OECDガイドラインに準拠した移転価格税制規則が発効

(フィリピン)

マニラ事務所

2013年03月07日

内国歳入庁(BIR)は移転価格税制に関する歳入規則(RR)No.02−2013を公布し、2月9日発効した。フィリピンでは2006年に移転価格税制の最終規則案が策定されていたが、正式な通達は出されないまま、6年以上経過して発表に至った。内容はOECDのガイドラインに準拠したもので、特別目新しいものはない。

<事前確認には2種類の制度>
移転価格税制に関する歳入規則の概要は以下のとおり。

○目的と適用範囲
・BIR長官の関連者間取引に関する利益配分査定権限
・独立企業間価格算定方式を定め、適切な利益配分ガイドラインの提供
・独立企業間価格算定記録の保存義務

○関連者の定義
・関連者とは、資本・経営について直接または間接に支配を行う者をいう

○独立企業間価格の算定方式
(1)独立価格比準法〔Comparable Uncontrolled Price Method(CUPM)〕
(2)再販売価格基準法〔Resale Price Method(RPM)〕
(3)原価基準法〔Cost Plus Method(CPM)〕
(4)利益分割法〔Profit Split Method(PSM)〕
・残余利益分割法(Residual Profit Split Approach)
・貢献利益分割法(Contribution Profit Split Approach)
(5)取引単位利益法〔Transactional Net Margin Method(TNMM)〕
(1)〜(5)の算定方式に優先順位はなく、最適な方式を選択する。

○事前確認制度
・移転価格問題解決の手段として、2種類の事前確認制度(Advance Pricing Arrangements:APA)が設けられている。
(1)単にフィリピン当局に対し、事前確認のみを行うもの(Unilateral APA)
(2)租税条約上の相互協議条項を利用した2国間事前確認(Bilateral/Multilateral APA)
・事前確認制度のガイドラインは別途BIRが発行する。

○文書化義務
・納税者が関連者との取引価格を決定する際に、独立企業の原則に従っていることを示す検討書面の作成・保存を義務付けている。
・確定申告書に添付する必要はないが、BIRの要求により提出することができるように保存しなければならない。

○罰則規定
・特別な罰則規定はなく、税法の罰則規定が適用される。

<国内取引にも適用>
フィリピン移転価格税制の特徴は、国内の関連業者との取引にも適用されることだ。フィリピンでは、投資促進を目的にさまざまな優遇制度が与えられている。そのため、税率の異なる企業が混在しており、経済特区内の優遇税率適用企業と一般税率適用企業との取引が関連者である場合には、この移転価格税制の規則が幅広く適用される。

<税務調査現場で混乱の恐れも>
独立企業間価格の算定は、該当する比較対象取引が極めて少ないことや、それを探す情報を納税者が有していないことから、常に困難を伴う。独立企業間価格の算定について誠実に検証した立証責任を、納税者が負うこととなっており、文書化に不備がある場合に推計課税を受ける恐れがある。また、BIRが導入しているベンチマーキング(業種ごとの想定利益率設定)方式のような課税が、当規則により安易に執行されることが危惧される。

(辻一郎)

(フィリピン)

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