アルプス縦断貨物輸送、鉄道へのモーダルシフト進行中

(スイス)

ジュネーブ発

2019年09月20日

スイス連邦輸送事務局(FOT)は9月12日、アルプス山脈を縦断する貨物輸送の2019年上半期報告を発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。同報告によれば、トラックでの輸送回数46万5,000回は前年同期比で2.5%減、輸送重量は約580万トンで2.4%減となった。近年、成長が続いていた鉄道も、2018年後半からの欧州経済の失速を反映し、輸送重量が約1,400万トンで3.7%減となった。スイスは周辺各国に比べて鉄道輸送のシェアが非常に高く、輸送手段の約71%を占めた。

スイスは、欧州大陸における2大貨物港のロッテルダムとジェノバを結ぶ陸路南北線の中間に位置することから、アルプス縦断の貨物輸送ニーズが常にあり、特にトラック輸送が増大傾向にあった。これに対し、環境保護の観点から、アルプス縦断の貨物輸送を鉄道にシフトする政策「アルパインイニシアチブ」が1994年の国民投票で決定され、ピークの2000年時点で年間140万回あったトラック輸送を、半分以下の65万回に減らすことが目標とされた。

この一環として、トラックに対する新たな課金制度の導入と、鉄道輸送の大容量化と時間短縮のため、南北鉄道トンネル整備が進められてきており、2007年のレッチュベルクベーストンネルに続き、ミラノとチューリヒを結ぶ世界最長のゴッタルドベーストンネルが2016年に運用開始されたところだ。2020年のチェネリベーストンネルの完工で、鉄道トンネル整備は終了する。

トラック輸送の回数は2010年以降、減少し続けているが、2018年時点でも約94万回と、目標達成への道のりは半ばだ。鉄道による国際貨物輸送を活性化させるためには、鉄道運行の信頼性や利便性向上なども必要とされている。国際貨物輸送を所掌事項とする環境・運輸・エネルギー・通信省は、鉄道貨物輸送料金の割引や、国外トラック・国内鉄道といった複合輸送支援措置の延長など、鉄道利用促進に向けた政策パッケージを検討中だ。

(和田恭)

(スイス)

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