食品安全強化法の運用につき公聴会で意見聴取-食品安全強化法の規則施行を見据えた動き(1)-

(米国)

シカゴ事務所

2015年05月25日

 米食品医薬品局(FDA)は4月23~24日、食品安全強化法(FSMA)施行後の運用の在り方について、関係者から広く意見を聴く公聴会をワシントンで開催した。参加者はウェブキャストでの参加だけでも2,600人に上った。今回の公聴会は、FDAが運用の際に必要な業界や検査官向けの手引きとなる内容をどうすべきか、検査の質を維持するための体制の強化をどうするか、外国の食品製造企業に同法を順守させる制度の普及をどうやって図っていくかなど、具体的な運用の在り方を伝え、関係者からの意見を聴いた。公聴会の様子を2回に分けてレポートする。

<最終規則に向けた体制の整備が進む>
 今回の公聴会で、FDAは2015年8月から2016年にかけて段階的にFSMAの最終規則を公表していくと説明した。参加者の関心も、どのように規則を順守するか、検査を充実させていくかという、施行後の運用に移っていた。

 FDAは、規則の施行に向け、内部に横断的な科学的専門機関である「食品安全・応用栄養センター(CFSAN)」「動物用医薬品センター(CVM)」「統制問題事務局(ORA)」、さらに各州の代表者から構成される運営委員会を設置したと発表した。この運営委員会の下部組織として、輸入品関係、危害の未然予防管理関係(ヒト向けおよび動物向け食品)、野菜の生産安全基準関係、意図的な食品不良事故防止関係の4つのタスクフォース(専門委員会)を設けていることも公表した。

 タスクフォースが業界や検査官向けのガイダンスの策定作業、業界や外国の食品製造業者などへの制度周知について専門的な検討を行っているという。FDAは、FSMAの確実な普及に3段階で取り組む。第1段階は最終規則を作る中で、危害の未然予防管理というFSMAの根本となる基準を策定する。第2段階はタスクフォースを使い、業界や企業が規則を把握し順守できる体制の整備を図る。第3段階は運用が適切に行われているかレビューすることだ。今は第1段階から第2段階への過渡期に入っていると説明した。

<規則には柔軟性を持たせ、ガイダンスにFDAの考えを反映させたい>
 FDAは最終規則について、ある程度柔軟性を持たせたものになると述べている。また、これまでにパブリックコメントの内容以上のものは最終規則には出てこない可能性を示唆した。FDAは、規則には柔軟性を持たせた上で、業界や個々の企業に、FDAの考え方を明確に理解させるためのガイダンス(手引書)が必要だと述べている。

 ガイダンスについては、その内容、公表時期ともに不明だ。米大手の食品業界団体である食品製造業者協会(GMA)からも「いつまでにどういう種類のガイダンスを出そうとしているのかを示してほしい。これまで規則の策定に向けてFDAとは一緒に協力してやってきた。このガイダンスの策定についても一緒に取り組みたい」との意見が出ており、ガイダンスの策定作業はまだ業界団体との調整段階に入っていない可能性もある。

 公聴会を通じて「商品ごとに特化したガイダンスを出してほしい」という意見も散見され、特に食品添加物の製造会社からは「少なくとも加工食品に特化したガイダンスは出してほしい」との声が聞かれた。また、GMAは「規則と同様、このガイダンスにも企業に裁量の余地があるように柔軟性を持たせてほしい」と発言した。そのほかには「HACCP(ハサップ、注)のひな型となるようなものをガイダンスの中で示してほしい」「企業は食品安全計画などの策定に責任を持つ有資格者の設置を求められている。FDAが求める水準の訓練を受ける必要があるというが、具体的にどういう訓練を受ければいいのか明確にしてほしい」という声も聞かれた。

 また、高級食品を製造する業者など320社から構成される高級食品協会(SFA)は「FDAはFSMAの運用に当たって何を最も優先して順守すべきか、(リスク管理上)重点を置く商品は何かを示してほしい」と述べた。

(注)食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生する恐れのある微生物汚染などの危害をあらかじめ分析し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという重要管理点を定め、連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生、管理の手法。

(伊藤大介)

(米国)

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