第1四半期の実質GDP成長率は前年同期比1.7%、再び成長軌道へ

(ハンガリー)

ブダペスト発

2024年05月10日

ハンガリー中央統計局が4月30日に発表した速報値によると、2024年第1四半期(1~3月)のハンガリーの実質GDP成長率は前年同期比で1.7%(季節調整値)、前期比で0.8%となった(中央統計局プレスリリース430日)。

中央統計局は市場サービス、特に不動産と情報通信が成長に最も貢献したとしている。不動産サービスの伸びは金利の低下に加え、政府の住宅ローンプログラム(CSOK Plusz、注1)や銀行が任意で適用する金利上限の引き下げ(注2)の影響によるものだ。また、主要産業の1つの情報通信技術(ICT)分野では最近、政府の強力な支援の下、多数の大型投資プロジェクトが発表されている。

観光業の急成長ぶりも著しい。中央統計局によると、3月の宿泊者数は前年同月比約25%増、第1四半期も前年同期比で20%近く増加した。レストランやスパ、小売業など、他のセクターの成長にも好影響を与えている。

バルガ・ミハーイ財務相は「中東での戦争や(ハンガリーにとって最も重要な貿易相手国の)ドイツの景気低迷など、不利な外部条件にもかかわらず、経済が成長軌道に戻ることができたのは重要な成果だ」と述べた(4月30日付政府発表)。

現地報道によると、2022~2023年に2桁台になった消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)が2024年になって低下し、実質賃金の上昇が消費を押し上げることで、再び経済成長の原動力となる可能性があるというのが経済アナリストの一致した見方だ(注3)。

投資に関しては、政府は4月11日、2024年に予定されていた6,750億フォリント(約2,700億円、1フォリント=約0.4円)の政府投資の延期を発表した。また、高金利の状況(政策金利は現在7.75%)も経済成長に抑止効果をもたらしている。このため、4月30日に開始された中小企業向けの無利子融資制度など、政府はさまざまな対策を試みている。

また、東部デブレツェンにある中国の車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)とドイツの自動車大手BMWの2つの大規模工場が2025年に稼働すれば、それに伴う輸出の増加が経済成長に寄与すると見込まれる(2018年8月3日記事参照2022年8月18日記事参照)。

政府はハンガリーのGDP成長率について、2024年2.5%、2025年4.1%と予測している。また、5月2日に発表されたOECDの予測でも、高いGDP成長率(2024年2.1%、2025年2.8%)が見込まれている。さらに、欧州委員会(GDP成長率は2024年2.4%、2025年3.6%)やIMF(同2.2%、3.3%)も、ハンガリー経済の回復を予測している。

(注1)2024年1月に開始した住宅ローンの制度で、金利は最大3%。

(注2)政府と銀行協会が合意し、2024年1月1日から新規住宅ローン金利の上限は7.3%、企業の新規事業向け融資の金利の上限は9.9%に引き下げられた。

(注3)中央統計局によると、インフレ率は2024年1~3月の各月に前年同月比4%を下回る中、平均賃金上昇率は2024年1、2月にそれぞれ前年同月比で約14%となっている。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー)

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