南ア副大統領、日本企業の投資誘致に意欲-東京で「南アフリカ・ビジネスフォーラム」開催-

(南アフリカ共和国、日本)

中東アフリカ課

2015年09月03日

 南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ副大統領らの来日機会を捉え、ジェトロは8月25日、東京で「南アフリカ・ビジネスフォーラム」を開催した。駐日南ア大使館との共催で、会場には両国政府や企業の関係者約270人が参加し、同国のビジネス課題改善に向けた取り組みなどに耳を傾けた。

<電力問題に一定の進展、製造業の強化が課題>

 基調講演を行ったラマポーザ副大統領は、日本政府やジェトロによる長年の両国関係の構築や日本企業の進出支援に謝辞を述べるとともに、南アのみならずアフリカ大陸全体に日本企業の投資が広がっていることを喜ばしく思うと語った。また、日本企業の投資が多数の現地雇用を生んでいることに感謝し、例えばトヨタ南アフリカによる長年の事業継続と独自のサプライヤー開発は大きな貢献をしていると述べた。日系金融機関は大型インフラ案件への投資を目指す顧客の支援に関心を抱いているとしつつ、さらなる日本からの投資誘致に意欲を示した。

 

 副大統領は一方で南アのビジネス環境にも触れ、発電所の老朽化による電力不足が深刻としつつも、前日(824日)に、新設のメデュピ発電所(石炭火力発電所)で800メガワット(MW)の発電を開始した知らせを受けたとして、将来的には(新設の2発電所で)合計9,600MWの発電が可能になると述べ、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入も進めてエネルギー源の多様化を図ると強調した。さらに、経済成長を促すには製造業の強化が喫緊の課題だとして、鉱物資源や海洋資源をより完成品に近いかたちで輸出することを目指し、そのための日本からの資本・科学技術の受け入れや日本政府によるアフリカ人材育成のためのプログラムなどに期待すると述べた。そして、日本企業が進出・投資する際は黒人ビジネス界との連携を検討してほしい、と締めくくった。

<日本企業はビジネス環境の改善を訴え>

 副大統領の発案で急きょ予定を変更して質疑応答の機会が設けられ、参加者から自由貿易協定(FTA)の進捗などについての質問が出たほか、ビジネスコストの高さやライセンス・証明書などの取得手続きなどビジネス環境の改善を訴える声が聞かれた。質問に対して副大統領や大臣らからは、FTAは締結に向けて世界26ヵ国と協議中との回答があった。高いビジネスコストについては政府も認識しており、許認可、電力、港湾施設利用などにかかわるコストを引き下げたい、ライセンス・証明書の取得などにかかる時間の短縮については一括して取り扱う窓口を設置し対応していきたい、などと述べた。

 

<副大統領のビジネス手腕に期待>

 伊藤伸彰・経済産業省大臣官房審議官(通商戦略担当)が、アフリカでの日本政府の取り組みとして、20155月に山際大志郎経済産業副大臣が南アを訪問した際に、現地進出日系企業との対話の場として「アフリカビジネス戦略現地会議」を初めて開催したことに触れたほか、ビジネス界で実績のある副大統領の手腕に期待すると語った。また、ムズワンディレ・マシナ貿易産業副大臣は、製造部門の強化、農産品加工、企業間の戦略的パートナーシップを促進すべく、官民一体で取り組むとして、その際には日本の経験を生かしたいと述べた。

 

 ジェトロの宮本聡副理事長は関係強化に向けたジェトロの取り組みとして、関係機関との間での覚書締結(20099月に貿易産業省、20136月に南部アフリカ開発銀行)や、20149月にアフリカ7ヵ国の投資誘致機関を招いて開催した「アフリ投資誘致機関フォーラム(AIPF」に言及したほか、稲葉公彦ジェトロ・ヨハネスブルク事務所長は、9月に現地で開催予定の日本企業の活動・貢献を紹介する「ジャパン・セミナー」などを説明、公的機関として引き続き両国の関係強化を図ることや、日本企業による投資促進への期待を表明した。

堀田萌乃

(南アフリカ共和国、日本)

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