ホンダ、2021年中に英国工場などでの生産終了を発表

(英国)

ロンドン発

2019年02月20日

ホンダは2月19日、2021年中に英国のスウィンドン工場とトルコの工場での生産を終了すると発表した。自動車業界の電気自動車(EV)へのシフトの中、欧州でのEVの生産は競争力などの観点で難しいためとしている。

ホンダは、1989年にイングランド南部スウィンドンに工場を建設し、従業員3,500人で「シビック ハッチバック」1車種を年間約16万台生産して世界市場に供給している。今回の決定は、グローバルにおける生産配置と生産能力の適正化の検討の結果、次期シビックの生産を北米などの他地域に移管するもので、「ブレグジット(英国のEU離脱)とは関係ない」としている。スウィンドン工場では、生産したシビックの55%を北米へ、10%をEU以外の国へ輸出している。欧州での生産終了後は、日本や中国から欧州に輸入する見込みで、2月1日に発効した日EU経済連携協定(EPA)により、日本からのEUへの輸入分は競争力が高まる可能性があるとした。同社は2月19日から労使間の協議を開始し、従業員への対応を決定するとしているため、現時点での雇用への影響は不明だ。

英国では、同社の発表前から、スウィンドン工場の閉鎖が大きく報道されている。「フィナンシャル・タイムズ」紙(2月19日)は1面で、3,500人の雇用が危機にあり、ブレグジットの不透明性が企業の重荷になっていると報じた。グレッグ・クラーク・ビジネス・エネルギー産業戦略相は同日、「今回の決定は、世界市場における前例のない変化に基づく商業上の決定。これはスウィンドンと英国にとって壊滅的な決断だ」との声明を出し、雇用を守るためのタスクフォースを招集するとした。また、同氏は「今朝のホンダのような決定は、(ブレグジットにより企業が)どれほどの危機に瀕しているかはっきり示している」と述べた。他方、離脱強硬派であるスティーブ・ベイカー議員はツイッターに、「ホンダの欧州マネジャーは、これはブレグジットの関連した問題でないと言っている」と投稿し、ブレグジットが関係していないことを強調した。

英国で生産する日系メーカーでは、2月3日に日産がスポーツ用多目的車(SUV)「エクストレイル」次期モデルの英国での生産計画撤回を発表した。この決定とブレグジットの関係については、将来の不透明性は事業計画の策定の一助にならないとしている。英国自動車製造販売者協会(SMMT)によると、国内の乗用車生産台数は2年連続で減少し、2018年は前年比9.1%減だった(2019年2月12日記事参照)。特に、ディーゼル車が29.6%減と大きく落ち込み、一方でEVは20.9%増とEVシフトが進んでいることから、自動車業界は事業環境変化への対応を迫られている。

(鵜澤聡)

(英国)

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