意外と知られていない「フォームD」FOB価格の不記載

(ベトナム)

ハノイ事務所

2014年08月07日

ベトナムでは2014年1月1日から、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)の原産地証明書(C/O)「フォームD」のFOB(本船渡しの価額)価格記載が不要になっている。これは2013年8月に開催されたASEAN経済相会合の合意に基づく。しかし、実施から半年たった現在でも、「フォームD」FOB価格の記載不要に関して、進出日系企業にはあまり知られていない現状がある。

<不記載は2014年1月1日から実施>
ベトナムにおいて、FOB価格の不記載は2013年12月25日付け商工省輸出入庁オフィシャルレター第629/XNK−XXHH号でC/O発給機関である各地区輸出入管理課、各工業団地・輸出加工区・経済区管理局宛てに通知されている。

FOB価格の不記載に関して、具体的には下記のとおり。

○付加価値基準(RVC)に適用する品目のみFOB価格を記載する。
○RVC以外の原産地規則である、完全生産基準(WO)、関税番号変更基準(CTC)、加工工程基準(SP)を利用する場合、FOB価格を記載する必要はない。
○カンボジアやミャンマーにおいて発給されるC/O「フォームD」では、引き続き上記全ての基準において、2016年3月31日まではFOB価格を記載しなければならない。

以前は、「フォームD」においてC/OのFOB価格の記載(第9欄)が必要だった。FOB価格の記載は、3国間貿易を行う場合、企業にとって不都合が生じるケースがあった。例えば、ベトナムで生産した製品について、物流ではC/O「フォームD」を取得してインドネシアに直送し、商流はシンガポールを経由した場合(図参照)、これまではC/OにベトナムでのFOB価格を記載しなければならなかった。

3国間貿易の事例(ATIGAの場合)

これにより、輸入先であるインドネシアの客先にベトナムでの価格が知られてしまうことになる。ベトナムが締結している全ての自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)(2014年現在で8協定)でFOB価格の記載が必要とされるが、日越経済連携協定(JVEPA)の場合は、発給当局の了解を得れば不記載が認められていた。

「フォームD」のFOB価格の不記載に関しては、ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)が2009年の第2回ASEAN事務総長との対話から求めてきた。2013年8月にブルネイのバンダルスリブガワンで開催された第45回ASEAN経済相会議において、ようやくFOB価格の不記載が認められ、改定OCP(運用上の証明手続き)は、2014年1月1日に発効した。ベトナムの改定OCPに合わせて運用が開始されたことになる。

<実施半年経過しても意外と知られていない>
現在、当地において「フォームD」の利用は増加している。C/O発給を所管している商工省によると、2013年の「フォームD」の発給は件数が6万5,664件(前年比28.7%増)、金額が53億6,200万ドル(42.7%増)と増加傾向だ。特に、進出日系企業は、化学医療、輸送機械器具関連で利用が多く、今後も増加することが予想される。

FOB価格の不記載に関してC/O「フォームD」を利用する幾つかの進出日系企業で活用しているケースもみられる(当地日系物流会社)。一方、ジェトロが複数の進出日系企業に確認したところ、運用開始から半年たった今でもFOB価格不記載については意外と知られていないようだ。今後、ATIGAの利用増加のためにも、さらなる周知が必要になってこよう。

(佐藤進)

(ベトナム)

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