自由地域または保税工場間の取引はGSTが免税に-事務手続きに煩雑さも-

(マレーシア)

クアラルンプール事務所

2015年07月21日

 マレーシア財務省は7月14日、自由地域(FZ)に立地するか保税工場(LMW)に認定された企業と、別のこれら地域・企業との売買取引(FZ/LMW間取引)にかかる物品・サービス税(GST)6%を免除する財務省令を公表した。免税制度は7月15日から適用されている。


<GST免除の対象は7取引>


 マレーシア政府は2015年4月1日にGSTを導入した。この時点では、FZ/LMW間取引は6%のGST課税の対象となっていた。FZとは、主関税地域で課される輸入税、物品税の支払いが免除される区域を意味する。基本的には製品の80%以上の輸出が求められている。LMWとは、条件はFZと同様であり、FZ以外の主関税地域に事業所を設置する輸出品製造者を対象とした輸入税に対する保税措置を指す。

 

 財務省令は表の7取引をGST免除の対象としている。

 例えば、港湾または空港内の自由商業地区(FCZ)にあるFZ企業の場合、港湾または空港外のFZ企業との売買はGSTが課税されない。港湾または空港外にあるFZ企業の場合、他のFZ企業あるいはLMW企業と売買する場合は免税となる。LMW企業の場合、他のLMW企業との売買は免税となる。なお、港湾または空港外のFZ企業やLMW企業が主関税地域と売買を行う場合や、FZあるいはLMW企業が国内に提供する、あるいは国内から取得する取引は従来どおりGSTが課税される。

 

<新たな事務手続きが必要な場合も>


 本制度変更により、企業はGSTを支払う必要がなくなるとともに、還付を受ける手続きの事務作業も不要となり、FZLMWの取引に関する限り、GST導入前に懸念されてきたキャッシュフローの確保といった課題は解消できる。一方で、GST免除取引に関しても、従来どおりタックスインボイスを発行する必要があり、それに伴い、これまでの書式を変更する新たな事務手続きの煩雑さが発生する。

 

 GSTについて、政府は実施後の状況をみて適宜ルールを変更する傾向にあり、今後もこの傾向は続くとみられる。例えば、政府はプリペイド方式の携帯電話サービスへの課税方式について、プリペイドカードの販売時ではなく、2016年から利用時に課税する方式への変更を決めている。こうした変更により、企業は煩雑な手続きを迫られる懸念がある。また、当初から懸念されていたGST還付の遅れも実際にみられるなど、GSTをめぐる運用の不安定さは導入後も払拭(ふっしょく)されていない。

 

(新田浩之)

(マレーシア)

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