2023年のベトナムスタートアップへの投資、件数、金額ともに減少

(ベトナム)

ハノイ発

2024年05月15日

ベトナム計画投資省傘下機関の国家イノベーションセンター(NIC)と、地場ベンチャーキャピタルのドゥー・ベンチャーズ(Do Ventures)は4月26日、ホーチミン市内で「Vietnam Innovation & Tech Investment Report 2024」を発表した。2023年のベトナムスタートアップへの投資動向などをまとめたもので、今回で5度目の発表となる。同レポートによると、世界のベンチャーキャピタル(VC)投資の落ち込み(前年比で約4割減)と同様に、2023年のベトナムスタートアップへの投資も下落した。同レポートのポイントは次のとおり。

  • 2023年のベトナムスタートアップへの投資は122件(前年比9.0%減)、5億2,900万ドル(前年比16.6%減)。件数、金額とも、過去最高だった2021年をピークに2年連続で減少した(添付資料図参照)。
  • ASEAN主要6カ国(ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン)でみると、投資件数、金額ともに、シンガポール、インドネシアに次ぐ3位だった。前年の順位と比べると、件数は変動なく、金額は1つ順位を上げた。
  • ベトナムスタートアップへの投資金額を分野別にみると、ヘルスケアが1億8,400万ドルと最も多く、金融(1億4,900万ドル)、教育(6,700万ドル)が後に続いた。ヘルスケアと教育に対する投資金額は過去最高となった。一方、2021年に4億6,900万ドルを集めた小売り、4億5,000万ドルを集めた電子決済への投資は大きく減少し、小売りは3,300万ドル、電子決済は実績なしだった。
  • 2023年、ベトナムスタートアップに投資した投資家の総数は99社だった。国別では、シンガポールが最多(22社)で、ベトナム(21社)、米国(16社)がそれに続く。日本は5社だった。
  • ベトナムの2023年の新規株式公開(IPO)件数は3件(デロイト・ベトナムのレポートによると、全て10年以上操業している建材製造や縫製業の企業)。IPOによる資金調達額は700万ドルだった。2020年以降、IPOの件数は減速しており、他のASEAN主要国と比較しても少ない。

レポートでは、ベトナムの厳格な上場基準や従来の財務指標では、スタートアップ企業の適切な評価が困難なことに課題があると分析しており、NICのブー・クオック・フイ所長も、スタートアップ企業が出口戦略を立てやすい環境に向けた法整備の必要性を指摘している。スタートアップがIPOや株式譲渡などによる出口戦略を目指せる投資環境整備は、投資家のベトナムスタートアップへのさらなる投資判断を促す上でも不可欠といえるだろう。

(細川雄貴)

(ベトナム)

ビジネス短信 ff648649af927d2d