代でにぎわう。休日のメイン客層はメキシコ人のファミリーだ。メキシコ国内の野菜や魚介類の仕入れについても、新鮮な食材の取り扱いに拘る一方で、日本からも多様な日本食産品の仕入及び活用を通じて、コンセプトに沿った「本格的な日本料理」を提供している。

神戸牛や生ワサビを活用する本物志向

ヤナギ氏は、メキシコシティで生まれ育ったものの、日本人の父とメキシコ人の母の間に生まれ、日本へ興味関心を強く抱いてきた。同氏は、一般の日本人と比べても「本物の日本」に対する知的好奇心やこだわりが強い。ヤナギ氏が日本を訪れた際に初めて食べた「神戸牛」の感動は今でも忘れられないという。メキシコへ帰国後、Deigoはメキシコのレストランとして初めて神戸牛の取り扱いを開始した。その時からDeigoは神戸牛に加え、本格的な日本食材の取扱いを開始したそうだ。さらに、生ワサビを日本から輸入し、顧客の目の前でワサビをおろして提供するなどの試みを絶やさない。おろしたての爽やかな香りや上品な辛みは、本物志向の顧客の味覚のみならず、視覚と嗅覚も存分に楽しませている。こうしたこだわりは、ヤナギ氏の妥協を許さない姿勢の表れである。

「今後は黒豚や地鶏などの取扱を検討しています。将来的には鮮魚を輸入できれば良いと考えていますね。また日本産のウイスキーですが、個人的には日本酒よりも商機を感じています。来店されるお客様からの要望も多い反面、メキシコでは未だ取扱可能な日本産ウイスキーの種類は非常に少ないのが現状です」と同氏は語る。

「訪日旅行」の体験をDeigoで提供したい

メキシコシティ空港と成田空港を繋ぐ直行便の就航などを通じ、以前よりもメキシコから日本への渡航が便利になったことに加え、日本食ブームによるメキシコ国内の日本食レストランの増加、ならびに日本のアニメや漫画などのコンテンツが人気であることなどによって「日本への旅行」を夢見る人々は数多く存在する。しかしながら、メキシコから日本へ渡航することは、限られた富裕層以外には金銭的な観点から現実的でないのが現状である。

「様々な理由で日本への旅行が出来ない方々に対して、Deigoの提供するサービスや食事、空間での体験を通じて『日本を旅行している』ような擬似体験を創り出したいんです。そのためには食事のクオリティを高めていくことは勿論、食材や飲料についても日本から取り寄せる必要があると考えています」とヤナギ氏は語る。一方でウニやサバなどはメキシコ産の新鮮な食材を活用するなど、現地調達が可能な食材を有効活用しながら、そこに日本産食材を交えることで、Deigoにしか提供出来ない価値を生み出し続けている。

成功の鍵はデジタルマーケティング

Deigoのインスタグラムをスマートフォンから眺めると、色彩鮮やかかつ解像度の高い写真や、魅力的な動画が数多く散りばめられている。ヤナギ氏は「これからの時代はデジタルマーケティングを活用しないレストランは99%の確率で失敗するのではないかと考えています。これまで新聞やテレビ、雑誌などが有効な発信媒体でしたが、ソーシャルメディアを始めとしたデジタル媒体が、現在では世界中で有効となっています。口コミだけで十分だ、という意見もあるかもしれませんが、私はそのようには考えていません。コンセプトの訴求や顧客の来店喚起において必要不可欠なツールだと考えています」と話す。

Deigoはコロナ禍の最中にも、デジタルマーケティングへの投資を惜しまず行った。数年前と比較して16倍の予算をデジタルマーケティング分野に投じた。これらの投資が実を結び、驚くべきことに、2020年8月は新型コロナ感染拡大前の売り上げを超えた。今も日を追うごとに店舗の認知は進んでいる。「私たちは、資本のある大きな企業とは異なり、投下する予算は限られています。それでも私たちの提供する日本食や日本食産品を、より多くの人々に知ってもらうために、今後もデジタルマーケテイングへの投資を継続して行っていく予定です」とヤナギ氏は語る。

本物の日本食がより認知され、愛される存在となるよう貢献したい

ヤナギ氏は今後、日本食のファストフード業界への参入を検討しているという。新型コロナウイルスの影響が「食」を取り巻くビジネスモデルを大きく変化させた中で、広面積の大型店ではなく、短時間で食事を済ませる日本食、例えばラーメンなどに特化した店舗の多店舗展開に商機を見出しているそうだ。ファストフードに近い領域に進出したとしても、本物志向であるという信念は変えず、高い顧客満足度を維持していきたいと柳氏は話す。

昨今はいわゆる「ローカライズ」された日本食がメキシコ国内では大部分を占めるという。マンゴーやクリームチーズが入った巻き寿司を好み、これらが「本物の日本食」であるというように理解しているメキシコ人は少なくない。「メキシコ人にとって日本への旅行は容易なことではありません。実際の渡航が困難なメキシコ人の方々にとって『日本産食材サポーター店認定制度』が一つの指針となり、本物志向のメキシコ人の方々が安心して日本食を食べることができる制度として、メキシコ国内で更に浸透していくことを願っています。余談ですが、メキシコの政府には『メキシコ食材サポーター店制度』を定め、米国や日本などで普及して欲しいですね。メキシコ料理も日本料理と同じく、長い歴史があり、美味しい食事なのですが、他国では過度なローカライズが見受けられるんです」とヤナギ氏は笑顔を見せながら話してくれた。

Deigo
Calle J. Enrique Pestalozzi 1238, Col del Valle Centro, Benito Juárez, 03100 Ciudad de México, CDMX
55 5605 6317
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