「中国市場は貿易多様化に不可欠」、カー国際貿易多様化相が講演

(カナダ)

トロント発

2018年11月15日

ジェームズ・カー国際貿易多様化相は11月5日、トロント地区商工会議所主催のセミナーで講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、「中国市場は、カナダの貿易多様化に不可欠な要素」と語った。

セミナーではまず、カナダで10月25日に実施法が成立した「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」(2018年10月29日記事参照)について、「米国のTPP離脱後は日本のリーダーシップもあり、協定の合意・署名と、順調に実施に向けたプロセスを進め、カナダ国内では、前保守党政権がTPPに積極的だったこともあるが、与野党協力し、驚異的な速さで議会を通過させることができた。12月30日にCPTPPは発効となるが、11カ国で約5億の人口、GDP総額で約14兆カナダ・ドル(約1,204兆円、Cドル、1Cドル=約86円)の市場に、カナダ企業はアプローチしやすくなる」と語った。また、CPTPPで日本とも自由貿易協定(FTA)を締結したことになり、カナダはG7で唯一、他の6カ国と貿易協定を締結している国となり、15億人の市場にアクセスしやすくなったことを強調した。

EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)については、暫定発効(2017年9月21日)から1年が経過し、この間、カナダの輸出が3.8%増、EUからカナダへの輸出が13%近く増加したということで、(カナダからの輸出がさほど伸びていないこともあり)全体として両国間の貿易が拡大した、と述べるにとどめた。

中国との貿易関係構築はUSMCAに妨げられない

中国については、カナダの貿易多様化政策には不可欠な国(市場)と語った。連邦政府によると、2017年のカナダ大西洋岸の州からの中国への輸出は前年比37%増の15億ドルで、過去5年間で水産物の輸出が倍増した。また、中国からの旅行者も増えており、大西洋岸州の大学の留学生の30%は中国からとのことで、カナダと中国との関係はさまざまな分野で深まっている、とした。

講演後の質疑応答にて、北米自由貿易協定(NAFTA)の新協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に非市場経済国条項がある中で、中国との関係をいかに構築していくのかとの質問に対し、カー国際貿易多様化相は「中国は、カナダの貿易多様化戦略に不可欠な要素であり、カナダがより深い貿易関係を追求していくことはUSMCAによって妨げられることはない。(カー国際貿易相も中国との経済財政戦略対話の共同議長として11月9日に訪中したが)カナダにとって2番目に大きな貿易相手国である中国との取引について話をしないで、太平洋地域でのビジネス対話は完了しないだろう。もちろん米国との貿易関係が引き続き重要であることは誤解してはならない」と述べた。

貿易多様化に向け中小企業支援を約束

最後に「CETAやCPTPP加盟国を含む51カ国と14のFTAを締結し、国家戦略として貿易多様化を掲げるカナダとして、特に中小企業がこれらの市場へ輸出を拡大していくことを支援するのが最重要と考えている。中小企業の海外輸出の支援のために、5,000万Cドルの予算を確保して、グローバル連携省のトレードコミッショナー事務所を通じて、国内の中小企業を支援する」と結んだ。

(酒井拓司)

(カナダ)

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