米国の対中追加関税、リスト4の全面発動で輸入額の96.3%が対象に

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年08月16日

米国通商代表部(USTR)が8月13日に発表した、3,000億ドル相当の中国原産の輸入品に対する10%の追加関税、いわゆるリスト4(2019年8月14日記事参照)が全て発動された場合、既に課されているリスト1~3への追加関税も合わせると、2018年の米国の対中輸入額(通関ベース)の96.3%に追加関税が課されることとなる。

ジェトロで試算したところ、2018年の米国の対中輸入額5,397億ドルのうち、リスト1対象品目が306億ドル(輸入額全体の5.7%)、リスト2が146億ドル(2.7%)、リスト3が2,068億ドル(38.3%)、リスト4Aが1,114億ドル(20.6%)、リスト4Bが1,560億ドル(28.9%)を占めることが分かった。他方、現時点でリスト1~3にかかる関税の適用除外が認められている品目の合計輸入額は184億ドル(3.4%)だった(添付資料の図参照)。

今回発表されたリスト4は、9月1日に発動予定のリスト4A(注)と、12月15日に発動予定のリスト4Bに分けられている。2つに分けられた基準は、リスト4Aは輸入全体に占める中国のシェアが75%未満の品目、リスト4Bは75%以上の品目となっている。リスト4Aとリスト4Bの対象品目の構成比を、2018年の輸入額に基づいて計算してみると、リスト4Aでは、機械機器(HTSコード84~91類)が40.3%を占め、その他原料およびその製品(25~27類、41~63類、68~83類)が37.5%と続く(添付資料の表参照)。リスト4Bにおいては、機械機器(84~91類)が最大で65.9%、続いて、雑製品(64~67、92~97類)が21.7%を占める。トランプ大統領自身が言及したように、クリスマスシーズンにおける個人消費への影響を勘案して、発動時期を遅らせたリスト4Bにおいて、輸入額が上位の品目をみると、トップが携帯電話で、続いて、ノートパソコン、車輪付き玩具、ビデオゲーム用機器、パソコン用モニター、履物など、小売業界にとって年末の時期に需要が増える品目が並ぶ(表参照)。

表 リスト4A、リスト4Bにおける輸入額上位10品目(2018年)

全米小売業協会(NRF)は8月13日のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、リスト4Bの発動時期に関して、政権が一部品目の関税発動時期を遅らせたことを評価しつつ、「米国のビジネスにとって先行きが不透明な状態は続き、9月1日に発動予定の追加関税は米国の家庭に高いコストを強いることになり、米国経済を減速させる」と懸念を示した。また、トランプ政権に対して、一国による関税措置ではなく、同盟国と協働して中国の不公正な貿易慣行に対抗する戦略を策定すべきだとし、より包括的な解決策を要求している。

(注)既に輸送中のものも含め、9月1日以降に通関されるものは全て対象となる。

(磯部真一)

(米国、中国)

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