2019年の炭素税引き上げを見送り

(フランス)

パリ発

2018年12月07日

フランソワ・ド・リュジ環境移行・連帯相(国務相)は12月5日、テレビのニュース専門チャンネルBFMTVで、2019年1月に予定されていた炭素税の引き上げを「見送る」という大統領府の決定を発表した。

エドアール・フィリップ首相が引き上げを「6カ月凍結する」方針を前日に発表していたが(2018年12月5日記事参照)、マクロン大統領は、「凍結」では「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」運動による抗議デモを沈静化できないと判断、中止に踏み切った。ド・リュジ環境移行・連帯相は「炭素税だけが地球温暖化対策の解決策ではない」とし、2019年1月から3カ月かけて新たな解決策について、関係者を集めて協議する方針を示した。

ジレ・ジョーヌ側は12月8日にも4回目となる抗議活動を実行する姿勢を崩していない。「大統領府への集結」を呼び掛ける動きもあり、パリを中心に激しい暴力・破壊活動も予想される。パリ市は12月1日の抗議活動による被害総額は300万~400万ユーロに達すると試算。ブリュノ・ル・メール経済・財務相は12月3日、関係業界団体との協議の後に記者会見を開き、「抗議活動が始まってから大手流通業の売上高は15~25%減、小売業は20~40%減、生鮮品を扱う卸で15%減、外食産業では少なくとも20%減、ホテル予約は15~20%減った。製造業への波及もみられ、自動車産業ではルノーやPSAで購入契約の取りやめなどが出ている」と説明、抗議活動は「フランス経済に強い打撃をもたらす」との懸念を示していた。

国民の間では、暴力・破壊行為を批判しつつも、ジレ・ジョーヌの主張に共鳴する向きは多い。BFMTVが12月4~5日に1,002人を対象に実施した世論調査の結果によると、回答者の72%は同運動を「支持する」と答えている。

(山崎あき)

(フランス)

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