ブレグジットの行方を大きく左右する修正案

(英国、EU)

ロンドン発

2019年01月22日

英国のEU離脱(ブレグジット)に関するテレーザ・メイ首相の新方針発表を受け、与党・保守党のEU離脱強硬派ボリス・ジョンソン元外相や、民主統一党(DUP)のナイジェル・ドッズ副党首は議会で新方針を歓迎しつつ、離脱協定案そのものに変更を加える交渉をする考えがあるのか、メイ首相に重ねて質問。首相は、多数の選択肢の中から議会の支持を得られるものを探るとし、明言は避けた。EUは一貫して再交渉に否定的で、英国議会での否決を受けても、再交渉は英国の妥協が前提との考え(2019年1月17日記事参照)で、英国政府は苦しい立場のままだ。

他方、英国内の親EU派からは早くも複数の修正案が提出されている。当地メディアによると、労働党執行部の修正案では、合意なき離脱(ノー・ディール)を回避するために議会に十分な時間を与え、代替案として恒久的な関税同盟とEU単一市場との強固な関係、または2度目の国民投票実施などを挙げている。また、同党のイベット・クーパー元雇用・年金担当相や、関税同盟・単一市場への残留を伴う「ノルウェー・プラス型」を提唱する与党・保守党のニック・ボールズ議員ら超党派の親EU議員は、離脱延期に道を開く法改正について議会で審議することを求める修正案を提出。改正案は、2月26日までに合意が議会を通過しなければ、離脱日を2019年末まで延期する動議の提出を首相に義務付けるというもの。下院ブレグジット委員会のヒラリー・ベン委員長(労働党)は、今後の方向を定めるために議会が複数のシナリオについて投票を行うとする修正案を提出している。同委員長はそのシナリオとして、(1)現行の政府のブレグジット合意と基本的に同じ合意(3月29日に離脱し、移行期間を伴う)、(2)合意なき離脱(移行期間を伴わず3月29日に離脱)、(3)EUと再交渉〔この場合、離脱協定案の変更、自由貿易協定(FTA)を土台とする「カナダ型」の合意、欧州自由貿易連合(EFTA)を通して欧州経済領域(EEA)に参加するとともに関税同盟を保持、の3つが交渉のメイン・シナリオ〕、(4)2度目の国民投票によりブレグジット合意の在り方またはEU残留の希望の有無を国民に問う、という選択肢を提示している。

EU離脱強硬派は、親EU派が団結してEU残留の道を開く2度目の国民投票に流れることを恐れ、これら修正案の結果次第では、強硬派が次善の策としてメイ首相の合意支持に回る可能性もあり、なお流動的だ。新方針の審議と採決は1月29日に行われる。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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