フォードとVW、AV・EV分野での業務提携を発表

(米国、ドイツ)

ニューヨーク発

2019年07月18日

フォードとフォルクスワーゲン(VW)は7月12日、自動走行車(AV)と電気自動車(EV)分野での業務提携を発表した(フォード・プレスリリース7月12日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。既に両社は2018年6月に中型ピックアップトラックと商業用バン共同開発での業務提携を発表しているが(2018年6月27日記事参照)、投資の対象分野を人工知能(AI)などの新興技術に広げることで、開発に伴うコストの低減と市場の拡大などを狙う。業務提携の管理運営には両社の最高経営責任者(CEO)や上級幹部で構成する合同委員会が当たる。資本提携は行わない。

今回の提携拡大でVWは、フォード傘下でAVの開発を行うアルゴAI(注1)へ10億ドルの投資を行うとともに、ドイツのミュンヘン市にあるVW傘下のオートノマス・インテリジェント・ドライビング(AID)(資産価値16億ドル相当、従業員200人以上)をアルゴAIの欧州初の開発拠点として譲渡する。また、VWは今後3年間でアルゴAIの株式のうちフォード所有の5億ドル分を取得し、フォードと対等な立場で開発に携わる。一方、フォードは2017年2月に発表したアルゴAIへの10億ドルの出資のうちの残り6億ドルを投資する。フォードのジム・ハケットCEOは発表の中で、「両社は独立した立場のライバルであると同時に、今回の提携でアルゴAIへの協力を通して、これまでにない能力を発揮できる」とコメントした。

VWはEV分野でフォードに対し、EV用プラットフォーム「MEB(注2)」を供給する。VWは今後10年間で同社モデル約1,500万台へのMEB搭載を計画するなど、EV戦略の要と位置付ける。MEBの市場拡大のためには、EVの量産を計画するフォードとの提携によるメリットは大きい。

今回の提携拡大の背景に関し、VWのヘルベルト・ディースCEOは「フォード、VWのように経済規模が大きい企業であっても、AV、EVに関しては別の話だ。より速く効率的な開発のためには、企業間のコストシェアが必要だ」と述べている(ブルームバーグ7月12日)。最近ではホンダが2018年10月に、GMとの無人ライドシェアサービス用車両の共同開発に約20億ドルを出資すると発表したほか(2018年10月4日記事参照)、7月にはBMWとダイムラーが自動化レベル4の実用化で長期的なパートナーシップを発表するなど、自動車メーカー間でのグローバルな協働が進んでいる。

(注1)世界有数の工学系大学、カーネギーメロン大学の卒業生などが設立し、ペンシルベニア州ピッツバーグに本社を置く新興企業。2017年からはフォードの出資の下で、商業用に自動化レベル4(ドライバーが自動運転システムの要請に応じない場合でも、自動運転システムが特定の走行モードで全ての運転操作を行う)の実用化に向けたAV技術の開発を行う。

(注2)Modularer E-Antriebs-Baukasten(Modular Electric Drive Construction Kit) の略。

(大原典子)

(米国、ドイツ)

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