輸入する貨物の関税評価額を事前に確定−通関手続きの「事前教示制度」が改正−

(タイ)

バンコク事務所

2015年03月26日

輸入しようとする貨物の関税評価額や、関税率表上の分類(HSコード)、原産地について、事前に関税局に照会する「事前教示制度」が改正された。新制度では、関税局からの回答内容が法的拘束力を持つことになり、回答期限が原則30営業日以内に設定された。関税局は担当職員の増員など、体制を強化する。輸入通関時や事後調査で、関税局から申告と異なる関税分類や評価が下されるケースが後を絶たず、多額の罰金を徴収される事例が散見される。新制度により、通関の予見性、透明性の向上につながることが期待される。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<回答に2年間の法的拘束力>
タイ関税局は3月3日、(1)関税評価の事前教示サービスに関する通達(No.38/2558)、(2)関税分類の事前教示サービスに関する通達(No.39/2558)、(3)原産地の事前教示サービスに関する通達(No.40/2558)を発出し、いずれも3月4日から発効した。

上記(1)〜(3)の通達に基づき、輸出入業者は関税局に、a.関税賦課のベースとなる輸入品の評価額がいくらになるのか、b.輸入品の関税分類(HSコード分類)がどの項目に分類されるのか、c.自由貿易協定(FTA)締結国からの製品輸入に際して当該輸入品がFTAの特恵関税適用を受けるための原産地基準を満たしているかどうか、関税局に事前に問い合わせ、書面で回答を受けられるようになった。また、書面による回答内容は2年間有効で、この期間、法的な拘束力を持つことになった。

<新制度に向け関税局の体制を整備>
関税評価や分類についての事前教示制度は以前から存在していたが、回答に法的拘束力がなく、参考資料としての扱いにとどまっていた。税関職員の裁量で過去の回答が無効と判断される事例も多く、在タイ日系企業の間で法的拘束力を求める声が上がっていた。また原産地に関する事前教示は制度自体がなく、FTAの有効活用を図る目的から、制度導入を求める声が高まっていた。今回の制度改正により、輸入を予定している貨物の価格評価や関税分類、さらにFTAの特恵関税の適用などに関して、法的な解釈の一貫性が確保されることが期待される。また制度の活用により、想定外の課税や罰金のリスクが軽減されることになり、ビジネスの予見性を高める効果が見込まれる。

一方、新制度の発効により、事前教示の申請件数の大幅な増加が見込まれ、関税局には申請案件の処理能力向上が求められることになる。旧制度でも、原則30営業日以内(申請書類の状況によっては60営業日以内)という回答期限は設定されていたが、実際にはこれが順守されないケースも多く、日数の起算日(申請書類の受理日)も曖昧だった。関税局のクリッティカ・パンプラサート法務部長は2月25日、ジェトロ主催のセミナーで講演し、「関税局では、事前教示制度への回答に対応する職員を大幅に増強し、期限内の回答を順守できるよう専門チームを編成している。また旧制度は無料で対応していたが新制度では有料となるため、期限を順守できなければ責任問題になるという危機感を持っている」として、新制度の運用に向けた関税局内の体制整備が進んでいることを強調した。

なお、サービス料は新制度の施行時点で確定しておらず、後日、関税局から通知される予定。サービス料が通知されるまでは、関税評価、関税分類、原産地の事前教示はいずれも無料だ。

<関税局は原則30営業日以内に回答の義務>
新制度の下、事前教示制度の申請者(輸入者もしくは代理人)は、関税局通達で示された所定の事前教示申請書によって書面申請を行うとともに、関税局の判断に必要となる関連資料を提出することが求められる。また関税局は、輸入者から必要な情報を受け取ってから30営業日以内に、書面で回答しなければならない。

例えば関税分類に関する事前教示制度の場合、以下の(1)〜(6)に記載した手順に従い、申請および回答の通知が行われる。

(1)申請者は、事前教示申請書(フォーム1)を当該貨物の輸入通関日の30日以上前に関税局・関税率規定部(Custom Tariff Bureau)に提出することが求められる。その際、1申請につき1品目としなければならない。

(2)申請者は、関税局の求める必要情報を申請書類に記載するとともに、当該品目が輸入されることの証拠資料(注文書、売買契約書、インボイスなど)や分類の判断に必要となる各種の根拠資料(製品名、仕様、製造プロセス、製品カタログ、サンプル、検査・分析結果、類似品の関税分類など)を合わせ、関税率規定部に提出する必要がある。

(3)関税局は申請者に対し、申請の受理から7日以内に、電話もしくはメール(申請者が選択)にて、申請書の記載内容および根拠資料が要件を満たしているか否かを回答しなければならない。

(4)申請内容が要件を満たしている場合、関税局は申請者に対して事前教示サービス費用の電子請求書を発行し、料金が支払われた時点で、申請が正式に登録される。

(5)申請内容が要件を満たしていない場合、その通知を受けた申請者は15日以内に関税局の求める追加書類を提出しなければならない。また15営業日以内の提出が難しい場合、申請者は理由と新たな回答期限を提示することにより、期限の延長を求めることができる。求められる要件を満たし、サービス料の支払いが完了した段階で、申請は正式に登録される。

(6)関税局は申請の登録から30営業日以内に、申請者に対し所定のフォーム(フォーム2)で回答しなければならない。なお、申請者が取引関連の情報を事前提出しなかった場合、回答期限は 登録から60営業日以内となる。関税局が何らかの理由により回答期限を順守できない場合は、所定のフォーム(フォーム4)で申請者に対し回答が遅れる理由と回答予定日を通知しなければならない。

(7)なお、関税局による回答に異議がある場合、申請者は通知を受け取ってから15営業日以内に所定のフォーム(フォーム6)にて、回答の見直しを求める(再申請)ことができる。再申請を受けた関税局は、受理から30営業日以内に、所定のフォーム(フォーム7)にて再回答しなければならない。

(8)回答は2年間有効。なお、再申請を行った場合は再回答が最終決定となり、最初の事前教示の回答通知日から2年間が有効期限となる。

関税分類、関税評価、原産地のそれぞれの事前教示申請の管轄窓口や、申請に必要な書類の詳細は、添付資料のとおり。

(伊藤博敏)

(タイ)

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