世界で広がる保護主義的な動きにより、カナダのGDPは0.8%低下と予測

(カナダ、米国、中国)

米州課

2019年05月20日

カナダのモントリオール銀行のシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は5月10日、世界で広がる保護主義的な動きはカナダのGDPを0.8%低下させるとの見解を示す特別リポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。

米中貿易摩擦により米国のGDPが約1%低下することで、カナダのGDPは0.5%低下すると試算。さらに、米国の鉄鋼・アルミニウムへの追加関税やカナダ側の報復措置によって0.3%低下し、合計でGDPは0.8%減速、約15万人の雇用が喪失するとした。なお、米国によるカナダ製の鉄鋼・アルミニウムへの追加関税をめぐっては、フリーランド外相が撤廃を求めて5月15日にワシントンを訪問し、米国通商代表部(USTR)のライトハイザー代表と会談している(2019年5月17日記事参照)。

米国のGDPは1.0%、中国は1.7%低下へ

米国経済への影響について、米国が1974年通商法301条に基づき、計500億ドル相当の品目に課した25%の追加関税と、2,000億ドル相当の品目への10%の追加関税(2018年9月25日記事参照)により、米国のGDPは約0.2%低下すると予測した。さらに同試算によると、5月9日付官報で発表した対中輸入額2,000億ドル相当の品目に対する追加関税の25%への引き上げと(2019年5月13日記事参照)、それに対する中国の報復措置により、0.1%が低下する。また、残りの対中輸入額のほぼ全てに当たる3,000億ドル相当の品目を対象に25%の追加関税が課されれば(2019年5月14日記事参照)、米国のGDPはさらに0.3%低下し、米中貿易摩擦により約0.6%低下する。加えて、鉄鋼製品に対する追加関税や太陽光発電製品と大型家庭用洗濯機へのセーフガード措置によって0.1%低下、自動車(カナダ産とメキシコ産を除く)に対する関税賦課の懸念によって0.3%低下することにより、米国のGDPは合計で1.0%低下し、約150万人の雇用が喪失すると予測した。

他方、中国経済が受ける影響について、グアティエリ氏は、米国よりも打撃が大きいと指摘した。米国の対中輸出額は米国のGDP中の1%未満だが、中国の対米輸出額は中国経済の3%超を構成する。対米輸出額500億ドルに課せられた関税は中国のGDPを0.5%、2,000億ドルに課せられた関税はさらに0.4%引き下げ、計0.9%低下する。もし全ての対米輸出品に25%の追加関税が課されれば、さらに0.8%減少し、中国のGDPは合計1.7%低下すると予測した。

(野口真緒)

(カナダ、米国、中国)

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