外貨建て借り入れの利子払い、軽減税率を2年間延長

(インド)

ムンバイ事務所

2015年09月04日

 財務省は、外貨建て借り入れの利子支払いに対する時限的な軽減税率を、2017年6月30日まで2年間延長した。対外商業借り入れ(ECB)の利用条件緩和策の一環だ。

<日系企業にプラスとの見方>

 財務省は、201271日から導入していた外貨建て借り入れの利子支払いに対する軽減源泉徴収率の時限的適用期間(2012年9月28日記事参照)2年間延長し、新たな適用期限を2017630日までとした。当地の邦銀関係者は「軽減税率の適用期間の延長は日系企業にとってプラスに働くことは間違いない」と口をそろえる。一方で、邦銀A行関係者は「インド準備銀行(RBI)の昨今の利下げにより調達金利も低下傾向にあり、現地通貨での借り入れも選びやすくなっている」とした上で、「この適用延長による効果は短期的には出づらいだろう」との見通しを示した。

 

 インドにおける資金調達の手段としては、増資や銀行借り入れ、親子ローン、社債発行などがあるが、このうち日本本社からの親子ローンやインド国外の金融機関から外貨建て借り入れを行う場合にはECB規制が適用され、資金の使途などに制限が課せられる。

 

 一方、RBIは企業の資金調達を支援するため、これまで認められていなかった運転資金へのECB利用を政府認可ルートで認めたり、株主からの直接の借り入れなどの条件を満たせばECBとして自動承認ルートで認めたりするなど、ECBの利用条件緩和に取り組んできた(2013年9月18日記事、2014年6月13日記事参照)。こうした流れを、邦銀B行関係者は「親会社が絡む資金調達の方法として、増資と比べてECBを採用するケースも増えてきた」と評価する。一方で、邦銀A行関係者は「ECBの規制緩和は日系企業の利用促進に貢献しているが、(1ECBの借入人資格、(2)資金の使途、(3)最低借入期間の3つの条件をクリアする必要があり、これらを勘案すると他の資金調達手段を選択するケースが多いのも事実」と指摘する。

 

 ところで、ECB額をみると足元の動きは鈍いといえる(図参照)。その理由については複数の邦銀関係者は「実質的に大型ECB案件のほとんどは、これまでからインドの地場企業によるもので、彼らの設備投資に対する資金ニーズが依然として弱いことが影響している」と分析する。

若林康平、朝倉啓介

(インド)

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