不動産譲渡益税、2014年から最大20ポイント引き上げ

(マレーシア)

アジア大洋州課・クアラルンプール事務所

2013年10月31日

2014年1月1日から、不動産譲渡による利得に課税される不動産譲渡益税(RPGT:Real Property Gain Tax)の税率が5〜20ポイント引き上げられる。また外国人の不動産取引の最低取得額条件が、50万リンギ(約1,550万円、1リンギ=約31円)から100万リンギに引き上げられる。政府は税率の引き上げと取得額条件の厳格化で、短期譲渡益を狙った投機的投資を抑制する方針だ。

<加熱する投機的投資を抑止>
不動産は「マレーシアにある全ての土地およびその土地をめぐる利権、訴権、または権利」と定義されており、その販売はRPGTの対象となる。土地に付随する建物や建造物も対象に含まれる。

財務省は2007年4月1日以降の不動産売却については、P.U.(A)146/2007 Exemption Order(免除命令)により、RPGTを免除していた(表1参照)。しかし、過剰な投機的投資と不動産価格の上昇を懸念し、2010年1月1日からRPGT課税を復活し(2009年11月11日記事参照)、その後、2012年1月1日と2013年1月1日に2年連続で税率を引き上げ、投機的投資の抑制を図っていた(2011年12月27日記事2012年12月18日記事参照)。

表1不動産譲渡益税の税率(現行と推移)

しかし、不動産価格の上昇が収まっていないことから、政府は2014年1月1日以降の売却分から税率をさらに引き上げる。2010年以降は、企業・個人の課税率は統一されていたが、新制度では2007年以前と同じく、企業と個人で異なる税率が適用されることになる。特に外国人に対する課税が強化される。

具体的には、非市民の個人(いわゆる永住権保持者を除く外国人)への税率は保有期間3年以内、4年目、5年目とも一律30%に引き上げられ、従来の2〜3倍の税率になる(表2参照)。また、これまで6年目以降の売却は0%だったが、非市民と企業については5%の税金が課される。マレーシア国民・永住者についても、保有期間3年以内の場合は税率30%、4年目は20%など、これまでの1.5〜2倍になる。

表2不動産譲渡益税の新税率(2014年1月1日以降)

<外国人の最低取得額も引き上げ>
RPGTの税率引き上げに併せ、外国人による不動産取引の最低取得額条件も厳格化される。マレーシアでは、外国人による不動産所有(ただし50万リンギ以上)が認められており、海外の富裕層や隣国のシンガポール人による購入が活発だ。不動産価格は上昇を続けており、外国人によるキャピタルゲインを狙った購入も多い。政府はこうした外国人による投機的投資を抑制するために、外国人の不動産取引の最低取得額を現行の50万リンギから100万リンギに引き上げる予定だ。2014年1月1日以降の購入に適用される。政府は今回の税率引き上げと不動産取得条件の強化で、不動産価格の上昇に歯止めをかけ、低中所得者層の資産保有への影響を排除したい考えだ。

(手島恵美、新田浩之)

(マレーシア)

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