スービック自由貿易港に新たな課税問題

(フィリピン)

マニラ発

2012年02月24日

スービック湾都市開発庁(SBMA)は、自由貿易港内の土地と建物の賃借料に対して、新たに課金を始めている。賃料の10%をテナント企業から追加徴収するもので、法的根拠も不明確なまま、入居企業の反対を押し切って実施された。既に訴訟に発展しているケースもみられ、今後の動向に関心が集まっている。

<賃借料に10%上乗せ課金>
スービック自由貿易港は、フィリピン経済区庁(PEZA)管轄下と並ぶ経済特別区として、積極的な外資誘致を行っている。スービック港内の土地はすべて国有地で、監督官庁のSBMAの財政収入源は「土地・建物」賃料と港湾使用料が主なものだ。新たな課金は、域内で操業するすべての企業に対して、土地・建物の賃借料の10%を賃借人から追加徴収するという内容で、2011年から徐々に徴収され、12年に入って本格化した。

域内で操業する日系製造業の大半は、デベロッパーが開発・造成した土地・建物を、デベロッパーとの賃貸借契約に基づき使用している。この賃貸借契約の条項はこの課金徴収について触れておらず、突然の徴収開始に日系企業は困惑している。

この新たな課金を納付しない場合、SBMAは事業認可証の延長更新に応じないとの意向を示している。自由貿易港内で操業する企業は、例外なくSBMAへの事業登録が必要で、毎年の更新手続きが求められる。課金納付を拒否した場合は、この事業認可証が取り消される事態も想定されるため、やむなく納付に応じている企業も多いようだ。一方的で強制的な課金徴収を開始したSBMAに対し、企業からは反発の声が強まっている。

<赤字収支を穴埋め>
ガルシアSBMA長官は、新課金徴収の背景について「11年のSBMAの財政赤字が10億ペソ(1ペソ=約1.9円)を超えた。日本政府からの借金で建設したコンテナ港の利用促進が思ったほど進まず、港湾使用料だけではローン返済ができない状態に陥っている。こういう状況下、すべての企業に対して例外なく課金徴収を決定した。自由貿易港の恩恵を各企業が有効に享受しており、港使用料の一部であると考えて協力してほしい」という。

SBMA港湾局の発表によると、11年のコンテナ取扱高は3万2,736TEU(20フィートコンテナ換算単位)にとどまっている。12年は、11万TEUに増加する見込みだ。

スービック自由貿易港内の不動産相場は、日系工業団地が集中しているカラバルソン地域に比べ、既に相当割高になっている。平坦地が少なく、開発余地も残っていないことに加え、SBMAの政策的な単価引き上げがその要因になっている。新課金制度により、外資誘致活動に悪影響が出ることは避けられない。

(辻一郎)

(フィリピン)

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