ボルソナーロ大統領、トランプ大統領と首脳会談

(ブラジル、米国)

サンパウロ発

2019年03月22日

ブラジルのボルソナーロ大統領は3月17~19日の日程で、1月の就任後初めて訪米した。過去の労働者党(PT)政権時代に途上国外交を優先した結果、米国を含む先進国との関係が相対的に低下したとの見方がある中、ボルソナーロ政権は特に対米関係の再構築を外交上の重要課題に挙げている。

3月19日にトランプ大統領との首脳会談が行われ、共同宣言で、「双方の繁栄、安全保障の向上、民主主義、自由、国家主権の促進に焦点を当て、両国の新たなパートナーシップを構築する」とうたった。経済、通商面で合意した主要項目に挙げられるのは、ブラジルのOECD加盟に関する米国の支持だ。ブラジルは2017年5月にOECDに加盟申請しており、制度適合を含めた手続き中にある。OECD加盟は税制度をはじめビジネス環境改善を促し、投資誘致に取り組む上で重要な一歩とみられている。さらに、米国はブラジルをNATO非加盟の主要同盟国に位置付ける意向を表明した。今後、米国とブラジルは一層の安全保障上の協力関係を築いていくとみられる。また、アマゾン地域の持続的な投資に資する生物多様性保全に向けた投資基金(1億ドル規模)の創設、エネルギー分野における貿易投資を促す目的で、ブラジル・米国エネルギーフォーラムの設置などがうたわれた。

これらの協力を米国から引き出す一方、ブラジルは幾つかの譲歩を行っている。特にOECD加盟支持との引き換えに、WTO規則において、ブラジルは「特別かつ異なる待遇条項」を放棄する方針を示した。先に発表された米国からの旅行者のビザ免除措置に加え、米国産小麦について年間75万トンの関税ゼロ輸入枠の設定、米国産豚肉の輸入解禁に向けた取り組みでも合意している。後者に関しては、ブラジル産牛肉の対米輸出再開に向けた取り組みとセットになる。ビジネス環境面では、AEO(Authorized Economic Operator)に関して相互承認協定の交渉を推進することで合意した。

今回の訪米結果について、専門家の意見は分かれている。ジェトゥリオ・バルガス財団のマチアス・スケプトル准教授は「ここ30年間で米国大統領がブラジルに与えた最大の譲歩だ」とする一方、ブラジルの駐米大使を務めたルーベンス・リクペロ氏は「米国の優先的同盟国になることは、中国との緊張状態やロシアとの対立など、ブラジルにとって関わりのない米国の安全保障上のアジェンダを買うことになる」とコメントしている(「ジョルナル・ド・ブラジル」紙3月20日)。

(二宮康史)

(ブラジル、米国)

ビジネス短信 bc4166b7f2a6cd74