欧州議会選挙結果を視野に、主要会派に動き

(EU)

ブリュッセル発

2019年05月24日

欧州議会で最大会派を形成する欧州人民党(EPP)は5月23日、一部加盟国で投票の始まった欧州議会選挙(2019年5月24日記事参照)の結果を踏まえて、5月28日に同党の代表者会合(EPPサミット)をベルギー・ブリュッセルで開催すると発表した。

選挙後のEU機構運営に影を落とすブレグジット

欧州議会・最大会派(中道右派)を形成するEPPの代表者会合には、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長、欧州議会のアントニオ・タヤーニ議長らのEU機構首脳をはじめとして、同党の推す次期欧州委員会委員長候補マンフレート・ベーバー議員(ドイツ選出)が出席するほか、ドイツのアンゲラ・メルケル首相やオーストリアのセバスティアン・クルツ首相(国民党)、アイルランドのレオ・バラッカー首相(統一アイルランド党)、ブルガリアのボイコ・ボリソフ首相(ブルガリアの欧州における発展のための市民・GERB)、クロアチアのアンドレイ・プレンコビッチ首相(クロアチア民主同盟・HDZ)、ルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領(国民自由党・PNL)など、EPP所属の各国の現職首脳も多数招待されている。

他方、欧州議会が4月18日付で発表した選挙結果予測でも、EPPグループは現在の217議席から180議席(37議席減)に落ち込むと見込まれている。これまで、欧州議会内で連立関係にあって、欧州社会党(PES)を主体とする中道左派の社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループも186議席から149議席(37議席減)と党勢の停滞が見込まれる。中道右派・左派の2大政党の苦戦は避けられない見通しだが、4月18日付の選挙結果予測では、2党合計で43.8%の議席比率を確保するとされており、仮に議席比率で3位と予測されている穏健リベラル会派欧州自由民主同盟(ALDE)グループ(68→76議席)が連立に加われば、3党合計議席比率は53.9%に達し、過半数を上回る見通しだ。また、4位と予測されている保守系会派の欧州保守改革(ECR)グループ(76→66議席)が連立に加われば、3党合計議席比率は52.6%となり、これも辛うじて多数派形成の道は開かれる。

ただ、S&Dグループには英国労働党系(予測:20議席)、ALDEグループには英国自由民主党系(6議席)、ECRグループには英国保守党系(12議席)の議席がそれぞれ含まれる見通しで、今後の英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる状況次第では、これらの英国選出議員の議席が消滅するリスクがある。英国選出議員を含まない見通しのEPPグループは、こうした要因や、フランスのマクロン大統領率いる政権与党の共和国前進(2019年4月15日記事参照)の欧州議会内でのポジションにも配慮して、今後の政権運営の在り方を模索する必要があるだろう。

(前田篤穂)

(EU)

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