繊維品の輸入品質検査が厳格に

(サウジアラビア)

リヤド発

2012年08月08日

2012年4月ごろから、当地に繊維品を輸出する日系企業数社から、サウジ税関の品質検査の実施に関する問合せがジェトロに相次いだ。ジェトロが当地の政府指定検査機関ビューロー・ベリタスに確認したところ、政府が定めた品質検査を厳格に実施していることが分かった。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<複数の日系企業が義務付けの通知を受ける>
2012年4月から6月にかけて、繊維品をサウジアラビアに輸出する複数の日系企業からジェトロに「輸出前に商品の品質検査を義務づけるという通知が現地代理店に出されたようで、実態を調査してほしい」との依頼が相次いだ。

このため、当地で唯一繊維品の輸入サンプル検査を実施している外資系検査機関ビューロー・ベリタス(本社:フランス)を訪れ、実態について聞いた。同時に、現時点で政府が公式に発表している輸入検査のルールについても、あらためて確認した。

<CoCの提示を求められる>
ビューロー・ベリタス・リヤド事務所の政府サービス・国際貿易担当モハメド・ナジブ・ダーマン課長に7月25日、聞いた内容は以下のとおり。

問:繊維品の輸入規制を管轄している官庁・組織はどこか。

答:繊維品に限らず全ての製品について、税関、商工業省(MOCI)、サウジ標準化公団(SASO)の3つの機関〔加えて、食品・医薬品・医療機器は食品医薬品庁(SFDA)〕が携わっている。

この国の大きな問題として、現在もなお、この3機関は、管轄権限のリーダーシップをどこが担当するかで争っているため、互いに横の調整をすることなくサウジへの輸出者向けに通達を出したり、それぞれの通達の内容が違ったりしている。その結果、輸出者を混乱させることがある。

現時点の力関係では、通関を直接管轄している税関の権限が相対的に強く、商工業省がそれに続くが、SASOやSFDAも権限を確保しようと、折に触れて口を出すという、複雑な状況になっている。

問:最近、日本の繊維品輸出業者の現地代理店が、輸出前に品質検査を受けて検査証明認定書(CoC:Certificate of Conformity)(添付資料1参照)を入手するよう新たに通達を受けたようだ。公式な政府通達を書面で入手していないか。

答:現在のところ当社では、代理店や各企業に対しては、通達が書面で出たとは確認していない。ただし、当社を含む全検査機関に対しては、商工業省品質管理局から7月17日付で、商工業省がそれぞれの商品について指定する内容の検査を実施するようにという通達が書面で出されており、品質検査の実施が厳しくなっていることは間違いない。

少なくとも、輸出前にCoCを入手して通関時に提示すべきというルールについては、2004年8月7日付商工業省決議(添付資料2参照)で公式に義務付けられている。また、SASOが作成したCoCのガイドライン(添付資料3参照)にもその必要性が明示されている。

当地では正式なルールと実際の運用が違うということがよくあるため、CoCがなくとも通関が認められるケースがある。しかし、政府の公式なルールが決定されている以上、これまでCoCがなくとも輸出が可能だったとしても、いつCoCの提示を求められてもおかしくない。このリスクを避けるためにも、当社としては輸出業者にはCoCを取得するプロセスを踏む方が安全だと説明している。

<ISO番号で輸入サンプル検査基準を確認すべき>
問:日本企業がCoCを取得する場合、具体的にどのようなプロセスになるのか。

答:CoCはSASOからでなくとも、添付資料1、2にあるように、輸出国のしかるべき設置委員会の審査に基づいて認証されており、かつSASOや国際基準が求める規格(ISO17025、ISO17020など)を満たした委託検査機関(SASOガイドラインではCB: Certification Bodyと表記されている)で、所定の検査を経れば取得することができる。検査機関としては、ビューロー・ベリタスのほかにもSGS、インターテック、テュフなどがあり、どの検査機関に依頼してもよい。ただし、機関によっては「サウジ向け輸出検査は対応が難しい」と断られる場合もある。

日本企業がサウジに輸出する場合、まずは日本国内の当該検査機関にコンタクトを取り、プロフォーマ・インボイスを提示して、必要となる検査内容を確認する。互いに合意したら契約を結び、所定の料金を支払って検査を実施する。検査機関は、プロフォーマ・インボイスと検査結果報告書をもとに、CoC発行の可否を判断する(まれに、製造工場を直接訪問して確認することもある)。首尾よくCoCを取得できれば、サウジでの通関時に提示することで輸出が可能となる。

繊維品の場合、サウジの税関では、ランダムにサンプルを抽出して品質検査を行う抜き取り検査を行っているが、CoCがない場合は原則、全量検査が行われることになっている。当社はSASOと正式に協定を結んだ、この繊維品の輸入サンプル検査をサウジアラビアで担当している唯一の外資系検査機関だ。このほか、現地企業Al Amjadも同検査を請け負う予定と聞いているが、現時点で実際に業務を開始したかどうかは定かではない。

なお、CoCは原則として、貨物輸送の都度、取得することが必要とされている。

問:繊維品の場合、検査対象となる品目と必要な検査内容は何か。また、検査基準が必ずしも明確ではない場合には、どのように対応すればよいのか。

答:衣料から生地まで、全ての繊維品が検査の対象となるが、必要な検査内容は輸出する製品によって異なる。検査項目の一覧は、日本のビューロー・ベリタスに問い合わせれば、入手できる。輸出する品目によって必要な検査も変わるので、いずれの検査が必要かは検査機関に確認すればよい。

検査基準については、検査機関が持つ資料に各検査内容に対応するISOの番号が明記されているので、該当のISOの内容を確認すれば分かる。例えば、「ホルムアルデヒド含有量」の検査基準はISO14184に対応しているので、ISO14184を参照すれば「75ppm以下であれば可」という基準を確認できる。

問:最近になって日本企業向けに通達が出るなど、繊維品の検査が厳しくなったのは何か理由があるのか。模倣品(Made in Japanと書かれた中国製品など)の問題や、途上国からの低品質の輸入品増加の問題などがあるとも聞いているが。

答:政府から正式に模倣品が理由と聞いたわけではないが、繊維品については最近になり、当社の作成する書類にも必ず「製造元の工場の名前と、住所および連絡先」を明記することが義務付けられたので、政府としては、輸出元と製造元が一致しているかどうかに注意していることは間違いないと思われる。

問:他国の繊維品輸出企業もCoCを取得しているのか。

答:取得している。例えば、当社の顧客である中国企業も、当社の中国事務所を通じてCoCを取得し、サウジアラビア向けに繊維品を輸出している。

品質検査への対応は容易ではないが、今後しばらくは政府の政策動向を注視しつつ、現実的な対策を検討すべきだ。

(米倉大輔)

(サウジアラビア)

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