欧州委、米国との通商摩擦回避に取り組む姿勢を表明

(EU、米国)

ブリュッセル発

2018年11月14日

欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は11月12日、ベルリンで南ドイツ新聞(SZ)主催の「SZ経済サミット」に登壇、米国との通商摩擦回避に向けて、あらゆるレベルで取り組む姿勢を打ち出した。米国の中間選挙(2018年11月8日記事参照)以降、欧州産業界は「米国との関係修復」や「WTO改革の推進」を求める声を強めている。

産業界はWTO改革での連携や米国との関係改善を求める

SZ経済サミットで基調講演に立ったユンケル委員長は「これまでEUと米国の通商摩擦をめぐる事態の悪化、特に自動車に対する関税賦課などを回避すべく動いてきた」とし、その結果として「現時点で米国のドナルド・トランプ大統領もそれに応えている」と語った。また、「この点を確実にするため、EUとして米国政府(ホワイトハウス)とあらゆるレベルで協議を続ける」「トランプ大統領とはG20首脳会議(アルゼンチン・ブエノスアイレス、11月30日~12月1日開催)で会う予定だ」と述べた。

米国との通商摩擦激化を警戒する欧州産業界からは、11月6日に行われた米国中間選挙以降、EUとしての事態改善に向けた取り組みを求める声が相次いでいる。ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は11月7日付の声明で、「EUと米国は通商政策を含むEU・米国間の重要懸案の解決に注力すべき」としている。同連盟のピエール・ガタズ会長は「欧州企業は過剰供給力の問題(2017年6月14日記事参照)や(不正な)国家補助の問題などに対処し、規制協力などを進めるためのWTO改革に向けた(米国との)共同作業などの具体的な成果を期待している」と語った。また、同会長は「企業には安定した、予見可能な貿易・投資環境が必要。繰り返される(ビジネス環境の)混乱は、EU・米国双方の投資・雇用・イノベーションに良いことではない」と指摘した。

欧州商工会議所連合(ユーロチェンバース)も11月9日付の声明で、米国との2国間関係の修復やWTO改革、(EU・米国の)通商協定の実現に向けて積極的に取り組むことをEUに求めると発表。「米国の中間選挙の結果、民主党が優位となった米国下院のトランプ政権に対する圧力は強まるだろう。これはEUの通商上、必ずしも朗報とは言いきれないが、EU側は建設的かつ現実的に、互恵関係の精神で臨むべきだ」とするクリストフ・ライトル会長のコメントを紹介した。

(前田篤穂)

(EU、米国)

ビジネス短信 39c89653e8760da1