緊急特集:中東の政治情勢と各国の見方
記事詳細
反体制デモが拡大(シリア、中東)
2011年3月28日 中東アフリカ課発
シリアでは、非常事態法(1963年発令)によりデモ行為が禁止されているが、同国南部の都市ダラアで3月18日、金曜礼拝後に発生した、政府に対する数千人規模の抗議デモ以降、各地でデモが拡大している。
ダラアでの18日のデモでは、デモ隊と治安当局の衝突により、数名の死者と数百人の負傷者が出ている。また、同日、首都ダマスカスや中西部の都市ホムスなど、ダラア以外の都市でも同様のデモが発生した。中東のテレビ局アル・ジャズィーラによれば、デモ隊は、政治的自由や腐敗の撲滅などを訴えた。また、別の報道によるとデモ隊は非常事態法の解除も求めているとされる。
2月以降シリアでは、フェイスブック上で政府への抗議デモを呼びかける動きがみられ、小規模なデモは各地で発生していた。ただ、ダラアのデモはこれまでに比べ大規模であり、なおかつ多くの死傷者を出したことから、事態の深刻化を示唆している。
18日以降も、ダラアをはじめ、シリア各地で反政府デモが続いている模様。ダラアでは、18日の衝突での犠牲者の葬儀が行われた20日、デモ参加者が1万人規模に達したと報道されている。また、デモ隊の一部は与党バース党の建物や、アサド大統領の親族が所有する電話会社などに放火したとされ、軍や治安部隊は催涙ガスを使用して弾圧、23日には治安部隊が市中心部のモスクに立てこもったデモ隊に対して発砲。
デモの拡大を受けて、大統領は25日、公的部門の従業員給与の引き上げ、減税措置などを含む大統領令を発令したほか、大統領広報担当官が、非常事態法解除の可能性を示唆したが、デモはその後も収束する気配はない。
25日の金曜礼拝後にはダマスカスでもデモが発生、報道によると約1,000人が参加した。デモ隊と治安当局の衝突で、死者も発生しているという。26日も、北西部の都市ラタキアでデモが起きており、デモ隊はバース党の事務所に放火、事態はさらに緊迫している。
シリアは、民族、宗教、宗派が入り混じったモザイク国家で、1963年の権力掌握以来、バース党による一党独裁体制が続いているが、事実上はアサド大統領と、大統領の属するイスラム教少数派のアラウィー派が支配している。一部の部族が、その他多くの部族を治めてきたリビアのカダフィ体制と類似している。
また、ともに歴史的にアラブの強硬派として存在感を示してきた共通点もある。今回のリビアの騒乱でシリアは、カダフィ政権に対し密かに軍事的支援を行ったとされる(2011年3月23日付アラビア語紙アル・クドゥス・アル・アラビー)。さらに、12日のアラブ連盟外相級会合でシリアは、リビアでの飛行禁止区域設定に反対した。
同紙によれば「シリアの体制は、リビアへの密かな支援からもわかるとおり、(中略)リビアと同じモデルを辿るだろう」「現在の体制にとっては、今後数週間が正念場となる」という。
イスラエルに対し、強硬姿勢を貫いているシリアは、中東和平進展において重要な存在である。また、米シンクタンクなどによれば、核開発を進めているとの指摘もあり、中東域内の安定に対する影響力は大きい。同国の今後の情勢から目が離せない。
<参考情報>
(長谷川 梢)

