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今後の中国経済の見通し~セミナー要旨

2008年12月20日ジェトロ上海セミナー
主催:ジェトロ上海センター、重慶日本商工クラブ
講師:ジェトロ上海センター所長 大西康雄

1. はじめに

1.1 「イベント経済」を脱した中国経済

北京オリンピックや上海万博関連投資の対全GDP、全固定資産投資に占める割合は大きくなく、こうしたイベントが経済を押し上げているという見方は間違い。

1.2 中国経済を見る上で現時点でのポイント

  1. 景気循環要因
  2. 構造的問題
  3. 国際経済要因

の3つであり、現状、各種要因が重なり、調整圧力は大きなものがある。

1.3 外資の事業環境は悪化

2. 中国経済の基本認識

2.1 景気循環要因

市場経済化に伴う景気循環要因が今次景気後退の端緒。第10・5計画で景気刺激のアクセルを踏み2003~2007年の間5年連続二桁成長した。高度成長の結果労働力不足、投資効率低下、環境劣化が激化したため、2007年より調整期に入っていた。
このほかに経済の構造的問題が存在する。

2.2 構造的問題1 経済運営を制約する「三つの過剰」

従来の改革開放政策の帰結として、流動性の過剰(問題となる現象は、株や不動産の「バブル」)となり経済運営を制約している。流動性過剰は高い貯蓄率のため投資の過剰(輸出志向産業への国内投資・外資流入)になり、さらに貿易黒字の過剰(対外経済摩擦)になって、それがさらなる流動性の過剰をもたらすというジレンマに陥っている。

2.3 構造的問題2 拡大する格差

都市と農村の格差が約3倍、沿海部と内陸部が約2倍という格差は、従来の改革開放政策のもたらした「機会の格差」であるとの認識が広まり、政治問題化している。

2.4 構造的問題3 成長モデル転換の模索

これまでの先に条件のある者が富んで、後発グループを引っ張っていくとする「先富論」のように経済全体のパイを大きくするという成長モデルは、第11次5か年長期計画(2006~2010年)から均衡ある発展を目指すものに転換。胡錦涛政権の本格的な政策主題は「和諧(調和)社会」であり、1人当りのGDPを倍増する、GDP単位当りのエネルギー消費を削減する、地域間等の収入格差拡大を緩和する、といった経済の質にかかわる目標を立てている。

2.5 厳しくなる外資の事業環境(三高時代へ)

こうした状況下、外資の事業環境は厳しさを増している。

  1. 人民元高:人民元対米ドルレートの2005年7月切上後の上昇率は約18%
  2. 原材料費高:政策的低価格から国際市場価格に
  3. 人件費高:1999年前の「GDP成長率」>「人件費の伸び」から1999年以降「GDP成長率」<「人件費の伸び」という経済に

3. 2008年の経済情勢

07年GDP成長率の貢献率は内需である投資が38.8%、消費が39.7%、外需である純輸出21.5%となっている。2008年のGDP成長率は9.0%とダウン、四半期毎でみても、第1四半期10.6%(対前年同期比-1.1ポイント)、第2四半期10.1%(対前年同期比-1.8ポイント)、第3四半期9.0%(対前年同期比-2.5ポイント)、第4四半期6.8%(対前年同期比-4.7ポイント)と時間を追うごとにダウン幅も増加した。
特徴としては、以下のとおり。
内需は底堅い。固定資産投資が25.5%増で、07全年24.8%増を上回る。沿海部より内陸部、製造業よりサービス業伸びる。消費は、社会商品小売額が21.6%増で07年全年16.8%増を上回る。これは06~07年に所得が伸びたため。
外需は減退。第4四半期は急速に悪化。輸出が17.2%増で07全年の25.7%増を下回る。11月、12月はマイナスの伸び。
政府が最も懸念していたインフレ懸念は低下。CPIは全年7.0%だが幅は7月7.3%、8月4.9%、9月4.6%から12月1.2%まで低下した。CPI上昇の大きな原因は食料価格の上昇で、特に豚肉の生産量が病気の発生や四川大地震で低下したことが影響したが、これが、夏以降落ち着いた。
バブル崩壊による逆資産効果の懸念は杞憂に終わった。株価はピーク比55%下落し、すでにバブル部分ほぼ解消した。不動産価格が深せんなどで急落したが、上海などでは依然実需は強い。
現在最も懸念されるのが、雇用の悪化懸念で、深刻化、社会的影響は無視できない。特に若年層の就業状況悪化が深刻。8%以上成長しないと新規就業人口(1000~1200万人)を吸収できないといわれ、社会不安につながる懸念がある。

4. 政策転換とその展望

2007年12月中央経済工作会議の認識では、過熱、インフレ抑制が課題で金融引き締め(窓口規制など行政手段による)を維持し、中立型財政政策を保っていた。しかし、2008年6~7月頃党中央委員が全国視察した結果、7~8月頃を境に、成長率維持を課題とする政策に転換。金融引き締めを緩和し、企業を救済、外需減退分を財政出動(減税、公共投資)で下支えする方向に。

4.1 金融政策緩和

中小企業向け中心に融資枠規制の緩和。金利を2008年9月~12月の間に5回引き下げ。

4.2 中小企業支援、労働集約型産品輸出支援

2008年10月17月の国務院常務会議では、これまで、産業の高度化のために支援しないとされてきた労働集約型のアパレル、繊維製品、機械電気製品の輸出戻し税還付率を引き上げすることに。

4.3 財政出動

11月に向こう2年で4兆元(56兆円)の内需拡大策(次の十項目)を公表した。これは、毎年のGDPの8%に当たる。第4四半期に中央投資1,000億元、09年に震災復興200億元を支出、4,000億元規模の投資を発動。

  1. 賃貸住宅拡充 2,800億元
  2. 農村インフラ建設 3,700億元
  3. 鉄道、道路など建設 1兆8,000億元
  4. 医療衛生,教育 400億元
  5. 環境保護 3,500億元
  6. 「自主創新」支援 1,600億元
  7. 地震災害復興支援 1兆元
  8. 農村都市住民所得増
  9. 増値税改革で企業負担軽減
  10. 金融による経済成長支援を強化

3、7のインフラ投資で2兆8000億元あり、これで企業の在庫を吐き出さる意図。

4.4 2009年の見通し

国家発展改革委朱副主任は国際金融危機で成長率0.8ポイント下降としているが、財政出動によるGDPの押し上げ効果は単年度ベースで1~1.8ポイント程度かとみられ、国際金融危機の影響を打ち消すことになる。財政状況は好調で国債残高GDP比は10年末でも20%台前半で、金利の引き下げ余地もあり。
社会科学院は、2009年1月19日に成長率8.3%前後と発表しているが、今後のポイントは公共投資の実行、効果如何、国際金融危機の収束速度如何。投資効果が現れるのは09年後半で前半年は厳しい状況。加えて政治的には就業確保の観点から8%成長が至上命題であり、成長率8%台を維持しつつ、調整期は3年程度続く可能性が強いと見る。

4.4 中長期見通し

内需主導型成長実現:中国経済は成長過程にあり、改革開放30年で都市部人口が1.7億から5.7億人に増えたとはいえ、都市化率は45%で、中進国平均の60%になるまでには、都市部人口があと4億人も増えると考えられる。ここに至るのは、2020~30年くらいまでかかるため、2030年までは都市化・工業化が進み、消費が拡大するとみられる。この間の発展戦略は以下のようなものとなろう。
貯蓄率が現在47%と高く、日本並みの30%台に引き下げるために、各種格差の改善、セーフティネットの整備が行われる。
輸出主導型の成長を調整するため、付加価値の高い製品をつくる輸出構造の高度化、国際競争力を有する企業育成が行われる。
そのほか、改革・開放の刷新として、経済以外の政治的、社会的問題の解消を目指す。

5. 結語

内需主導型成長の日本市場で成功した日本企業は、以上見てきたような中国の消費市場拡大で大きなチャンスがあると考えられる。

※12月20日の講演では第3四半期までの統計で講演しましたがここでは、2008年通年の統計を用いて修正してあります。また、12月20日以降に発表された新しい数字も一部記載しております。

(参考資料)

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