国境の壁建設めぐる政府機関の一部閉鎖、過去最長に

(米国)

ニューヨーク発

2019年01月16日

2018年12月22日から続く米国連邦政府機関の一部閉鎖は、1月15日で25日目に入った。これまでの連邦政府機関閉鎖の最長はクリントン政権時の21日間で、今回は最長期間を更新し続けている。メキシコとの国境の壁建設予算をめぐってトランプ大統領と民主党が対立を続けており、歳出法案のうち農務、商務・司法・科学、国土安全保障、国務・外交、運輸・住宅都市開発など7つに関して成立のめどが立っていない。1月9日にトランプ大統領と民主党のナンシー・ペロシ下院議長、チャック・シューマー上院少数党院内総務が国境の壁予算問題で3度目の会談を行ったが不調に終わり、トランプ大統領は会談を「時間の無駄だった」と評するなど、両者の対立姿勢は激化している。

民主党が多数を占める下院では、国境の壁建設費用を含む国土安全保障省関連予算以外の省庁予算を別途審議し、1月9日に財務省関連予算を、1月10日に運輸省、農務省ならびに住宅都市開発省関連予算を、1月11日に内務省関連予算を可決したが、いずれの法案も共和党が多数を占める上院での審議が止まっている。両党に歩み寄りの姿勢は見られず、政府機関の一部閉鎖はさらに長期化すると見込まれている。

また、トランプ大統領は国境の壁建設のため、議会承認なしで予算の執行を可能にする国家非常事態を宣言する可能性を示唆していたが、1月14日に「現時点で国家非常事態を宣言することは考えていない」と述べ、議会による解決を促す考えを示した。

歳出法案が成立していない省庁の管轄では既に影響が出始めている(2019年1月4日記事参照)。米通商代表部(USTR)は1月14日、緊急対応計画を実施しているが、対象外の職員が通商交渉や執行業務を継続していくと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。例外的に、通商交渉および執行に関わる業務については引き続き実施される。空港などの公共交通機関の保安検査を所管する運輸保安庁では、職員が無給で働く状態が続いており、同庁職員の欠勤率が増加し、サービスの質が低下するなどの悪影響が出始めている。ヒューストン国際空港では職員不足のため一部ターミナルの保安検査場が閉鎖され、アトランタ国際空港では保安検査に通常よりも時間がかかるなどの影響が出ている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版1月13日)。

(須貝智也)

(米国)

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