スタートアップ開業数が上半期に大幅減、減少傾向が続く

(イスラエル)

テルアビブ発

2018年11月15日

イスラエル国内でのスタートアップ開業数の減少傾向が鮮明になっている。2018年上半期の開業ペースは大きく鈍化し、半年で200社に満たない水準となった。2015年以降は3年連続で減少傾向が続いており、2018年通年で前年実績を下回る可能性が高い。

イスラエル・ベンチャーキャピタル・リサーチセンター(IVC)によると、2013〜2016年に年間1,000社を超えていたスタートアップ開業数は、2018年上半期には163社にとどまった(表参照)。2014年の1,346社をピークに、2016年まで緩やかに減少し、2017年は748社と大幅減になっていた。

表 スタートアップの開業・廃休業数の推移

2018年上半期の減少の要因について、IVCおよびイノベーション庁に照会したところ「理由は不明」としている。なお、最新データが発表されるタイミングで、開業数、廃業数ともに数値は過去にさかのぼって改定されている。

イスラエルの起業家像をみると、独自の特徴がある。イスラエル育ちのユダヤ人が大半で、非ユダヤ人によるスタートアップはほとんどない。ユダヤ人同士では兵役時の所属部隊のつながり、共通の価値観などが生かされる側面も重要だ。また、国内マーケットのサイズが小さいため、創業時点から海外でのビジネス拡大を強く意識している。

2017年時点で、300以上の多国籍企業がイスラエルに研究開発拠点を持つ。この数年で人材獲得競争がますます激しくなり、エンジニアの給与水準の上昇がみられる。国防軍のインテリジェンスユニットなどで訓練を受けた若い世代が、兵役を終えてすぐに著名な多国籍企業に採用される事例がある。スタートアップ開業数が減少している背景には、起業する代わりに就職するという選択肢が増えていることなど、イスラエル国内の状況がありそうだ。イノベーション庁によると、ハイテク産業に従事する労働者数は全就労人口の8.3%、およそ27万人だ。

(余田知弘)

(イスラエル)

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