輸入企業による日本食品の産地偽装申告が発覚

(台湾、日本)

中国北アジア課

2015年03月26日

台湾の衛生福利部食品薬物管理署(FDA)基隆弁事処は3月24日、10社の台湾企業が、東京電力福島第1原子力発電所事故の発生で輸入禁止地域としている福島など5県の食品の産地を偽装して申告している事例を発見したと発表した。FDAは産地偽装の疑いのある食品283件のリストを公表し、輸入企業に対し卸し先の企業に市場から商品を撤去するよう通知した。

<産地偽装の疑いのある283件のリストを公表>
台湾では東京電力福島第1原子力発電所事故の発生以降、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県で生産された食品(酒類を除く)を輸入禁止対象とし、それら以外の地域の食品に対してもサンプルや全量検査を実施している。

FDA基隆弁事処は、輸入企業10社が輸入禁止地域である5県で生産された食品について、生産地を東京など禁止対象地域以外に書き換えて申告した事例を発見した、と発表した。これを受け、3月19〜21日に内政部警政署や新北市、新竹県、台中市など各地の衛生局とともに、輸入企業10社(注)に対し査察を行ったことを明らかにした。

FDAによると、今回の査察対象となった食品は3,000件近くに達し、このうち即席麺や飲料など283件の食品の産地が輸入禁止地域である福島(19件)、茨城(74件)、栃木(44件)、群馬(99件)、千葉(47件)の5県に該当する疑いがあるとして、そのリストを公表した〔輸入禁止5県から輸入されている疑いのある食品リスト(中国語・繁体字)〕。現時点では、これら283件の食品から放射性物質は検出されていないものの、FDAは違反企業に対し、卸し先の企業に商品の市場からの撤去を通知するよう命じた。また、FDAは今回の不正申告について、食品安全衛生管理法に基づき、違反企業に3万台湾ドル以上300万台湾ドル以下(約11万4,000円以上約1,140万円以下、1台湾ドル=約3.8円)の罰金を科すと発表した。

<税関が3月19日から日本食品の産地検査を強化>
FDAは、輸入禁止地域以外の食品の輸入に対しても検査を強化する方針で、2014年10月、日本から食品を輸入する場合、日本政府が発行する産地証明書や放射線検査報告書の提出を新たに義務付ける制度強化案を発表している。同案は現時点で施行に至っていないが、FDAの姜郁美署長は「台日間で協議を進めており、今年の6月には公告を施行する見込みだ」と話している(「中時電子報」3月25日)。

今回の対象品が日本の食品であるため、台湾における日本の食品全般のイメージダウンが懸念される。台湾税関では既に3月19日から、日本から輸入された食品の産地検査を強化している。こうした日本食品に対する通関手続きの厳格化により、通関に時間を要する可能性もある。

(注)盛裕貿易、三燦貿易、柏泓企業、上煬、上友、裕鴻食品、勵拓、太冠國際開発事業、恩旺貿易、昶緯興業。

(方越)

(台湾・日本)

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