韓国政府、TPP11加入を検討するも情勢を注視

(韓国)

ソウル発

2018年12月26日

環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)が12月30日の発効を控える中、韓国政府は加入を検討しているものの、2018年内に出すとした結論をいまだ出していない(12月26日時点)。TPP11に対する韓国政府のこれまでの動きは、次のとおり。

韓国・産業通商資源部は3月8日、「韓国はTPP11の署名国11カ国のうち、日本とメキシコを除く9カ国と既に自由貿易協定(FTA)を締結しており、TPP11が発効しても、韓国の対外経済に及ぼす否定的な影響は限定的」とした上で、「国益を最大化する方向で、年内にTPP11加入について結論を出す」と発表した。続いて4月5日、「新通商戦略」において、TPP11の加入について上半期中に結論を出すと発表した。一方、韓国・外交部の康京和(カン・ギョンファ)長官は4月9日、ソウルの梨花(イファ)女子大学で行った「朝鮮半島情勢とグローバル外交」をテーマとした特別講演で、「個人的にはTPP11に加入すべきと考える」とし、「TPP11発効後の影響を評価した上で、TPP11の加入について決定する」と述べた。

その後、8月15日付の「ファイナンシャルニュース」は、米国のTPP11再加入、台湾・英国のTPP11加入の行方、米中貿易紛争、米国のイラン・トルコ経済制裁など、対外情勢に不確定な要素があるため、TPP11加入についての結論を上半期ではなく、2018年内に結論を出す予定となったと報じた。

金東兗(キム・ドンヨン)元経済副総理兼企画財政部長官は、10月23日に行われた「対外経済長官会議」において、TPP11など多国間貿易協定に率先して参加し、保護貿易主義の拡散に積極的に対応すると発表した。これについて10月24日付の「東亜日報」は、米国の保護貿易主義が長期化する中で、韓国が自由貿易主義を維持していることを示す必要があったとコメントした。さらに、米中貿易摩擦が激化している中で、韓国企業の競争力を保つためにはTPP11への早期加入が必要との意見と、TPP11への加入により対日貿易赤字が拡大して製造業がダメージを受けることを懸念する意見がある、とコメントした。

なお、韓国貿易協会の通商レポート(10月16日)によると、韓国がTPP11に加入した場合、韓国とFTAを締結していない日本やメキシコに対する市場アクセスの改善が見込まれ、既にFTAを締結しているベトナムとマレーシアについてはFTAで譲許されていない品目で譲許を得られるメリットがあるとしている(表参照)。

表 韓国のTPP11加入時、輸出拡大・関税削減が見込まれる主要品目

〔諸一(ジェ・イル)〕

(韓国)

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