バイデン米政権、ポーラーセミコンダクターに1.2億ドルの助成発表、CHIPSプラス法で8社目

(米国、日本)

ニューヨーク発

2024年05月14日

米国商務省は5月13日、米国の半導体ファウンドリー(受託製造)のポーラーセミコンダクターに対して、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づいて最大1億2,000万ドルを助成することで、同社と予備的覚書(PMT)を締結したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

2022年8月に成立したCHIPSプラス法は、米国内半導体産業の振興を目的に、半導体製造施設の建設や拡張などを行う企業に対して、390億ドルの助成と25%の投資税額控除を行うほか、研究開発を行う企業に110億ドルの助成などを規定している。CHIPSプラス法に基づく助成金拠出の発表は今回で8社目で(注1)、ポーラーセミコンダクターのミネソタ州ミネアポリス近郊ブルーミントンにある半導体製造施設の拡張・現代化プロジェクトを助成対象としている。

ポーラーセミコンダクターの同日の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、同社は同プロジェクトに対して今後2年間で約5億2,500万ドルを投資予定で、200ミリメートルウエハーの生産能力を月産2万枚から4万枚へ倍増する見込み。同社の顧客は自動車、航空宇宙・防衛、オプトエレクトロニクス、微小電子機械システム(MEMS)、医療機器などを扱っているという。また、今回のプロジェクトで160人以上の建設・製造関連雇用の創出を見込んでいる。なお、同社は商務省の助成に加えて、ミネソタ州から7,500万ドルの助成を受けるほか(注2)、財務省にCHIPSプラス法に基づく税額控除を申請予定だとしている。

また、ポーラーセミコンダクターは併せて、米国のプライベートエクイティ(未公開株式)投資会社のニオブララ・キャピタルとプリズム・キャピタルが1億7,500万ドルで同社株式の過半数を取得すると発表している(注3)。商務省のジーナ・レモンド長官は「今回発表したポーラーへの投資は民間の資本を呼び込み、ポーラーが米国を拠点とする独立したファウンドリーになるための助けになるだろう」「ポーラーは顧客基盤を拡大し、米国の中心地で製造される重要な半導体の安定した国内供給を実現できるだろう」と述べている。また、ポーラーセミコンダクターのスリヤ・アヤール社長兼最高執行責任者(COO)は「ミネソタ州の半導体製造への歴史的な投資を発表できることを大変うれしく思う。製造施設を拡張することで生産能力を増強するとともに、革新的技術を導入し、新たな顧客や市場に対応できるようになる」と述べている。

(注1)1社目はBAEシステムズ(2023年12月13日記事参照)、2社目はマイクロチップ・テクノロジー(2024年1月5日記事参照)、3社目はグローバルファウンドリーズ(2024年2月21日記事参照)、4社目はインテル(2024年3月22日記事参照)、5社目は台湾積体電路製造(TSMC、2024年4月9日記事参照)、6社目はサムスン電子(2024年4月16日記事参照)、7社目はマイクロン(2024年4月26日記事参照)。商務省は2024年中にさらなるPMT締結の発表が予定されているとしている。半導体製造施設などを対象とする申請は2024年5~6月に締め切られる(2024年4月26日記事参照)。

(注2)ミネソタ州は、CHIPSプラス法に基づいて助成金が拠出されるプロジェクトに対して、プロジェクト総費用の15%を上限に、最大7,500万ドルを助成するなどの投資誘致インセンティブ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを設けている。

(注3)現在は日本のサンケン電気が70%、同社の米国子会社アレグロマイクロシステムズ(AMI)が30%を所有している。ポーラーセミコンダクターによると、サンケン電気とAMIは引き続き少数株主として出資関係を維持するとしている。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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