産業政策提言セミナーをビエンチャンで開催

(ラオス)

ビエンチャン事務所、アジア大洋州課

2015年10月09日

 ジェトロは9月30日、ビエンチャンのラオプラザホテルでラオス産業政策提言に関わるセミナーを開催した。2015年7月にジェトロがトンシン・タンマボン首相の要請に基づき産業政策の提言をしたところ、首相からラオスで政府関係者に向けたセミナーを開催し、提言内容について議論してほしいと要望されたことから、セミナーの開催に至った。

<首相の要望で政府関係者向けに開催>

 ラオスは近年、7%を超える経済成長を続けており、今後もさらなる経済発展が期待されている。経済成長を電源開発や鉱業、林業などが牽引しているが、ビジネス環境は高額な物流費、閉鎖的な市場、ガバナンスの未徹底など日系企業にとって十分なものとはいえず、進出の妨げとなっている。

 

 ジェトロは、トンシン首相から「資本(サービス)の自由化や中小企業支援に関しジェトロから提言してもらいたい」との要請に基づき、トンシン相に対する産業政策提言(2015年7月3日)を行った。その際、首相から「ラオス政府関係者に向けてセミナーを開催し、ジェトロとラオス政府関係者は提言内容が政策立案に反映できるよう議論してほしい」との要望を受けたことから、本セミナーの開催に至った。

 

 ラオス産業政策提言セミナーは930日にビエンチャンで開催され、参加者はラオス計画投資省のブンタビー・シースパントーン副大臣をはじめ関係省庁を含めた計80人だった。

 

<ラオスの5ヵ年開発計画に反映できるよう議論>

 ブンタビー副大臣は、ラオスの経済発展には中小企業の育成や十分な労働力の確保が不可欠であり、高額な物流費や労働者の質の向上などの課題に対して、ジェトロの産業政策の提言内容をラオスの5ヵ年開発計画にどのように反映するか、本セミナーで議論したい、と述べた。

 セミナーは2部構成で、「ビジネス環境改善に関する提言」と「産業立地政策に関する提言」に分けて進められた。

 

○ビジネス環境改善に関する提言

・隣接国との良好な連結性に向けて、隣接国との物流コスト(費用と時間)の低減と手続きの円滑化が必要なこと

・ビジネス環境の競争力強化に向けて、バリューチェーンの強化やサービス産業の市場開放を推進する必要があること

・ガバナンスの確立に向けて、法律・制度と運用の乖離の縮小が必要で、法・制度の新規導入および変更時には公報での事前周知を徹底し、行政官個々の法・制度の解釈の差をなくすよう人材を育成すること

・ラオスの有望ビジネスとして、農業・食品加工業では有機農業技術を活用したコーヒーなどラオスブランドの構築や自然景観を生かしたエコツアーを推進すること

 

○産業立地政策に関する提言

・サービスの自由化について、上海の自由貿易試験区の事例を踏まえ、ラオスでも卸売り・小売りなどサービス業自由化が経済成長を促すこと

・直接投資における投資手続きの改善について、手続きの煩雑さなどからラオスの直接投資の障壁は大きく、投資手続きの簡素化が日系企業進出の後押しをすること

・集積効果を生かした産業立地政策について、ラオスには労働力などの生産要素の集積が重要なこと

・カイゼン・5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の推進について、過大な投資を必要としないカイゼン・5S運動は品質管理の水準を高めるとともに農村出身の労働者の職務規律強化に役立つこと

 

 セミナー参加者のラオス政府関係機関職員からは、農村部から都市部へ労働者が流入した場合に必要な政策やカイゼン・5S活動をどのようにラオスへ適用すればよいのか、などの質問が多数あり、予定時間を大幅に超えてセミナーは終了した。

 

 このセミナーを多数の現地新聞が報じており、首都主要紙「ビエンチャン・マイ」は、サービス分野の自由化はGDPを押し上げることから、ラオス政府内での迅速な協議調整が必要、と報じている。

堀間洋平、山田健一郎

(ラオス)

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