新シルクロード「欧州~西中国計画」、モスクワ~カザン間高速道路から開始

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年11月19日

ロシアのマクシム・アキモフ副首相は11月1日、主要報道機関「ロシア・セボドニャ」で記者発表を行い、主要インフラの近代化と拡張を目指す包括的国家プロジェクトの輸送部門の案件である「欧州~西中国計画」(注1)を実現すると述べた。

連邦政府は3月28日に開催した副首相級が参加する会合でこの案件を承認し、これまで資金調達の困難さを理由に実施を先送りにしてきたモスクワ~カザン(タタルスタン共和国の首都)間の新高速道路建設計画を段階的に進めることを決定した。2020~2024年に第1区間のモスクワ~ウラジミル間(145.5キロ)と、第二区間であるチュワシ共和国中部のカナシュとタタルスタン共和国のシャリ(カザンの東42キロ)を結ぶ142.8キロの建設を計画している。

2022~2025年には、ウラジミル~アルザマス(ニジェゴロド州南部)間の267キロ、2022年からアルザマス~カナシュ間の239.1キロの建設が行われ、さらにモスクワ~カザン間を結ぶ連邦主幹道路M-7「ボルガ」とM-5「ウラル」、連邦道路A151の修復も実施される。モスクワ~カザン間の連邦道路番号はM-12(注2)となる。

全長794キロ、総工費308億5,592万ルーブル(約525億円、1ルーブル=約1.7円)のモスクワ~カザン新高速道路は、政府が「現代のシルクロード」と計画する「欧州-西中国計画」の主要幹線となり、モスクワ、ニジュニ・ノブゴロド、カザン、サマラとトリヤッチの4大経済地域を結び、モスクワ~カザンの移動時間を2分の1に短縮する見込みだ。

「欧州-西中国計画」の欧州沿区間(約2,400キロ)には4,500万人、全域に総人口40%の6,200万人が居住することから、ロシア政府は、ユーラシア大陸の諸国家の地域間経済交流を活性化させるルートとなるとみている。

ウズベキスタンの首都タシケントで11月2日に開催された上海協力機構の首脳会議で、ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相は「産業、エネルギー部門の開発に輸送インフラ整備は不可欠だ。『欧州-西中国』の一部分を担うモスクワ~カザン新有料高速道路は2020年から建設が開始される」と述べた。

大型インフラ整備計画の実施は、経済成長を高めるロシア政府の重要な政策の一環だが、M-12のルート周辺の住民からは、住環境への影響を懸念して建設に反対する声も上がっている。

(注1)2013年に中国の習近平国家主席が提唱した巨大経済圏構想「一帯一路」の一環をなす中国~カザフスタン~ロシア間の輸送経路。中国~カザフスタン間は既に稼働。

(注2)モスクワと諸外国の首都、連邦管区中心都市を結ぶ連邦自動車道を表す。

(秋塲美恵子)

(ロシア)

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