高まる契約順守への意識、裁判所改革が奏功

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年08月19日

外国為替規制の緩和などにより、貿易の間口が広がっているウズベキスタン。企業関係者の法律・契約への意識にも変化がみられる。首都タシケントで日系を含む外資系企業、地場企業からの相談に対応する瓜生・糸賀法律事務所の弁護士、ヤラシェフ・ノディルベック氏に話を聞いた(8月15日)。

(問)最近のウズベキスタンの企業経営者の法律・契約への意識の変化をどのように感じているか。

(答)意識は高まっている。主な理由は3つ。第1は、為替規制の緩和、関税の引き下げ・手続き簡略化など貿易(特に輸入)条件緩和や設立手続き簡素化による法人増を通じた輸出入契約、ビザ免除・条件緩和による人の交流増に伴うサービス契約などの契約締結機会が増加していること。第2は、司法改革の結果、公平な判決が出る確率が高まっていること。第3は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やメディアを通じ、不透明な判決は社会的に批判されるようになっていること。こうした社会的な変革を背景に、経営者は契約書を注意深く読むようになり、契約順守への意識は高まっている。

(問)裁判所・司法制度の機能に対する評価は。

(答)2017年2月から2018年1月にかけて行われた司法制度改革(注)の結果、事業関係の係争を審理する「経済裁判所」の数・役割が大幅に強化された。経済裁判所は訴訟の受理から通常1カ月(最長2カ月)で判決を出すよう義務付けられており、スピード感が確保されている。上訴・上告も可能。裁判官の独立も認められている。今では、社会的・経済的に大規模な組織・利益団体が裁判に不当な圧力をかけることはほぼ見られず、同じカネをかけるのであれば、優秀な弁護士を雇い、法解釈で合法的に勝負する方向に向かっている。行政裁判でも、事業者が国に対して勝訴する事例が増えている。

(問)ウズベキスタンへの輸出(ウズベキスタン側による輸入)契約締結に当たっての注意事項について。

(答)初めての取引なら、100%前払いを要求するのが基本。契約締結後も、相手が銀行から借り入れができず資金調達できない可能性があるため、このようなケースを想定し、相手方にできるだけ事前の対策(現金確保など)を取ってもらう。契約書への義務的な記載事項は、2003年9月30日付閣僚会議決定第416号に記載されているので、係争時に不備を指摘されないよう網羅しておくこと。係争時の第一審裁判所としては、日本側がウズベキスタン国内で何らかの判決の効果を発揮させたい場合は、ウズベキスタンの経済裁判所を指定すべきだ。契約書は、ロシア語かウズベク語での記載でないと輸入許可が下りないので要注意。通常は、日本語もしくは英語が(ロシア語、ウズベク語に)併記される。技術供与(ライセンス)契約は、中小企業の間では現時点では一般的でないが、今後、製造業などの振興が進めば可能性は出てくる。

写真 ヤラシェフ・ノディルベック氏。日本語も堪能。日系法律事務所だが、最近は地元企業のクライアントが増えているという(ジェトロ撮影)

ヤラシェフ・ノディルベック氏。日本語も堪能。日系法律事務所だが、最近は地元企業のクライアントが増えているという(ジェトロ撮影)

(注)2017年2月21日付で裁判制度改革の基本となる大統領令第4966号が出され、2018年1月に民事訴訟法典、経済訴訟法典の改定が行われた。経済裁判所の機能強化は、経済訴訟法典改定と同時に行われている。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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