バイデン米政権、中国の太陽光発電関連製品に関する不公正な貿易慣行への対抗措置発表

(米国、中国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)

ニューヨーク発

2024年05月17日

米国のバイデン政権は5月16日、米国の太陽光発電製造を強化し、中国の不公正な貿易慣行から製造業者と労働者を保護するための新たな措置を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

バイデン政権が発表したファクトシートによると、米国の太陽光発電製造業は2000~2010年代にかけて、中国の非競争的な補助金などによって衰退した。バイデン政権発足以降は、太陽光発電関連製品などの米国内での製造を促すインフレ削減法(IRA)を通じて、同分野への投資は拡大しているが、中国は近年、過剰生産能力をさらに増強し、不当に廉価なモジュールや部品を世界市場に供給し、貿易執行措置を回避して他国のメーカーを廃業に追い込もうとしているとした。こうした状況を踏まえ、バイデン政権は、新たに次の措置をとると発表した。

〇緊急輸入制限(セーフガード)措置の両面太陽光パネルへの適用除外終了:米国では現在、1974年通商法第201条に基づき、太陽光発電製品に対してセーフガード措置が取られている。だが、米国内での供給が十分でないことなどを理由に、両面太陽光パネルは適用除外としていた(2022年2月7日記事参照)。両面太陽光パネルの中国からの輸入が急増したことから、この適用除外を今後撤廃する。ただし、既存の契約に基づいて除外措置撤廃後90日以内に納入される場合は、引き続き適用対象外とする。

〇東南アジアからの無税輸入措置の終了と備蓄の取り締まり:2022年6月に発表した大統領布告により、現在、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムの4カ国からの太陽光発電関連製品は米国に無税で輸入できる(2022年6月7日記事参照、注)。この関税免除措置の「ソーラーブリッジ」を予定どおり2024年6月6日に終了する。同日以降、アンチダンピング関税(AD)と相殺関税(CVD)の迂回を目的とした中国からの輸入と判定されているこれら国からの輸入(2023年8月24日記事参照)は、ADなどの対象となる。なお、無税で輸入された太陽光パネルは、180日以内の設置が義務付けられている。この規定の執行強化のため、税関・国境警備局(CBP)は今後、輸入業者に対し証明書の提出を求める。

〇輸入急増と過剰供給の監視:中国企業がADやCVDの回避を目的に、東南アジアで生産能力を強化している。エネルギー省と商務省は、米国市場が飽和しないよう輸入を監視し、不公正な慣行に対する措置を講じるため、利用可能なあらゆる手段を検討する。

〇国内調達要件に関する追加ガイダンスの提供:IRAは、クリーンエネルギープロジェクトに対して、鉄鋼製品などの米国内調達要件を満たした場合に利用できる税額控除を定めている。当該制度がより多く利用されるよう、財務省がさらなるガイダンスを発表する。

〇陸上での太陽電池ウエハーとセル製造の技術開発支援:エネルギー省は、太陽光発電のサプライチェーン全体に新技術を普及させるため、インフラ投資雇用法(IIJA)を基に、7,000万ドル以上を研究開発費に充てることを発表する。

〇セーフガードに基づく太陽光発電セルの関税率枠の管理:現在、セーフガードに基づく太陽光発電セルの関税割当量は5ギガワット(GW)だが、輸入量が上限に近づいた場合は7.5GWへ引き上げるよう努める。

(注)「ソーラーブリッジ」に対しては、議会より同措置を撤廃する両院共同決議が提出されていた。これに対し、バイデン大統領は、米国内の製造能力が増強されるには2年間の猶予が必要だとして、拒否権を発動していた(2023年5月17日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国、中国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)

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