国家金融監督管理総局、BYDの自動車保険事業参入を承認

(中国)

上海発

2024年05月14日

中国国家金融監督管理総局は5月6日、電気自動車(EV)大手・比亜迪(BYD)傘下の自動車保険会社のBYD財産保険に対し、安徽省、江西省、山東省(青島市を除く)、河南省、湖南省、広東省、陝西省、深セン市での「機動車交通事故責任強制保険」(注1)の契約条件と保険料率について承認したと発表した。これにより、BYDによる自動車保険事業が本格的に展開される見込みだ。BYDは2023年5月に、インターネット保険会社の易安財産保険の買収により、自動車保険業への参入を進めていた。

中国で、新エネルギー車(NEV)の自動車保険料は、車載電池の発火・火災リスクや、ガソリン車に比べて操作不慣れなどによる事故率の高さなどを背景として、高額に設定されるケースが指摘される。また、自動車保険加入・更新を拒否される事例も起きており、消費者の不満が高まっている(注2)。

対外経済貿易大学の王国軍教授はNEVメーカーの自動車保険事業への参入に関し、従来の保険企業と比較した優位性について、「NEVメーカーは、NEVに関する技術、データ、リスク情報を多く持つため、保険商品の設計と価格設定をより正確に行うことができ、また、より専門的な車両損傷評価やメンテナンスなどの技術を提供することもできる」と指摘した(5月7日「時代週報」)。

中国ではNEV市場の拡大に伴い、NEVを対象とした自動車保険市場の拡大も見込まれる中、これまでにテスラや中国新興NEVメーカーの小鵬汽車(Xpeng)、蔚来汽車(NIO)なども自動車保険事業に参入している。新たなプレーヤーが参入を果たす中で、当該市場の競争激化が予想される。

(注1)「機動車交通事故責任強制保険」は、日本の自動車損害賠償責任保険に相当する自動車保険。

(注2)NEVに対する保険加入拒否が起こった事態に、中国国家金融監督管理総局は1月24日、監督部門と保険会社に対し、NEVに対する保険を拒否または延期してはならないなどとする「新エネルギー自動車保険の引受を適切に行うための通知」発出している(1月25日「新華社」)。

(神野可奈子)

(中国)

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