タイ・バングラデシュ首脳会談、FTA交渉開始に向けた意向表明書に署名

(タイ、バングラデシュ)

バンコク発

2024年05月14日

タイのセター・タビシン首相は4月26日、バングラデシュのシェイク・ハシナ首相と首脳会談を行い、タイ・バングラデシュ自由貿易協定(FTA)交渉開始に向けた意向表明書(LOI)を含む5つの文書の署名に立ち会った。ハシナ首相は4月24日から29日にかけてタイを訪問していた。タイ商務省はそれに先立つ4月23日にLOI草案を閣議に提案し、承認を得ていた。

タイ政府の発表によると、プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼商務相は、バングラデシュ商業省からFTA締結を含む2国間協力に関する書簡を受領していた。これを受け、両国が2024年内にタイ・バングラデシュFTA交渉を開始する意向を表明するLOIを起草したという。LOIに基づき、両国で実現可能性調査を実施する。その上で、合同貿易委員会(JTC)を通じ、FTA交渉に向けたプロセスを進めるため緊密に協力する。

首脳会談では、FTA交渉開始に向けたLOI(タイ商務省とバングラデシュ商業省間)のほか、(1)エネルギー協力に関する覚書(タイ・エネルギー省とバングラデシュ電力・ エネルギー・鉱物資源省間)、(2)観光協力に関する覚書(タイ観光・スポーツ省とバングラデシュ民間航空・観光省間)、(3)税関業務に関する協力と相互支援覚書(両国の関税局間)、(4)両国の政府関係者の公用旅券保持者に対する相互ビザ免除に関する合意が署名された。

両首脳は2国間貿易額が12億ドルに拡大した(2023年時点)ことを歓迎し、今後の経済協力の拡大、貿易・投資の増加、強じんなサプライチェーン構築に向け、努力することを表明した。また、タイからバングラデシュへの投資を促進するため、セター首相はハシナ首相に対して、ビジネス環境整備や投資促進制度の導入を推奨した。

注力すべき産業分野としては、両国とも農業国であることを踏まえて、特にハラールや食品加工分野での協力強化を目指す。両国の食糧安全保障を担保するため、資源の有効活用に向けて連携を深める。また、両国はインフラと連結性の改善も重視しており、ベンガル湾(アンダマン海)の港湾であるタイのラノーン港(2024年3月5日記事参照)とバングラデシュのチョットグラム港を結ぶ直行航路の構想も示した。実現した場合、両国の海上輸送が強化され、貿易活性化につながることが期待される。

なお、タイは2024年にベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ(BIMSTEC、注)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます首脳会議を主催する。バングラデシュは、タイに続くBIMSTECの次期議長国に就任することが予定されている。BIMSTECは、地域の経済成長、協力の推進力としての役割を果たすことが期待されている。

ジェトロは、在タイ日系企業のバングラデシュに対する関心の高まりを受けて、6月6日に「バングラデシュ・ビジネスセミナー」をバンコクで実施する予定だ。

(注)1997年に設立され、東南ベンガル湾周辺の南アジアと東南アジア7カ国(バングラデシュ、インド、ミャンマー、スリランカ、タイ、ネパール、ブータン)による2つの経済圏をまたいで組織されたサブリージョナルな枠組み。常設事務局はバングラデシュのダッカ。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(タイ、バングラデシュ)

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